2017年08月

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水曜日の投稿

今井 智也
投稿者:今井 智也
(デザイナー)

2017年08月02日

先端技術に触れ、新しい感性を。
〜「オープン・スペース 2017 未来の再創造」に行って。〜

デザインの目のつけどころ

今井 智也
投稿者:今井 智也(デザイナー)

デザイン部の今井です。

ロボットやAI(人工知能)、IoT、クラウドコンピューティングなど、
近年では目まぐるしく様々な技術が登場し発展を遂げています。

その時代を生きるデザイナーとして、次々に生まれる技術に置いていかれないよう、先端技術にもアンテナを張り、体感、勉強しなくてはならないと思ってます。そこで、先日デザイン部のメンバーを誘って、NTTインターコミュニケーション・センター(通称:ICC)で開催中のメディアアート展「オープン・スペース 2017 未来の再創造」に行ってきました。

「オープンスペース展」は、AI、ロボット、ビデオ技術、などを取り入れたメディアアート作品の紹介や、その作品を通じて現代社会における問題や未来へのビジョン、さらに新しい感性や美意識について考える展示会です。

その展示会で自分が気になった作品をご紹介したいと思います。


音と色の空間

作品名:herering
アーティスト:nor

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部屋の中心に置かれているデバイス(光る懐中電灯のようなもの)を持って自由に動かすと、スクリーンに鮮やかな色が浮かび上がります。三次元空間に設定された色相環(彩度、明度)の中を移動する事によってデバイスの位置情報を取得し、音と映像が生成される仕組みです。

次々と鮮やかな色が浮かび上がり、心地よい音が奏でられ、アンビエントな空間を体験する事ができます。この作品は「色聴」と呼ばれる、音楽や音を聞いて色を感じる実験に基づく、音と色の共感覚をテーマとしたインスタレーションです。

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音と色の空間を自由に歩き回り、空間を自分で作り出すことが楽しいこの作品。
空間内は鑑賞者の動きによって、音と色のパターンが無限に生成されるよう設計されているため、様々な音や色を表現でき、自分の知覚に心地よく語りかけてくれます。

難しいことを考えずに直感的に楽しめ、鮮やかな色と心地よい音が空間を作り出し、この作品自体を自分で作っている感覚になるインスタレーション「herering」でした。


超・未来式「体感型公衆電話」

作品名:振動電話 “ ふるえ ”
アーティスト:NTTサービスエボリューション研究所

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ではスマートフォンの普及と共に、街からほとんど姿を消してしまった公衆電話。
その公衆電話という形を使った、2人1組で楽しむユニークな体験型展示、振動電話 “ ふるえ ”です。

まず、それぞれがお腹に振動スピーカーを装着してから、対面の公衆電話ボックスの中に入ります。受話器を取ってプッシュボタンを押すとスタート。プッシュボタンには数字の代わりに、さまざまな擬音語の頭文字が付いていて(例えば「ズ」は「ズキューン」)、その擬音語ボタンを押すと、相手が装着してるスピーカーに擬音語と連動した振動が送られる仕組み。音声で伝えるのではなく「振動」で伝える新しい対話のあり方を表現した作品です。

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何も考えずに体験してみたのですが、予想以上に伝わってくる振動が強力!(特に「ズキューン」とか)思わず声が出てしまうほどでした。

「ズキューン」の他にも、「グサッ」「バーン」「モコモコ」などのオノマトペ(擬音語・擬態語)があり、結局すべてのボタンをひたすら連打してしまうという…。
振動で対話するといった新しいコンセプトの作品ですが、ゲームやアトラクションの様なエンターテイメント性も感じられました。

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また、外のディスプレイには、自分と相手が押したボタン(擬音語)と、振動した時のリアクションがカメラで撮影されて、漫画のように履歴として表示されます。当事者だけでなく周りで見てる人も楽しい仕掛け。シンプルな仕組みではありますが、この遊び心やデザインも楽しめた作品、振動電話 “ ふるえ ”でした。


どれもじぶんどれがじぶん?

作品名:自分の顔を探せ!
アーティスト:NTTサービスエボリューション研究所

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誰もが、1日1回は見てるであろう自分の顔。
人間は「自分の顔」と「他人の顔」をどのように認識・識別しているのでしょうか?

モニターの前に設置してあるカメラで自分の顔を撮影すると、撮影された顔写真を元に、コンピューターが眉・目・鼻・口の位置やサイズ、顔輪郭の形状を瞬時に変化させていきます。撮影されたオリジナルの1枚と、変化させた9枚。この顔写真10枚のなかから「本物の顔」を1枚当てるという体験型展示です。

顔を洗う、髪をセットする、歯を磨く…
毎日自分の顔を見ているはずなのに、10枚写真が並ぶとこれが意外と難しいのです。
コンピューターが変化させる具合が絶妙で、眉の間がちょっと離れていたり、目が少し大きくなっていたり…よく知っている筈の自分の顔も、じっくり10枚を観察しないと見抜くことができませんでした。(特に10枚が隣り合ってることで余計に分かりづらい…)

仕事で自分が制作したデザインデータの違和感や変化はすぐに見抜けるのですが、「自分の顔」の変化を瞬時に見抜くのは難しかった…。自分の顔は自分のものだけど、自分が作ったわけじゃないからでしょうか…。


きく音、みる音

作品名:ミキキキキミミ
アーティスト:具志堅裕介

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こちらの作品もオノマトペを利用した面白い作品。
まず、ヘッドホンを装着すると、目の前のスクリーンにひとつの言葉が表示され、その言葉と同じ音が繰り返し流れてきます。そのうち、スクリーンに次々と新しい言葉が表示されてどんどん増えていきます。(聞こえている音は変化しません)すると、同じ音を聞き続けている筈なのに、スクリーンの文字に引きづられて、音の聞こえ方が変わってくるのです。
言葉と音は強く結びついていますが、視覚上に新たな言葉が表示されることによって、その結び付きが壊れ、新たな音が強く意識されるようになる、という作品です。

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スクリーン上に表示される最初の言葉と、ヘッドホンから聞こえてくる言葉を同時に認識し、さらに現れる新しい言葉を認識すると、不思議とその音にしか聞こえなくなってしまいました。

短いループ音を聞き続けていると聞こえ方が変化することを「音脈分凝」と言うらしく、
その「音脈分凝」と「視聴覚統合」と呼ばれる知覚の仕組みを合わせて利用することにより、聞く人の音の聴き方を導いているそうです。

「きく音」と「みる音」の強い繋がりを感じるとともに、音の楽しさを再認識できる、人間の知覚の可能性を感じる作品でした。


インターネットの真実と虚構

作品名:The Latent Future——潜在する未来
アーティスト:徳井直生+堂園翔矢(Qosmo)


最後にご紹介するのは、残念ながら写真はNGでしたが、印象に残った作品です。

部屋のなかには大きなスクリーンがあり、画面上に、過去に実際に起きた膨大な数のニュースのテキストが映し出されて流れ続けています。(この画面もすごくカッコイイです)その現実のニュースのテキストが分解されて、「ありえた/ありえる」かもしれない新たなニュースとして生成される仕組みです。

過去に実際にあったニュースを学習したAIが「まだ起きていない」架空のニュースを映像の中に生成し続ける。「まだ起きていない」が「起こりえる」ニュースをAIが淡々と表示していく映像は、無機質でクールなデザインなのですが、同時に、真実と虚構が混在しているインターネットの世界の不気味さや怖さを認識させるものでした。
(これはぜひ見ていただきたい…)


様々なメディアアートに触れて。

その他にも、AIがアーティストのドローイングを機械学習し、ロボットアームに反映させて人間と協業して1枚の絵を生み出す作品(「ドローイング・オペレーションズ・ユニット」)なども印象に残りました。近年、AI技術が急速な発展を遂げるなかで、「機械と人間の対立」なども語られますが、機械と人間がうまく付き合い「共存」し「共創」する事をコンセプトとしている作品です。(淡々と絵を書いているロボットアームがちょっとかわいかったです。)

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今回、自分は初めてICCを訪れましたが、メディアアートと言っても様々。
人間の知覚をうまく利用した作品、先端技術を駆使して社会問題を訴えかける作品など…。
デザイナーとしてうまく今の仕事に生かせられるかは未知数ですが、普段取り入れられない情報や刺激をこの展示会でインプットできました。

伝統的な絵画や彫刻などのアートとはまた違った感覚で体験、楽しめる展示会でした。
皆様もお時間がございましたら、ぜひ体感してみてください。


『オープン・スペース 2017 未来の再創造』
会期:2017年5月27日(土)〜 2018年3月11日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時—午後6時
入場無料

この投稿を書いた人

今井 智也

今井 智也(いまい ともや)デザイナー

Apple,ガジェット,エレクトロニックな音楽が大大大好きなデザイナー。1983年東京生まれ。A型。好きなフォントはFutura。猫好きだけど猫アレルギー。最近ジョンマスターオーガニックにハマりました。モノサスPerfume分科会の会長やってます。

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