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29
Aug,2017
村上 伊左夫
投稿者:村上 伊左夫
(チェッカー)

2017年08月29日

一年ぶり!ビアガーデンで漫画夜話:後編
〜モノサスの「読書会」#16〜

図書だより

村上 伊左夫
投稿者:村上 伊左夫(チェッカー)

こんにちは。図書委員の村上です。
モノサス読書会・特別編「ビアガーデン 漫画夜話」、前半に引き続き、後半戦に突入しました。
ビールもすすんでゴキゲンなメンバー達、さらに熱いマンガトークが飛び出しそうです。

ますます盛り上がる後編のラインナップはこちら。

後編

それでは後編スタート!
 

奥の奥にある感情が、ワァって上がってくる感じ
『天然コケッコー』(紹介者 松原 恵)


くらもち ふさこ(著)『天然コケッコー』集英社 (2003/8/8)( Amazon

松原

くらもちふさこさんの『天然コケッコー』です。実写で映画化されたので、知ってる人もいるかもしれませんね。

私、学生の頃からマンガをよく読んでて千冊くらい持ってたんですけど、処分しようと思って整理した時に残したのが、くらもちさんなんです。大好きな作家さんです。

くらもちさんの作品は心理描写が独特で、もちろんセリフも絵もイイんですけど、心の奥の奥の奥にあった感情がわぁって上がってくるというか...「確かにそういうこと思ってたけど、表現するとこういう感じになるんだ!」みたいなのが一気にくる。不意をつかれることが多くて、引き込まれるんです。

舞台は生徒7人の田舎の学校。主人公の中学二年生の女の子(そよ)と、同じ年の男の子(大沢くん)が、東京から引っ越してくるところから物語がはじまります。そよにいっつもくっついてる小さな女の子(さっちゃん)がいるんだけど、大沢くんの出現で、そよはさっちゃんのことがちょっと煩わしく感じたりしてしまうんですね...そういう気持ちを感じる状況とか、嫌いじゃないけど面倒みたいな、微妙な感情が、暗い感じではなくコミカルに、でも心の底がつつかれるような感じで描いてある。

くらもちさんの作品はほとんど好きなんですが、やっぱり『天然コケッコー』が代表作かなと思って持ってきました。

加倉井

内容的には恋愛もあるんですか?

松原

そうですね、最初は小・中学生の頃の話なんだけど、恋愛も入ります。

田中

好きなシーンとかありますか?

松原

主人公は結構優等生でガマンしちゃうタイプなんですけど、最初に言えばどうってことない一言を、言わずに我慢し続けたために、タイミングを逃してどんどん状況が悪化してしまい、最後には感情が一気に溢れて泣きだしちゃう。最初から順を追って見ていくと、そこに至るまでの過程ががすごく凝っていて面白かったです。

全部で何巻あるんですか?

松原

14巻です。あと、方言がめちゃめちゃかわいい。一人称が「わし」で、主人公が「わし」「わし」言ってる(笑)。すごくかわいいんです。

 

37年愛蔵、ずっと手元に置いてきたSF漫画の傑作
『サイボーグ 009 地下帝国ヨミ編 前編 後編』(紹介者 上井 正之)


石ノ森 章太郎 (著)『サイボーグ 009 地下帝国ヨミ編 前編 後編』秋田書店 秋田書店 (1995/1/1)( Amazon

上井

石ノ森章太郎の『サイボーグ009』です。自分が中学生の時に買ったもので、奥付に昭和55年って書いてあります(笑)。

みんなは昔のアニメとかで少し知ってるかもしれませんが、物語は大きく2部に分かれてて、前半のブラックゴースト編の終わりを飾る二巻です。いちばん有名なシーンは、サイボーグ009と002が地球に落ちていくシーン...。ここで最終回なんですが、サイボーグなのでまた蘇って後半がはじまるんです(笑)。でもこの巻のクライマックスが一番好き。

僕が生まれた年はベトナム戦争が一番熾烈を極めてた頃で、いわゆる高度経済成長期のなかで育ちました。当時はピカピカした未来のSFがいっぱいあったんだけど、この漫画は闇というか、いろいろなことを背負った少年たちを描いてるんですよね。

ちなみに当時のペンネームは「石森章太郎」で、今の「石ノ森」じゃなかった頃の漫画です。中学時代からずーっと持ち続けてて、引越ししてもずっと手元に残してます。

松原

モノサスの近くに石森プロありますよね。大好きなもののルーツが近くにあるって、どんな気持ちですか?

上井

見つけた時はときめいた!でも、時々しか寄れてません...。

加倉井

お気に入りのキャタクターは?

上井

「002」!鼻が尖ってるジェットリンク。最近のCGの「009」シリーズだと、普通の人の顔になってて、この鼻が再現されてなくて...あんなのは 002 じゃないっ!て憤っている原作世代です。

田中

昭和55年発行...紙が焼けまくってて年季が違う...。

上井

学生時代の漫画は、社会人になった時にほとんど処分したんだけど、これはずっと持っていたんですよね。
 

マンガの神が「真似できない」といった唯一の存在
『妖怪ハンター 天の巻』ほか(紹介者 先田 千尋)


諸星 大二郎 (著)『妖怪ハンター 天の巻』ほか 集英社文庫 (2005/11/18)( Amazon

先田

すみません、作品というより作者推しで、いろいろ持ってきちゃいました。(手元にいろいろと広げる)

全員 おおおおおお〜

先田

あの手塚治虫に「たいての絵は真似できるけど、彼だけは真似できない」と言わしめた、諸星大二郎です。古事記や日本書紀をはじめ、民俗学風俗学、あと世界各国の神話や童話などをモチーフにした話が多いですね、あとSFもよく描いてます。

似たようなジャンルだと山岸凉子も有名ですが、彼女は人間の業みたいなものを描いていて、諸星大二郎はもっとこう、シュールで面白いんですよ。個人的にも神話とか好きなので、うちのネコの名前もぜんぶ古事記から取ってます(笑)。

いろんなテーマから自分の世界を作りあげて、更に進化させたのがこの『鳥類図譜』です。SFやバイオと童話をかけ合わせたような世界。科学に侵されて変化してしまった鳥がモチーフになってたり…そもそもなぜ神話や童話が出来たのか、そこから推察して独自の世界を描いてるような感じです。

ちなみに、昔ジャンプに連載されてたのが、この「妖怪ハンターシリーズ」。

加倉井

破壊力が半端ない…!

先田

結構ゾッとするような話も多いんですけど、あとは未だ完結してない『西遊妖猿伝』とか、奇妙な女の子が主人公の「栞と紙魚子シリーズ」とが…沢山ありすぎて語りきれませんね。 ホラーっぽいんだけど、そうでもなくて、異次元に迷い込んだようなそんな感覚になるのが魅力的なんです。

松原

今も新作を描いてるんですか?

先田

40年以上描いているので結構な大御所なんですが、今も現役で描いてます。オタク歴30年以上なんですけど、諸星大二郎を読み始めたのは大人になってからで…子どもの頃だったら、この絵を受け付けなかっただろうなと(笑)。

加倉井

確かに、今の人には描けない絵かも…

先田

後継者といえる漫画家が出てこないのは、諸星大二郎と、あとは岡田あーみんしかいないと思います(笑)。
 

まっすぐ!本当にまっすぐな主人公
『BLUE GIANT』(紹介者 加倉井 宏美)


石塚 真一 (著)『BLUE GIANT』小学館 (2013/11/29)( Amazon

加倉井

みなさん、『BLUE GIANT』ご存知ですか? ジャズ聴く方いますか? わぁ〜結構いる!嬉しい!このマンガは、世界一のジャズプレイヤーになると決めた男の子の物語です。

高校卒業を控えた宮本 大(みやもと だい)は、とあるきっかけからジャズにはまって、毎日、河川敷でサックスの練習を始めます。毎日、本当に毎日練習するんですけどそんな彼の姿や人柄見て周りも心を動かされていくストーリーです。

店で一番高い楽器を大のために買おうとするお兄ちゃんや、世界一という途方もない夢を「思いっきりやれ」と励ますお父さん、大が上京するときに大号泣する妹など、登場人物が人情にあふれてて、人のあったかさが本当に魅力的なんです。

あと、単なる夢物語じゃなくてお金とか現実をリアルに描いてるのも良くて。楽器を買うときのお金を引き落とすシーンや、ジャズバーで演奏したときのギャラの使い方とかも、ちゃんと描いてあるんです。
主人公のセリフは東北弁なんですけど、それもまたいいんですよね。東北弁なまりでセリフが聞こえてきて、なんか親近感が湧くというか。

この作品を読んでると、本当に「音が聴こえてくる」んですよね。文字で書かれた音が頭の中に響いてきて…読んだあと絶対にジャズが聴きたくなると思います。

半田

まだ連載中なんですか?

加倉井

はい、第一シリーズは10巻で終わって、今は続編の『BLUE GIANT SUPREME』として続いてます。

先田

これ、過去の話として描かれてるんですよね。巻末に関係者インタビューが載ってて、今は成功している彼の過去を語ってる。努力していく過程を書いてるのがホントに面白い。

加倉井

そうなんです。ちなみに、私が一番好きなエピソードがあって…大が仲間とトリオを組むんですけど、そのなかでも初心者の玉田(ドラム担当)だけが、どんなにがんばっても技術も人気も2人には追いつけいない。そんなある日、最初のライブからずっと見守ってきた老紳士が玉田に言うんです。
「よくなっている。ボクは君のドラムを、成長する君のドラムを聴きに来ているんだ」って。

田中

泣いた…いま泣いた。何にも読んでないのに泣けてきた。

全員    笑

加倉井

私たち世代のマンガですけど、もっと上の世代でも絶対楽しめると思います。ほんっとにまっすぐな主人公!全員カッコイイんですよ。
 

ビアガーデン漫画夜話をおえて

一年ぶりの漫画夜話。ビールを屋外で飲むという開放感も合間って、それぞれの漫画への紹介の熱も一層熱くなる時間でした。後半は、引っ越しで整理しなければならない状況でも捨てなかった愛蔵の漫画や、漫画を読んで30年以上の歴史のなかでもなかなか手に取れなかった特異な作家のもの。そしてまっすぐな主人公の姿勢に心動かされるものなど、思い入れのより強いものが集まりました。また来年もビアガーデン漫画夜話、開催したいと思います!

暑さももう少し。
秋の涼しい風もそろそろ吹きはじめる頃でしょうか。
そんな秋に向けて、次回の読書会は「食べ物が気になる本」です。
それではまた来月!

この投稿を書いた人

村上 伊左夫

村上 伊左夫(むらかみ いさお)チェッカー

オタクになろうとしていた頃にかじったHTMLを活かしてチェッカーの道へ。本がある空間が好き。最近は生き物への興味を持ち始めました。

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