2016年10月

31

月曜日の投稿

林 隆宏
投稿者:林 隆宏
(代表取締役)

2016年10月31日

固定客に共通する5つのポイント - 前編 -

Open Marketing

林 隆宏
投稿者:林 隆宏(代表取締役)

みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。

前回は、頻度高く購買する顧客と、同じ行動を取らせることができれば、
顧客に、「私はこの企業の顧客である」という意識を持たせることができる
ということを
お話しました。

今回は、そこからさらに一歩踏み込んで、
具体的な内容についてお話したいと思います。

「頻度高く購買する顧客と、同じ行動を取らせる」と言っても、
商品・サービスによっては短期間で何度も購買をさせることが難しい商品もあります。
典型的なものとして住宅などがあります。
しかし、顧客の行動は購買だけではありません。

購買以外の行動もふくめて、高頻度に購入する顧客の行動を
トレースしてもらえるようにする必要があります。

では、まずは固定客に特徴的な行動および傾向を分析してみたいと思います。

固定客化している顧客に共通していたのは
下記の5つのポイントです。

  1. 自分の価値観、悩みにマッチした商品・サービスを利用している 
  2. 商品・サービスのバリューを実感している
  3. 企業・店のことを理解し、語ることができる
  4. 高頻度にリピート行動を起こしている
  5. 企業のコミュニケーションルールを受け入れている

今回はこのうち、1 と 2 の内容について説明していきたいと思います。
 

1. 自分の価値観・悩みにマッチした商品・サービスを利用している

固定客になっていただくために、最低限必要で、かつもっとも重要なのが、
顧客と商品がフィットしていることです。
間違ったものにお金と時間を使い続ける消費者は、
ほとんど存在しません。

これまで私が携わってきたプロジェクトで
どのようにすれば固定客が増えるのかを分析してきた中で、
面白い共通点があります。それは、
「固定客は、自分が利用している商品・サービスが
なくなることを恐れている」ことです。

商品・サービスが顧客に受け入れられるポイントのことを、
存在メリットと言いますが、
固定客の多くは、存在メリットを体験し続けた結果、
「商品・サービスがなくなっては困る」という不存在デメリットを感じています。

商品・サービスが、生活やライフスタイルに深く入りこんでいるために、
存在していることのメリットも感じるだけでなく、
存在しなくなった時のデメリットをより強く感じる傾向にあるのです。

「あそこのパン屋さんなくなったら、どうしよう」
そんな感覚を持ったことのあるかたは、
きっとおわかりになるのではないでしょうか。

また、長く利用し続けているがゆえに、毎回おおげさに
存在メリットを感じるように感情の針を動かすのではなく、
「いつものこれだ・・・」というようにほっとするような、
安心感に近い感覚を持つようになる傾向もあります。

この感覚の最たるものは、市場に出回っているものではありませんが、
「おふくろの味」ではないかと思います。

不存在デメリットを感じている顧客に、注意深く話しを聞いてみると、
もうひとつ共通することがあります。

それは、購買行動を継続するうちに、似通った体験をしていることです。

ヘアケア製品であれば「髪質が変わったと実感する」
教育関連業であれば「以前とは違う自分になったと実感する」
医療関連業であれば「悩んでいた症状が明らかに改善したと実感する」
など、その商品・サービスが顧客に対して共通して与えることのできる
独自かつ本質的な体験のことです。
私はこれを、Core Experience と呼んで、他の項目と区別して扱うようにしています。

固定客化のための施策は、この Core Experience へと顧客を誘引していくための
一連のストーリーのようなものなのです。

そして、この Core Experience を体験していただくためには、
顧客と商品がフィットしている必要があります。
また、言い換えると、このCore Experience によって顧客は
商品と自分がフィットしていることを自覚し、
不存在デメリットを感じるに至ることがわかりました。

顧客と商品がフィットしていることは、Open Marketingの根幹でもあり、
次回以降でさらに詳細に解説したいと思います。
 

2. 商品・サービスのバリューを実感している

言葉にすると当たり前のようですが、
実はほとんどの企業がこの点を見逃しています。
実際に顧客に商品・サービスの良さ=バリューを「実感」してもらうためには、
いくつかおさえておくポイントがあります。

Step1 : 顧客が現状や要望を、自分で把握している

Step2 : 顧客がバリューの実感のしかたを知っている

Step3 : 顧客が継続してバリューを実感している

ひとつずつ簡単に解説したいと思います。
 

Step1 : 顧客が現状や要望を、自分で把握している

顧客は多くの場合、自分自身の状況や要望を正しく把握していません。
これでは、バリューを実感してもらうことは困難です。
いわゆるBefore & Afterを比較することができなくなるからです。

ヒアリングなどを通して顧客自身に現状や要望を表現してもらうか、
こちらから現状を観察してお伝えし、具体的な言葉として
認識してもらう必要があります。

なんのためにサービスを利用するのか、具体的にどのような悩みを抱えていて、
どう解決されることを望んでいるのか。
顧客自身が口に出していることは、本当に自身の意図を表現できているのか。

重要なのはサービスを提供する企業側がこれらを把握するだけでなく、
結果として、顧客自身が自覚することが重要です。
 

Step2 : 顧客がバリューの実感のしかたを知っている

3つのステップの中でも、私はこのステップが最も重要だと考えています。
なぜなら、多くの場合、顧客はサービス・商品を判断する素人であるからです。

味覚に例えるとわかりやすいのですが、
多くの人は、料理や食材の味を、好き嫌いだけで判断します。
もちろんそれでも十分なのですが、付加価値をつけたい商品・サービスでは、
それでは困ります。
顧客に判断を委ねているだけだと本来の価値が伝わらない可能性があるのです。

これには理由があります。

食べたことのないものや、食べ慣れていないものを味わう場合、
顧客はなにをどう味わえばいいのかを知らないからです。

ワインを飲んでも、なんとなく美味しいのはわかるけど、説明できない。
高級なコーヒー豆を買ったけど、味の違いがよくわからない。

私にも大いに身に覚えのあることですが、
これは味音痴なのではなく、どこに感覚を集中して味わえばいいのか
わからないから、判断ができないのです。
つまり、味がわからないのではなく、
味わうポイントを見過ごしてしまうのです。

音楽の経験がある人は、テレビで歌手の歌声を聴けば
その音程が正しいか、発音がきれいか、歌い回しが美しいかを
判断することができます。

サッカーを見慣れている人は、プロの選手のプレーの
どこがうまいのか、きちんと判断することができます。

では、判断する能力のない人に理解してもらうためには
どうしたらよいのでしょうか。

以前、私がとあるプロジェクトで、京都の高級料亭で珍重される
明石の鯛の取材をしに漁港を訪れたときのことです。
漁港での取材のあと、近所にある料理屋に行って、
実際に明石の鯛を食べてみることになりました。

何度か天然の鯛は食べたことがありましたが、
養殖のものと、天然のもの、そしてその中でも高級品として珍重される
明石の鯛の味を見分けるような舌を持っている自信は全くありません。

しかし、料理屋の主人が私に天然の鯛の美味しさの理由と、
味わい方のポイントを教えてくれました。

旬の明石の鯛は、遠浅の漁場にいる海老を好んで食べるため、赤く色づいていること。
天然の上質な鯛は、刺身にしたときの断面の脂の光り方が違うこと。
活け〆をした天然の鯛は、獲れたその日よりも翌日以降のほうが味がのってくること。
そして、口にいれた時にどこに感覚を集中すれば鯛の香りが味わえるのか。
その時、はじめてわたしは天然の明石の鯛の美味しさを実感することができたのです。

特に、最後の「口の中のどこに感覚を集中させるとよいか」というポイントと、
「明石の鯛の香りがどのようなものなのか」ということを事前に具体的に
教わっていたことが重要でした。

そうすると、まともに天然の鯛を食べたことのない私ですら、
明石の鯛の味を判断することができたのです。

卑近な例ではありますが、さまざまな商品・サービスに共通して言えるのが、

  • 多くの顧客が、バリューを個人のあてずっぽうの感覚に頼って判断している
  • 結果として、バリューをただしく認識していない
  • 一方で、具体的にどのようにすればバリューを感じ取れるかを伝えれば、
    多くの顧客が短期間に判断することができるようになる

ということです。
 

Step3 : 顧客が継続してバリューを実感している

Step2できちんとバリューの体験のしかたを説明していても、
実際に顧客が継続してバリューを実感しているとは限りません。

たとえば、高級ヘアトリートメント製品の場合、
正しい使用方法を継続していないと、効果がでないケースがあります。

事前のシャンプーのしかたは正しいか。
髪の毛が乾いている状態で使うのか、少し湿った状態で使うのか。
養毛剤を併用する場合、どちらを先に使うのか。
最初は適量を使っていたが、もったいなくなって量を減らしていないか。
ドライヤーをあてすぎて逆に髪の毛を傷めていないか。
またその逆に半乾きで放置していないか。

これらのことがきちんとかみ合わないと効果を得ることができないのです。

これらを放っておくと、使いかたが間違っているために
バリューの実感が薄れてしまい、本来得られるべき満足を得ることが
できません。

ここで注意しなくてはならないのは、
Step2 のバリューの実感のしかたは事前に説明する必要があるのですが、
Step3 としてわざわざ分けているように、多くの商品・サービスでは、
利用開始後に、再度、顧客の利用のしかたが正しいかという部分に焦点を絞って
確認と調整をする必要があることです。

初回の利用は時は、企業側がサポートをしていたり、
顧客側もなるべく素直に説明内容を実行すること、
そして顧客自身も感覚を集中しているために
バリューを実感しやすいのですが、
2回、3回と継続するうちに、バリューの実感への集中が薄れ、
それとともに、顧客自身の行動が初回から劣化していくために、
満足度も下がっていってしまうのです。

Step1 から Step3 にわけて顧客のバリューの実感へのサポートについて
お話しましたが、重要なポイントは
「バリューの実感を、顧客まかせにしてはいけない」
ということです。

顧客まかせにしてしまった場合、バリューを判断することのできる
一部の人しか価値を実感することができなくなってしまうからです。
その結果、多くの顧客があなたの会社の真のバリューに気づかないまま
離脱してしまうのです。

今日は固定客に共通する5つのポイントの前編として
2つのポイントについてお話させていただきました。

次回は残りの3つのポイントについてもお伝えしたいと思います。

ではまた来月お会いしましょう。

この投稿を書いた人

林 隆宏

林 隆宏(はやし たかひろ)代表取締役

モノサスの代表。基本的に出張や打ち合わせで出ていることが多く、家庭からも会社からも「いない人」扱いをされているが、寂しがりで有名。料理をこよなく愛し、特に肉を焼くことに対して異常にモチベーションが高い。

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