2018年04月

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火曜日の投稿

畠中 友香
投稿者:畠中 友香
(ディレクター/エディター)

2018年04月03日

建造物や街並みから垣間見える
カルチャーや人々の暮らし

私たちの仕事は、社会とつながっているか。

畠中 友香
投稿者:畠中 友香(ディレクター/エディター)

プロデュース部の畠中です。私の主な担当業務は、Case Study などの動画制作や制作物の編集、ディレクション等を担当しています。元々クリエイティブな人間ではないので、日々自分の中に様々なコトを Input する時間を作るのは私にとってすごく大切なことだと思っています。時間があればギャラリーに足を運んだり、映画を観たり、なんか面白そうなことが起きている場所を訪れてみたり。様々なカルチャーを肌で感じられる旅行は自分の時間の中で特に大切にしています。(単純に旅が楽しい、好きなだけって話もありますが)

こう言うと怒られるかもしれませんが、出張も旅だと思って満喫しています(笑)。
ちょうど先日、動画の撮影でシンガポールを訪れたのですが、多民族国家であるからこその街並みや雰囲気に、建造物巡りへの意欲が止まらずに仕事を終え、ちゃかり延泊して、あちこちを散策してきました。

その時に感じたあれこれ、そしていつから、なぜ、建造物を好きになったのか。これまで意識をしたことがなかったので、これを機に自分自身も振り返りながらこの記事を書いてみたいと思います。

ドイツの街並みが教えてくれた歴史と建造物の関係

「その国、その場所のカルチャーや歴史が建造物や街並みの細部から見えてくる気がする」
と初めて感じたのは、ドイツを訪れたとき。

あまりにも有名なベルリンの壁、東西に分裂されたうえに壁が建設されるという波瀾万丈の歴史の跡に、イーストサイドギャラリーに描かれている独特のアートに込められた平和への思い。そして直後に見た何気ない旧市街の街並みの美しさや、日常に突如として表れるユダヤ人記念碑の圧倒的存在感とが、脳を混乱させるほど刺激的で瞬く間に建造物への興味が沸いたのを思い出します。


全長1.3kmの壁に、絵が描かれたオープンギャラリー「イーストサイドギャラリー」


ベルリンの中心部に突如あらわれるユダヤ人のための記念碑。日常に歴史が刻まれているドイツの記憶文化です。

そこでどのように生き、どんな生活をしていたのか、人々の息吹を感じ、暮らしや歴史が垣間見える。有名な建造物でも良いし、ただそこにある民家でも良いんです。

とにかく知識を入れずに愛でる・妄想する・そして調べる。
建造物や街並みを見る時のこだわりとして、とにかく初見の時は何も知識を入れずに見るようにしています。調べれば情報は溢れる程ありますが、私は単純なので調べた情報によって先入観を持ってしまうため、頭の中が白紙の状態で見た場合と、感じ方が大きく違ってきてしまう気がしています。

ガイドなんかを見ると、見どころなどのポイントが書いてありますが、私の場合は実物を見た後に気になった点や歴史を調べはじめるので、見るべきポイントを逃していることもよくあり、自分の謎のこだわりがなければ…と思うことも多々ありますが、何も情報がない中で見ることで、なんの制約もなく自由に自分だけの感情を張り巡らせて、ただひたすらに妄想を捗らせ、愛でるのが私のスタイル。
そうして気になった点を忘れてしまわないうちに、ホテルに戻った後は怒涛のネットサーフィン。特に建築様式のことを調べ始めると、歴史や文化的な背景が色濃く現れているものなので、1つ調べると1つ気になることが増える。様式を調べていたはずがいつの間にか、違う国の歴史にたどり着いていたりと、その繰り返しで夜が明けてしまうこともしばしば。

多民族国家 シンガポールから見える歴史とカルチャー

東京23区ほどのサイズの小さな島でできた多民族の都市国家、シンガポール。1965年に独立し、独立からわずか50年で急激な経済成長を遂げビジネス面からも注目の国ですよね。

国民の内訳は74%は中国系、13%がマレー系、9%がインド系、3%がその他。シンガポールが多民族国家としてなぜマレー半島の一角にできたのかといえば、関税障壁を設けない自由港として、開港当初から多様な民族が顔をそろえた生い立ちが関係しています。

多民族国家ゆえ、宗教も仏教、道教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教などさまざまです。建国以来政府はずっと民族間の協和に努力しているそうで、それぞれの宗教が尊重され、シンガポールの祝日は各宗教にかかわるものが含まれていますす。そうすることで、明確な国民の意識を作り出すことを可能とし想像をはるかに超える発展を遂げていると評価されています。

こうして急速な発展を遂げた多民族国家シンガポールだからこその街並みは、古き良きと最先端の今が共存するどの国とも言えない不思議な様。今回は5つの切り口から紹介したいと思います。

1.目と鼻の先で景色が変わる、シンガポール建築の新旧共演

まずはじめに衝撃を受けたのは、シンガポールの銀座と言われているオーチャード・ロード周辺。最先端が詰まったこの街の近代的な建築物が並ぶ通りから一歩路地に入ると広がるのは、オランダやイギリスの文化と、中国の文化をミックスさせた、華やかな文化を象徴するプラナカン様式の建築群がずらりと並ぶエメラルド・ヒル・ロード。まるで別世界の風景と雰囲気の変化には驚きが隠せません。

振り返るだけでこのギャップ。まるで別世界。

伝統的な建築と、その背後にそびえ立つ近代的なビル群とのギャップがすごく奇妙。ですがこうした風景は新旧が入り交じるシンガポールの姿そのものではないでしょうか。



花やつる草模様のファサードが並ぶ様子は、ずっと眺めていたくなるほどの美しさ。一重にプラナカン様式と言っても色や模様はさまざまで飽きることなく隅々まで食い入るように見ていました。

2. シンガポールにいることを忘れそう。これぞ多民族国家の街並み

多民族国家らしさは街並みに如実にあらわれています。

中国の雰囲気が強い通りをひた進むと、大通り沿いの住宅地の一角に出現するのはシンガポール最古のヒンドゥー教寺院の1つ、スリ・ヴィラマカリアマン寺院。

この辺りは、インドの香りがあふれるエキゾチックなエリアとしてリトルインディアと呼ばれています。このランドマークは、植民地時代のシンガポールのエピソードが物語られていて、1881年にインドのベンガル地方からの移民労働者たちが、新天地で安らぎを得るため女神にお詣りしようと建立された寺院。極彩色に塗られた南インドのドラヴィダ様式のこの寺院は邪悪なものを破壊する女神、スリ・ヴィーラマカリアマンを祀ったもの。

寺院の塔門や屋根の上には、インド神話の神様たちの彫像が溢れんばかりで今にもこぼれ落ちてきそうな勢い。多神教であるヒンドゥー教の世界観がこの圧巻のゴープラムにあらわれている気がします。こんなに神様がいるんだぞ、って。(勝手な感想です笑)

世界には様々な宗教がありますが、寺院や教会も建築様式はさまざまです。色々な国で宗教的建造物を見ることも楽しみの一つ。宗教的建造物は時代背景となる精神性やその時代の芸術の特徴が最先端の技術で表されたものではないかと思っています。
同じ宗派でも時代や暮らし、国によって建築様式は大きく異なるので、深すぎて色々と頭が追いつかないですが、単純に建立された当時の歴史的背景が装飾などにあらわれている宗教建築の魅力は凄まじいものです。

リトルインディア・アーケードを進むと、インド雑貨店や、ゴールドの商品でギラッギラなお店がずらりと並ぶ Buffalo Road。街行く人ももうこの辺りになると観光客以外はインド系の方がほとんどです。さらに進むとこれまた突然カラフルな建物が目の前に。

色使いが斬新というか大胆なのに、うまいこと調和された建物はおとぎの国から出てきたみたいで、がっちり心を鷲掴みにされました。


昔ながらの花輪売りやおしゃれなレストラン、アート集団が描く壁画、巨大シッピングモールなど、古くからある商売と新しい事業が混在していて、躍動する文化が見てとれる活気あるエリアでした。

3. 歴史と最先端の今が出会う場所

場所を移し近代シンガポール発祥の地、シビック・ディストリクトにあるナショナルギャラリー。シンガポールの独立宣言が行われた旧市庁舎と旧最高裁判所という歴史的出来事の舞台となってきた2つの建造物を改修した荘厳な雰囲気が漂う建築物です。

ギャラリーとして生まれ変わる際にも、この2つのナショナル・モニュメントを維持するための保護ガイドラインが徹底されたそうです。まさに歴史と最先端の現在が出会った建造物。稚拙な表現しか出てこないのが悔やまれますが、外観も内観も隅々までマジでかっこいい。本当にかっこいい。何度も言います、かっこいいと。ドーム型の天井やコリント様式の円柱などクラシカルな部分はそのままに、最先端の技術とデザインを取り入れた外観の渋く威厳を感じる佇まいにはうっとりするばかり。

エントランスを抜けると広々したパダンアトリウムがあらわれます。この巨大な空間は旧市庁舎と旧最高裁判所を繋ぐ場所。吹き抜けで自然光がふんだんに入るガラス屋根の解放感が素晴らしい。

最高裁判所だったSupreme Court Wingはモノトーンで統一されていて重厚感がかなりステキ。ドーム型の裁判所建物の天井部分はかつての姿のまま保存されています。

市庁舎だったCity Hall WingはSupreme Court Wingのトンマナとは打って変わり白を基調としたスッキリ優雅な印象。建物を見るだけでも十分満足できる見応えです。

4. 斬新なデザインで魅了されるシンガポール発展の象徴的存在

みなさんご存知、シンガポールの発展の象徴とも言えるマリーナベイサンズ。マリーナベイサンズは57階建ての高層ビル3棟が屋上で連結されたユニークな構造でシンガポールのアイコン的な建造物ですよね。設計はイスラエル系カナダ人建築家のモシェ・サフディ。(モシェ・サフディと言えば、モントリオール万博の一環で建てられた集合住宅「アビタ67」が有名)

海から入ってくる船が、ホテルを門に見立て、シンガポールの関門という意味を表しているそうです。また横から見て「入」字形になっているのですが、この「入」字形にするために東側のビルはイタリアのピサの斜塔(傾斜角5.5度)より10倍近く傾いている52度の傾きになっていて建築の困難さから当時は世界で最も作りにくい建築物という評価もあったそう。本当に大丈夫なん?そのうち崩れ落ちやしない?って単純に思ってしまう傾きっっぷりというか湾曲っぷりというか。

グラント・アソシエイツとウィルキンソン・エアによってデザインされた101ヘクタールの巨大植物園ガーデンズ・バイ・ザ・ベイもシンガポールの象徴的建造物。園内にいくつも立ち並ぶスーパーツリーはSFの世界を彷彿とされる脈々としたデザインでこれ自体が巨大な生命体のよう。ドームは巨大すぎて園内からは全貌を捉えることが出来ませんでした…。

シンガポールの発展と建築は深く結びついていて、わたし今後のシンガポールの建築事情から目が離せません。

5. 高層ビルに囲まれたローカルカルチャー

かたや、ローカルな雰囲気が漂うシンガポールの台所ホーカー(露天商、屋台)。国のいたるところに点在するホーカーで提供している料理は多民族国家のシンガポールらしく中華系、マレー系、インド系を中心に、日本料理や韓国料理、洋食、などと多彩でシンガポールのローカルフードを楽しめます。

観光地にあるレストランなどはやっぱり観光客ばかりですが、ホーカーは現地の人々で賑わっているので、シンガポールの人々の生活を垣間見ることができるスポットです。
背後にはビジネス街の高層ビル群。ローカルカルチャーと新しさが混在するこんな風景もシンガポールらしさ。

それぞれの民族の独自のカルチャーを残しつつも、シンガポールという一つの国としてそこで暮らす多様な国民が新しいカルチャーを作っている、今まさにその過程にあるのだと感じました。まだ50年という歴史の浅い国ですが、これからどのようなシンガポールカルチャーが生まれ根付いていくのか見ていきたいと思う、そんな出張のひとコマでした。

街並みから感じるカルチャー

最後におまけを少し。
街並みだけを見比べても明らかに国の違いが分かる、というのは当たり前のようでいて、実はとても面白いなと感じます。その国、その場所特有のカルチャーが根付いているからこそ、街の数だけ景色も様々で。

せっかくなので、これまで見てきた街並みの有名どころを少し並べてみたいと思います。(過去の自分の写真が下手すぎてお見せするには忍びないのですが…)

まずはこちらのネオン街。

きっと誰もが知ってる場所。一時は危険地帯を代表とする場所とまで言われていた眠らない
街も、ポピュラーカルチャーのメッカとして今や人気の観光地、ニューヨーク タイムズスクエア。

そこから電車で1時間もかからない距離にあるのが、有名なあの橋のある場所。

古い歴史を持ちながら、近年では自然体だけどおしゃれという独特のカルチャーを発信する街ブルックリン。タイムズスクエアと同じ都市でも街の起りや発展の過程によってガラリと雰囲気が変わりますね。

続いてはドイツ。
市街地を散策すると、街のど真ん中にプロテスタント教会の姿が見えます。

ベルリン大聖堂はこの街の景観と信仰心のハイライト、ネオバロック様式の鮮やかなターコイズ色のドームが目を見張ります。映画の世界に迷い込んだのではと錯覚するほど美しい街並み。

最後はアジアから。古い館に提灯の光が灯るノスタルジーな風景。

台湾の九份、もうみなさんご存知ですね。日本統治時代に建てられた古い建物が残っているので、どこか懐かしい雰囲気が漂う街並みです。

まだまだ街並みフォルダを解放したいところですが、キリがないのでこの辺で。建物や街並みって、そこにあるだけで歴史的文化を色濃く表すのですごく面白い。まだまだ見たことも触れたこともない文化や国がたくさんあるので、これからも色々な場所の街並みを見て歩きたいと思います。

この投稿を書いた人

畠中 友香

畠中 友香(はたなか ゆか)ディレクター/エディター

広告代理店、画像系・ドキュメント関連にまつわる課題解決コンサルタントを経てモノサスに入社。連休では隙あらば星を求めてキャンプに。旅が好き。文化や風土の違う国、街で建造物・美術館めぐりをするのが趣味。

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