2016年07月

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金曜日の投稿

林 隆宏
投稿者:林 隆宏
(代表取締役)

2016年07月29日

マーケッターはなぜ新規顧客を集めつづけることに追われるのか。- 後編 -

Open Marketing

林 隆宏
投稿者:林 隆宏(代表取締役)

みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。
前回はOpen Marketingを数値的側面から考察し、
マーケッターがなぜ新規客の獲得に追われつづけるのか
ということを検証しました。

第6回である今回も、前回に引き続き
新規顧客を集めつづけることに追われる仕組みが
どのように生まれているのかを深掘りし、
既存のマーケティングモデルの課題を考えてみたいと思います。
 

新規客の鈍化が起こる仕組み

まずは前回に引き続き、もう少し顧客数の構造を分析します。
下記は前回もご紹介した顧客数の推移表です。

年度 顧客数 3年以上継続客数 5年以上継続客数
1年目 10,000人 0人 0人
2年目 13,000人 0人 0人
3年目 15,100人 0人 0人
4年目 16,570人 1,470人 0人
5年目 17,599人 2,499人 0人
6年目 18,319人 3,219人 720人
7年目 18,824人 3,724人 1,225人
8年目 19,176人 4,076人 1,577人
9年目 19,424人 4,324人 1,825人
10年目 19,596人 4,496人 1,997人

条件は前回と同じく、1年目から10年目まで毎年新規客を10,000人獲得し、
2年目への定着率が30%、3年目以降定着率70%でビジネスを続けた場合の
10年間の顧客数の推移です。
(ここでいう顧客数とは、その年に1度でも購買をしたことがある顧客の数とします)

前回お話しした要点は

  • 5年目までは順調に顧客数が増える
  • 一方で6年目以降、成長が鈍化し、それ以後ほとんど伸びない
  • また、3年以上継続客の数も8年目を境に伸びが鈍化する
  • 10年目でも、新規顧客が顧客数の半分を占めている

ということでした。

では、なぜ顧客数の伸びは鈍化していくのでしょうか。
これは実は非常に単純な数式によって表すことができます。

なぜなら、年度ごとの顧客数を求める数式は
新規顧客数とリピート率が一定という条件下では

顧客数 = 前年度顧客数 + 初年度顧客残存数

によって求められるからです。
もう少しわかりやすく説明すると
以下のような表で表すことができます。

  顧客数 新規客 1年残存客数 2年残存客数 3年残存客数 4年残存客数
1年目 10,000人 10,000人        
2年目 13,000人 10,000人 3,000人      
3年目 15,100人 10,000人 3,000人 2,100人    
4年目 16,570人 10,000人 3,000人 2,100人 1,470人  
5年目 17,599人 10,000人 3,000人 2,100人 1,470人 1,029人

青の網掛けをしている「顧客数」は、その「前年度の顧客数」と、
その年に残っている「初年度からの残存客数」(赤の網掛け部分)を
足したものになっていることがわかります。

2年目の顧客数は、前年度の顧客数である10,000人に、その年に残存している初年度からの
残存顧客数である3,000人を足した、13,000人。
2年目の顧客数は、前年度の顧客数である13,000人に、その年に残存している初年度からの
残存顧客数である2,100人を足した、15,100人。
というように増えていくのです。
つまり毎年、赤の網掛け部分(=初年度からの残存顧客数分)だけ
顧客数が増加していくという構造になっているのです。

つまり、毎年10,000人の新規顧客を増やしていても、
その年に実際に増える顧客数は、初年度から残存している人数にしか
ならないのです。
そして、初年度からの残存数は、当然ながら減少していきます。

前回も述べたように、1年継続率が30%、2年目以降継続率が70%だったとすると、
10年後に残っている顧客数は約120人です。

つまり、顧客数の増加は、前回紹介した下記の図のようになっていくのです。


顧客獲得フローイメージ

新規顧客を毎年10,000人も追加しているのに、
顧客数の伸びが鈍化していくという結果は、
非常に単純な理屈によってもたらされているのです。

ここで触れておかなければいけないのは、ここでは変数を減らすために
リピート率だけをとりあげて議論していますが、
新規客の獲得数が一定というのは無理のある設定なのではないかという点です。

実際に無理があります。
多くの場合は、サービスの立ち上げからしばらくは
導入期でほとんど鳴かず飛ばずの時期があります。
その後、成長期を迎え大きく新規客数が伸び、
少しずつ鈍化しながらピークを迎えます。
その後は少しずつ新規客の獲得が難しくなっていくという
ライフサイクルを描きます。

導入期から成長期に入るまで年数を要するものや、
近年は急速に成長し、急速に衰退するサービスもあります。

しかし、ここで皆さんに知っていただきたいのは、
ライフサイクルが一般的にどれくらいの年数で
変化していくかといったことではなく、

  1. もし毎年同じ数の新規客を集めることができるとしても、
    顧客数の増加は必ず鈍化し、伸びが止まる
  2. 新規客の獲得数が永遠に伸びつづけることはない
  3. 新規客の獲得数が減れば、顧客数は減少に転じる

ということです。

この構造を見つけたとき、すぐに私が連想したのは、少子高齢化問題です。

世界中を見ても、永遠に人口が増え続ける国はおそらくありません。
高度経済成長期と人口増加が同時に訪れ、やがて少子高齢化によって
人口減少が起こり、国力が低下していきます。

問題は、高度経済成長期には必ず終わりがあることがわかっていながら
その対策をしないまま少子高齢化を迎えることです。

ビジネスの世界でも、少子高齢化と同じように、
新規客増加の鈍化は必ず起こります。
にもかかわらず、新規客に売上を頼るビジネス構造を変革しないと、
非常に苦しい経営をせざるを得なくなってしまうのです。
 

売上を因数分解して考える

従来のマーケティングモデルの問題点をより深く理解するために、
もうひとつ、視点を増やしてみたいと思います。

企業の売上は

売上 = 顧客数 × 取引頻度 × 1回あたり取引金額

という方程式で求めることができます。

年間の売上を求めるのであれば、

  • 顧客数       : 年間に1回以上購入する顧客の数
  • 取引頻度      : 上記の顧客が平均して年間に購入する回数
  • 1回あたり取引金額  : 1回の購入で使う金額

ということになります。

顧客数が10,000人、取引頻度が年に2回、1回あたり取引金額が5,000円だとすると、
企業の1年間の売上は
10,000(人) × 2(回) × 5,000(円) =  1億円
です。

先に述べた話では、顧客の増加数はいつか必ず鈍化するという話をしました。

そうなると、売上は取引頻度と、1回あたりの取引金額によって
大きく左右されるようになります。
これはとりも直さず、顧客の質によって企業の業績が
決定づけられてゆくことを意味します。

同じ顧客に頻度高く、多くの金額の購入をしていただけるようにすることが
業績を向上させるからです。

つまり、ビジネスを、維持、発展させていくためには
立ち上げ時期は新規客の獲得により規模の拡大を図り、
顧客数の増加が鈍化するまでの間に、取引頻度や、取引単価を
向上させる必要があるのです。
顧客の「量」から「質」へと経営をシフトさせるということです。
 

顧客数をさらに因数分解して見えてくるもの

一方で、顧客数の伸びは鈍化すると言っても、
顧客数が非常に重要な要素であることには代わりがありません。
しかし、ここにひとつ隠れている要素がもうひとつあります。

顧客数はひとつの因子ではなく、ふたつの因子によって構成されています。
それは、言うまでもなく「新規客」と「継続客」です。

顧客数のうち、「継続客」の割合を増やすことで、
実はふたつのメリットを得ることができます。

  1. 顧客数自体が増える
  2. 取引頻度が向上する

ということです。

継続客の割合を増やすためには
リピート率を向上させる必要がありますが、
それが実現できれば、当然ながら顧客数も増加します。

また、顧客数の中に占める継続客の割合が増えることで、
同時に顧客の取引頻度の平均も向上します。
これも考えてみれば当たり前のことです。

さらに、新規客と継続客を比較した際に、
継続客のほうが取引単価は高い傾向にあります。
(初回に大きな金額がかかって、後々メンテナンスのようなもので
 リピートするようなサービスは除きます)

つまり、継続客の割合が増えることで、
顧客数、取引頻度、取引単価のいずれも
改善することができるのです。
 

顧客の質をあげるためにやるべきこと

では、継続客を増やすために必要なリピート率の向上は
どのようにすれば実現できるのでしょうか。

様々なビジネスのマーケティングに携わってきた中で、
顧客の質を高めていくために決定的に重要なことが
見えてきました。
それは、

初期のリピート率を可能な限り高くすること

です。

ただし、ただ初期のリピート率を高くしようとするだけでは
思ったような効果は現れません。

マーケティングモデル自体を変更し、
初期のリピート率が結果として高くなる構造へと
変化させていくことが大切なのです。

今月はここまでにしたいと思います。

来月は初期のリピート率をあげるための
マーケティングモデルの変更とは何かを
より掘り下げていきたいと思います。

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この投稿を書いた人

林 隆宏

林 隆宏(はやし たかひろ)代表取締役

モノサスの代表。基本的に出張や打ち合わせで出ていることが多く、家庭からも会社からも「いない人」扱いをされているが、寂しがりで有名。料理をこよなく愛し、特に肉を焼くことに対して異常にモチベーションが高い。

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