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26
May,2016
眞鍋 太一
投稿者:眞鍋 太一
(代表 )

2016年05月26日

Food Hub Project Inc.|新会社設立のご報告。

Food Hub Project

眞鍋 太一
投稿者:眞鍋 太一(代表 )

プロデュース部 部長の真鍋です。
2016年4月1日、「Food Hub Project Inc. 株式会社フードハブ・プロジェクト」が設立されました。徳島県神山町役場と、時期を同じく設立された、一般社団法人 神山つなぐ公社と、モノサスが共同で立ち上げた新しい会社です。私は、支配人(COO)という立場で活動を開始しています。

以前の記事でご紹介したように、神山町役場の地方創生戦略ワーキンググループの活動を通して、フードハブ・プロジェクトという活動は生まれました。そして今回、新たに会社として舵を切ったこのプロジェクトが、どんなことを目的に活動して、何を目指しているのか、詳しくお伝えしたいと思います。

【活動の目的】
地産地食|Farm Local, Eat Local を目指す。

フードハブ・プロジェクトのモットーは、「地産地食 | Farm Local, Eat Local 」。地域で育てられたものを、その土地で料理し一緒に食べることで、地域での「関係性」を育て、神山の農業と食文化を次の世代につないでいくことを目指しています。

2016年現在、神山町では農業従事者の平均年齢が70歳を超えています。そのため、耕作放棄地の増加が町としての大きな課題です。そこでフードハブ・プロジェクトでは、農業を始めたい人を受け入れて育てていくことで農地を維持し、これからの中山間地域の農業スタイルを見出すことを目的としています。

これらを実現するために、「育てる、集まる、食べる、つなぐ」を活動テーマとして、準備を進めています。
 

【活動の内容】
育てる、集まる、食べる、つなぐ。

フードハブ・プロジェクトでは、食にまつわる4つの活動テーマをもとに、事業を展開していきます。

  1. 育てる 〜中山間地域、独自の農業への挑戦
  2. 集まる 〜関係を育てる地域産食提携(CSA)の運営〜
  3. 食べる 〜地域の台所(食堂、食料雑貨店、パン屋)の運営〜
  4. つなぐ 〜地域生活グループや学校と連携した食育プログラムの実施
     

1.育てる 〜中山間地域、独自の農業への挑戦〜

耕作放棄地をこれ以上、増やさないようにするためには、次世代の農業従事者を町に受け入れると同時に、彼らを育成していくことが必要です。フードハブ・プロジェクトは官と民の中間的な組織として、神山のお米やもち米を中心とした農業を自社で営みながら、高齢化によって手に負えなくなった農地を借り受けて、新規就農者の受入れ・育成を行うことで、これらの農地を管理、運営していきます。

また中山間地域では、大型機械を農地に入れることが難しく、従来型の慣行農法では限界があるため、複数の小規模な農業グループと連携しながら、地域内で少量多品目を生産できるような仕組みを作っていきます。中山間地域独自の農業のあり方を見出していくために、話し合いを始めているところです。

  • 新規就農者の受け入れと育成
    • 農地の管理とコーディネート
    • 農業従事者の育成
    • 自社農園の運営
  • 小規模農業グループとの連携
    • 地域内連携による少量多品目の有機、特別栽培の実現

2.集まる 〜関係を育てる地域産食提携(CSA)の運営〜

CSA(Community Supported Agriculture)とは、消費者が定期的に前払いで農家さんから直接購入することで農業を支援する仕組みです。近年アメリカなどで普及していますが、日本の「産消提携」が元になっていると言われています。(最近だと『食べる通信』などがこの考えをベースに展開しています。)

本来CSAは「コミュニティー ≒ 地域の人たち」が共同で農業を支えていくという仕組みでしたが、現在は、農家と消費者の日常的なつながりが薄くなっているため、消費に対して志の高い個人の意識の束が、「農家の収入」をサポートしているように感じられます。これでは、根本的に「地域の農業」を下支えするような意識と関係性は育ちづらいと感じています。

そこで、フードハブ・プロジェクトでは、神山という狭い地域に活動を限定することで関係性を見えやすくするとともに、現在地域内で活動している小規模の農家グループが、より活動しやすい状況を作ります。また、食べる人たち(消費者)との日常的なつながりを育てていくことで、食べることで地域の農業を支える定期販売の仕組みをつくっていきたいと考えています。

  • 地域産食提携サービスの運営
    • 産食提携会員の募集と会員組織の運営
    • 地域内で循環する流通の仕組み構築と運営
  • 小規模農業グループとの連携
    • 神山産の有機や特別栽培の野菜の購入&販売
    • 徳島県内の有機農家グループとの連携

3.食べる 〜地域の台所(食堂、食料雑貨店、パン屋)の運営〜


敷地外構イメージスケッチ

神山で「竈屋(かまや)」と言うと、「なつかしいなぁ。昔はなぁ〜」とみなさん語り始めます。今の30代後半世代が子供の頃までは、自宅の中に薪でご飯を炊く竈(かまど)が据えられた土間があり、その場所を「竈屋」と呼んでいたそうです。

神山の人たちのさまざまな思い出が詰まった「竈屋(かまや)」という場所。フードハブ・プロジェクトでは『かま屋 神山』という名前の食堂をつくり、地域の食材をふんだんに使った食事をビュッフェ形式で提供します。食堂の中央に据えられた竈では、神山の綺麗な山水で育った美味しいお米を炊いて、地域の人が毎日食べにきてくれるような食堂を運営していきます。

また、食料雑貨とパンを販売する『かまパン&ストア』というショップも併設します。ショップでは「神山の食卓を楽しく」をテーマに、徳島県内から四国まで範囲を広げて、有機や特別栽培で育てられた野菜をはじめ、手間ひまかけて丁寧に作られた味噌・醤油など、実際に食堂でも使用している調味料などを販売します。天然酵母をつかった食パンやサンドイッチ、焼き菓子なども販売し、季節の食材を使って地域の食卓を素敵に楽しくしていきます。

  • 『かま屋 神山』の運営
    • 朝食:セルフ形式でのコーヒーとパンのモーニング
    • 昼食:季節の食材を活かしたビュッフェ型式の食堂
    • 夕食:おばんざい型式の定食または居酒屋スタイルの食堂
  • 『かまパン&ストア』の運営
    • 食堂で毎日使っている調味料や食材の販売
    • 食卓での料理が楽しくなる、調理道具などの販売
    • 天然酵母で毎日焼く、パンや焼き菓子の販売

4.つなぐ 〜地域生活グループや学校と連携した食育プログラムの実施〜


現在は、古いものしか残っていない郷土料理の本『神山の味』

どんな地域にも郷土料理を受け継ごうと活動している方々がいるように、神山にも地域の食文化を担っている生活グループがあり、「神山の味」という素晴らしい郷土料理の本もあります。これらの財産を活かし、地域の食文化を担う方々と一緒に活動させてもらうことで、地域で手間ひまかけて育てられた農作物を余すことなく活用する方法を見出していきます。

また、神山町唯一の高校である城西高校の分校は農業と造園に特化しており、その場所は『かま屋 神山』の予定地に隣接しています。神山において高校を活性化し、地域の人口やバスなどのインフラを維持することはとても重要な課題です。そこでフードハブ・プロジェクトでは、城西高校分校の生徒たちと協力して、料理人を対象に付加価値のある野菜を育てる農業に挑戦したり、地域の生活グループと連携して、神山独自の加工品開発を試みたりするなど、実験的な取り組みを開始していきます。

さらに、『かま屋 神山』内に併設するコモンキッチンでは、加工品の製造や料理教室なども予定しています。各地で活躍する料理人に神山に滞在してもらい、地域の方々や小学生と料理教室を開催したり、城西高校と連携して、農作物を育てる〜調理する〜食べる、までの授業を実践するなど、様々な形で活用していきたいと思っています。

  • 地域で活動する生活グループとの連携
    • 特産物を活かした加工品の開発と製造
    • 郷土料理などを次世代につなぐ料理教室の実施
  • 城西高校分校や保育園、小中学校と連携した食育プログラムの実施
    • 料理人を対象とした実験的な農業の実践
    • フードハブの敷地を活用した菜園プログラムの開発と実践
    • 田植えや収穫、調理することなどを通じた食育体験の提供

【活動の拠点】
Food Hub テスト・キッチン。
料理を試作し、試食し、集い、学ぶ。まずは食の交流から!

『かま屋 神山』と『かまパン&ストア』のオープンは、2016年の年末を予定しています。それまでの活動拠点として、自宅の土間に『Food Hub テスト・キッチン』をつくりました。

このキッチンでは、プロジェクトの進捗を報告したり、オープンに向けて料理の試作会や試食会をしたり、地域の人たちとの料理教室などを開催していく予定です。さらには、地域の農家さんと食事をしながら交流を深めていく時間も作っていけたらなぁと思っています。

つい先日も、お遍路さんがアイスクリームを買える場所を探して立ち寄ってくれました。(右のお坊さんは、なんと7回目の88ヶ所巡りだそう!)ちょうど、あまったイチゴと自家製の金柑シロップで作ったアイスキャンディーがあったので差し上げましたw。食べるって面白い。(フードハブでもアイスクリーム作って売らないと…)

新たな一歩を踏み出した Food Hub Project Inc. をよろしくお願いします!
facebookページでも活動状況をお伝えしていきますので、こちらもよろしくお願いします!)

この投稿を書いた人

眞鍋 太一

眞鍋 太一(まなべ たいち)代表

Monosus Inc. 代表/Food Hub Project Inc. 共同代表 支配人/Nomadic Kitchen 支配人。愛媛県出身。2014年3月より妻子と共に徳島県神山町に移住。社会とつながり「暮らすように働く」ことを企業の価値づくりに役立てるべく家族と友人を実験台に検証中。2016年4月より中山間地域の農業を次世代につなぐFood Hub Project Inc.を、神山町役場、神山 つなぐ公社、モノサスと共同で立ち上げ、支配人を務める。レストラン The Blind Donkey を運営するRichSoil&Co.の役員も兼任。

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