2018年03月

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金曜日の投稿

ものさす編集部
投稿者:ものさす編集部

2018年03月09日

自然スクールトエックから学ぶ「自由」になれる場。- 後編 -
話し手:伊勢達郎さん、林隆宏 / 聞き手:西村佳哲さん

めぐるモノサシ

ものさす編集部
投稿者:ものさす編集部

NPO法人自然スクールトエック(TOEC)※1 代表の伊勢達郎さん、モノサス代表の林に、ふたりをつないだ西村佳哲さんがインタビューくださっためぐるモノサシ・後編。

前編では、ふたりの出会いから、トエックでの30年の経験を踏まえた伊勢さんの教育観、自社のマーケティングを経て今のスタイルになった林のWebサイト制作の考え方など語ってもらいました。
後編では、林を含む役員3人がトエックのフリースクールセミナーに参加したり、モノサスほぼ全員がトエックにやでキャンプをしたりと、お互いの組織がより接近した話や、自由についてそれぞれ思うことなどお伝えします。
(インタビュー構成:中庭佳子)

※1徳島県阿南市にあるフリースクール。人や自然との関わりを通して学ぶ自由な学校で、キャンプ、アウトドアの活動をはじめ、子育て支援やカウンセリング、セミナーも行っている。

話し手:伊勢達郎さんプロフィール
TOEC代表。徳島県阿南市出身。学生時代よりカウンセリング・キャンプを学び、(財)青少年野外活動総合センター指導部を経て、1985年「自然スクールTOEC」を設立。個人やグループのカウンセリング及び、沖縄無人島キャンプなど、たくさんのフリーキャンプ(自由なキャンプ)を展開。90年「TOEC幼児フリースクール(ようちえん)」、98年「TOEC自由な学校(小学校)」を設立。社会に新しい学校のスタイルを発信・提案している。大学や看護学校の非常勤講師なども務める。

話し手:林隆宏プロフィール
モノサス代表。経営コンサルティング会社、制作プロダクションを経て2005年に会社設立。東京、徳島、バンコクの3拠点をぐるぐるまわりながら、モノサスという会社を通して、次の社会と会社の在りかたを勝手に模索中。

聞き手:西村佳哲さんプロフィール
建築分野を経て、"つくる・書く・教える"の三種類のお仕事を主軸に活動。ここ2年ほど、町と立ち上げた「神山つなぐ公社」の仕事にドップリ。

役員3人、トエックへ関わり方を学びに行く。

西村さん(以下敬称
Webサイト※2 が公開されたのは12月ですけど、毎年11月に開かれているモノサスの創立記念パーティーが、神山とトエックで行われました。

モノサスからどんな相談があって、どんなことがあったのか、伊勢さんから聞かせてもらえますか?

※2 トエックのWebサイトリニューアル制作をモノサスが担当。去年(2017年)の12月に公開された。(詳しくは前編にて)

伊勢さん(以下敬称略)
えぇ。 その前に、「フリースクールセミナー」という、ようちえんと小学校のスタッフが総力をあげて年に1回おこなうセミナーが10月頭にあって、林さんたちが参加したんです。

オルタナティブな学校とか森のようちえんとかがやってる中身をね、自然の中でのびのびやりましょう、ではなく、スタッフの専門性とか、僕たちが人間をどうみているのか、といったところを丁寧に伝えるワークショップです。4日間あって、フリースクールをやってる僕たちの教育観や人間観を共有して、実際どんなことがおこなわれているか、どんなやり方で進めているのか、ということを伝えるのが初日。


伊勢達郎さん(自然スクール トエック代表)

西村
その教育観、人間観ってところを聞かせてもらえますか?

伊勢
まぁ、さっきの効率の話と重なるんですけど、好ましき人間像、好ましき子ども、を念頭において、どうやれば目標に到達するか、褒めたり叱ったり、あの手この手を使うのが教育だと思うんです。例えばスポーツ監督が、選手にすごいぞと言ってチャンピオンとらせるみたいな、そういうのが教育の効果だし指導力の極みだと。そこを180度ひっくり返すのが僕らだと思うんだよね。

そもそも目標が、物や指導する対象じゃなくて「主体」なわけです。ここに命があって、その人の持ってるものが発露していくわけだから。僕らはそのお手伝いで、もっと育つように場を整えていく環境の人だからね。僕らが持ってるチャンネルもあるのよ、土が乾いてたらその時だけ水をあげたり、やばい時は守ってあげたり、でも信頼して待つとか。

だけど、世の中の森のようちえんは、ほっとけばいいんだ、自然のままがいいんだとか、のびのびさせとけばいいんだとか、すごく言いがちで。これ、農業も一緒だけど、自然のままにすればするほど手間がかかるし、より職人的なところが問われるんですよ。実際にたくさん土に触れるんですよね、ほっといてできるやり方とは違って。

そのことを概念的理念的だけじゃなくて、体験として伝えるし、実際にうちの子どもたちとスタッフがどんなふうに関わっているかも、そのまんま見てもらう。研修2日目には、日常のフリースクールを観察してもらって、裏番組で僕が、スタッフ独特のコミュニケーションの取り方をレッスンしたり。


子どもたちのミーティング風景を観るフリースクールセミナー(2016年時)の参加者たち

伊勢
3日目は、その子どもたちに身をおいたら、外側にも内側にもどんなことが起きるかを生で体験してもらう。そこで起きたことをお互い振り返りながら解き放つというか。次のステージには何が必要なのか、その場をサポートする人になってみる練習をしたり…。

ということをゆっくり振り返る時間をたっぷり取りながら、どんなことが起きたかということを分かちあいながら、4日間進んでいくという。

西村
そこに、林さんたちが来たと。


右:西村佳哲さん(リビングワールド代表)

伊勢
林さんが来たいのは確信があると瞬間的に分かったんだけど、僕が心配だったのはあとの役員2人が、どう考えても乗り気じゃないだろうと。温度差があるだろうし、またとんでもないこと言われたと思ってるんじゃないかな?と。

しかも軽くないんですよ、こんな環境だし。だって前に企業系の人が来て、オープニングで僕が挨拶したら、「で、研修はどこでしますか?」と聞かれたことがあって(笑)。それくらい驚きだと思うんですよね、ここで?みたいな。

なので、大丈夫かなと。僕らが想像する以上の好ましくないインパクトもあるし、そんな懸念もありました。ただ、そこは大丈夫だと林さんは言って。僕は半信半疑。でも、ある程度大丈夫ならなんとかなるかなと。

西村
4日間やってみて、伊勢さんたちとしてはどんな時間になりました?彼らがいたことで。

伊勢
広がったし深まりましたよ。うちに安易に馴染むことなく、ここで進化しているのがわかりました。その人らしいやり方で、無理して一緒に遊ぶとかじゃなくってね。心地よく居てもらったりね。

他の人がどろんこ遊びを楽しそうにやってるのを、遠くからじーっと楽しそうに見てるんだけど、そこに入れないから離れているという感じじゃなくて、つながり感の中で居る、それも伝わってきたし。その場における価値みたいなことを、たぶん教わりたかったと思うんですよ。やりたいことやっていながら調和感があるみたいな。

なので、種木みたいなものは届いたなっていう手応えはあったんですよね。

西村
林さんは、その時の体験として話しておきたいことはありますか?


話しておきたいこと…。行ったきっかけを先に話してもいいですか?最近、会社のカルチャーやルールが変わってきてるんです。僕は「ものさす化」と言ってるんですけど…。

西村
ものさす化?


カタカナの社名をひらがなに開いて「ものさす」。サイトがきっかけで※3ひらがな化してきてるんです。

※3 2015年にリニューアルした当サイト名『ものさす』は、会社名『モノサス』のカタカナをひらがなに開いたもの。

会社の新しい取り組みとかルールとかをものさすサイトに載せるようになってから入社した子たちって、やっぱりそういうことに影響を受けて入ってきてるんです。でも会社の制度って、以前からの連続性があるんで、これまで暮らしてる人たちとルールがミスマッチみたいなことが起こっていて、それがチクチクチクチク溜まってくるわけですよ。僕はほぼ会社にいないから気にならないんですけど、会社にずっといる人は気になるわけで。

例えばフルフレックスにしたら誰も朝礼にいないじゃないかと。で、林はほとんどいないから気づかないかもしれないけど、話すべき管理職がいないとか、メンバーは70人もいるのに5人とかでやってる日もあるんだと。お前これどうすんだと。
そういう指摘を、ずっと、のらりくらりかわしてきたんですけど、ある日、役員会議で胸ぐら掴まれるような感じで、どうするかいい加減決めろ、みたいな感じになったんですよ。でもただやめるのは嫌だなと思って。だからといってこの状態で新しいルールを立案しても、たぶん他の役員2人は受け入れられないだろうなと思ったんですよ。

それでどうしようかと思ったときに、トエックで最初にみたモーニングミーティングが頭に浮かんで、モノサスの朝礼と紐づいたんです。あれをそのままやるとかではないけど、まずは1回役員を連れて見に行くしかないと思って。でも役員が揃って訪問できる日程を探っても合わなくて、どうしようかとトエックのWebサイトを見てたら、セミナーあるじゃん!と。
これしかないと思ったら「満席」って書いてあったんですよ。これは、年に数回の土下座のタイミングだなと。「いっちょ頼んでくるわ」と、腕まくりしてお願いしたのがきっかけですね。


林隆宏(モノサス代表)

西村
それで、林さんは行ってみてどうだった?


どうだったか…。僕は、幸せでした。

西村
どんな幸せだったの(笑)?


なんだろうな…。一番しっくり来る言葉を探したんですけど、色が変わったていうのかな、レンズが変わったっていう…。

西村
世界の見え方が。


そうですね。メンバーの顔とか表情が、バチーンと入ってくるようになって。
それもなんか伝わっているみたいで、メンバーからも言われました。ある時から林が、すごく自分たちの話を聞いてくれるようになったと。
そういう時間がすごく幸せだと思ったし、関係性というか、そういうものがどうすれば会社の中に入るのかを真剣に考え始めましたね。

西村
色が変わって、見えていたのに見ていなかったのか、聞こえていたのに聞こえてなかったのか。そういったものが受け取れる感じに?


そうですね。それは変わりましたね。

モノサスほぼ全員、いよいよトエックへ。

西村
セミナーの後、達郎さんたちに、あの社員全員キャンプの相談が来るんですかね?

伊勢
そう。でもその前にもちらっと相談受けていたような…。ただ全員キャンプの方は、物理的なキャパとして無理でしょうと。あとやることがね、お祭りみたいなイベントだったらできるけれども…。例えば雨が降ったら壊滅的だし、諸々。最初はね。

それと、たまたまその月がイベント月間だったから、スタッフが疲弊して「えー!」ってならないかな?と思ったんだけど、満場一致でやりましょうとなったんです。だったら勤務も大幅に変更して、やれるだけの体制を整えようということになりました。

西村
具体的にどんなことをやったんですか?

伊勢
え〜っとね、事前の打ち合わせの時に、スタッフと一緒にこの場を体験してもらおうということを話して。それと、まぁなんというか、これは勝たなければならないという…。

西村
勝たなければいけない?勝ち負け?(笑)

伊勢
こんなに丸投げしてくるんなら、これは負けちゃいけないと。一生懸命やったからいいです、じゃなくって。例えば、雨に関して言うならば、絶対降らない。

西村・
(笑)

伊勢
トエックに対して、楽しみに来てる人やらおもしろがる人もいるけど、なんで来たのか?とか、今日1日終わればそれでいいや、っていう人もかなりの比率いるだろうと。どちらかというとそういう人の方が多いだろうから、まずはその人の居場所を作りたいと思ったんですね。その人の現象をちゃんと認めるというか。

なので、「そうですよね」という話を、ちゃんとしようと思ったんですよ。言葉は緩やかだけど、気持ち的には全力投球で。相当だらっと喋ってますけど、心の中では「ここで一発目の勝負は決まるな」みたいな気持ちはありました。実際「そうですよね」って言った時、反応はありましたね。



キャンプ当日、モノサスメンバーに向けて挨拶する伊勢さん

伊勢
その後、僕が構成したプログラムで、マッピングっていうのかな?地面にロープをピッって張って、「体力」と「やるき」の軸を作って、あなたはどこの状態?みたいなのをやって。


「体力がある>なしの軸(青ロープ)」「やるきがある>なしの軸(緑ロープ)」が引かれたマトリック上の地面。参加者は自分の今の居どころに近いところに立った。

伊勢
それでおいしいことに、幹部のひとりは意欲もないわけですよ。

西村・
(笑)

伊勢
そこはインタビューしますよね。幹部としてみんなを連れてきて、それが表現できるって素晴らしいじゃないですか。これがOKなら、そうじゃない人も全然OKですよね。
やる気はあるけど飲み過ぎて体ボロボロみたいな人とか、アウトサイダーにいる人にもインタビューして。

その後、体験フリースクールをやったんですよね。ミーティングをやって、ここでバーっと遊んで。それが夕方に終わって、6〜7人で “えんたくん” を囲んで、今日どうだった?みたいなのを、メンバー変えて3ラウンドくらい。感じたこと、気づいたこと、わいわい聞きあってもらって。


円形のダンボールの上にクラフト紙がのった「えんたくん」を囲み、それぞれの膝に乗せ、お互いの話を自由にメモしていく。

伊勢
最後の1時間でフィッシュボールをやりました。真ん中の4〜5人が、気づいたこと学んだことを言って、抜けると新しい人が入ってくる。これもおもしろかったです。



フィッシュボール開始時の様子。真ん中に座った人が今回感じたことをそれぞれの言葉で語る。席を抜けるのも、座るのもそれぞれのタイミングでOK。

伊勢
「楽しかったけど、それで?」みたいな子もいたし。そんなのもう、素晴らしい助けになるメッセージですよね。そこで絶対に反応あるはずだから。できるだけ丁寧に聞いてあげたいですよね。それはかなり、いい場になったと僕は思います。着地点はなく言いっぱなしで終えて、あとは交流会です。得意な分野なので全力投球。もてなさせてもらって。


トエックとモノサスの交流会のようす。トエックのある徳島県阿南でとれた地魚の干物やお刺身、トエック農園でとれた野菜をたっぷり使った料理でおもてなしいただいた。

西村
トエックとしても初めてのことですよね。

伊勢
そりゃもう初めて。後にも先にもないでしょう。

西村
みんなで遊んで。

伊勢
スタッフもすごい、濃厚に遊んで。うちのなむちゃんが代々木のモノサスまで訪ねて行くくらいだから(笑)。みなさんを送迎していた大型バスを、翌日の朝も見送ったんだけど、町内会ではひとつの事件でしたよ。

*キャンプ当日の詳細な様子は『モノサス13周年、徳島に行ってきました。』の後半部分でもお伝えしています。

一人ひとりが「自由」になれる場づくり。
達郎さんはその大先輩。

西村
林さんは、なぜああいう1日を作ってみたかったの?ああ、それよりも、林さんはトエックに何を求めているんですか?


何を求めているんですかね(笑)。う〜ん…。今、思いつく言葉でいうと、一体になりたい。

西村
一体になりたいって、それちょっと(笑)。
トエックと?それとも、モノサスって会社自体がもっと一体になりたいって話?


だいぶ語弊のある言い方ですけど、モノサスとトエックが一体になりたい。というか、もう一体じゃん?くらいの気持ちなのかな。そもそも違うことをやっているように感じていなくて、僕自身が。

西村
Webの会社とフリースクール。違うことをやっているようには感じていない。


感じていないんですよ。何で稼いでいるかは確かに違うんだけど、やろうとしていることは実は同じなんじゃないかと僕の中では思っていて。達郎さんはその大先輩なんですよ。だから、何を求めているかというと難しいんですけど…。モノサスにきちんとトエックをインストールすると、その先に何かあるんじゃないかと思っていて。

西村
最初トエックに来て、子どもたち一人ひとりが立ってる感じが気持ちよかったって言いましたよね。林さん、自分の会社の人たちにも、立って、自分の前にいて欲しいなって。


はい。それはあります。明確にあります。

西村
一人ひとりが立ってると、何がいいの?


何がいいんでしょうね(笑)。

西村
でもそういう状況を求めてるんでしょう?


そうですね。求めてます。何がいいんだろうな………………………………。

西村
「立ってる」って表現することは、伊勢さんにとしても違和感ないんですよね?

伊勢
ないね。自分で立ってるってことは、自由ってことだね。

西村
もうちょっと詳しく聞かせてもらっていいですか?人が自由でいるということは…。

伊勢
社会とか調和とかから外れて好きにやるんじゃなくて、多様性や共同体の中で、依存せずに自分でいられること。だから共にいられる。それは、自由だし創造的だし。幸せだし民主的。

西村
依存って、よくない言葉として響きやすいけど、依存はだめですか?

伊勢
自覚のない依存はうっとうしいね。甘えあうのは極めて好きなんだけど。

ふなさん(以下敬称略)
達郎さん、むちゃくちゃ依存的です。


ふなさん(渡邊有紀さん。トエックスタッフ)

一同
(笑)

伊勢
自覚がある方がたちが悪い(笑)。

西村
「自由である」というのは、無自覚な依存をしない。すると、お互い一緒にいることができなくなるから。

伊勢
そうですね。相手を道具にしてしまうじゃないですか。そういうときは「自分のために使わせて?」とちゃんと言って、利用した方がいいと思うのね、ありがとうって伝えて。そうじゃなくて勝手に道具として使って、ピンと来てないのはよくないね。

西村
伊勢さんはトエックをとおして、どんな子を育てたいんですか?

伊勢
まぁ、自分で判断できて、調和的にやりたいことを進めていける…。
僕はかなりアウトサイダーなところがあるし、権力が嫌いなところもあって。でも社会にはコミットしてるつもりなんですよ。何かを変革するとなっても、社会に軸足を置いてやりたいことをやっていく。それは人それぞれやり方があると思うんだけど、起きたことを自分で判断して、どんどん反応したり、応答していくような人かな。

西村
その人がちゃんとその人でありながら、社会に参画していく。関わっていける。そういう人たちが育つというか、生まれていく。小学校卒業という時間まで、そんな場をひとつずつ作っていく。
林さんが作りたい状況は?


右に同じでいいと思います。

西村
それは会社の中で作りたい?


そうですね。会社の中というか。会社の役割が変わりつつあるという課題意識があって、それが伊勢さんがおっしゃった役割になっていけるといいんじゃないかというのは、僕の中の仮説なんですよね。

西村
会社の役割?もうちょっと聞かせて。


会社って、僕たちの世代では割と共通認識としてあると思うんですけど、人類の長い歴史でいうと、そんな長いものではなくて。
工場で物を作るようになって、大量生産で一人ひとりの生産性をあげることに特化して運用されてきたと思うんですけど、今後は機械やコンピューターが生産性を上げていくことになると思うんです。
そうなると逆に、人間が非生産的な部分を担うことが多くなるんじゃないかと。すると否応無しに、自分は何がしたいんだ?とか考える割合が多くなる。それと自由って極めて近いと思っていて。

そこを感じ始めている人たちが不安感を持って、日本も世界も動き始めている気がするんです、僕は。そこに対して自分なりの答えを示したいと思うんですけど、その姿のひとつが、ここにあるわけです。

「自由」という言葉をめぐって。

西村
ここに来る車の中で、「自由」って言葉はそんなに使いたくないと林さんは言ってましたね。そこちょっと聞かせてもらっていいですか?


学校とかならいいと思うんですけど、「自由な会社」って言われてもなって。

西村
(笑)


うちの会社で「自由と責任」をワンセットにして言ってたんですけど、そうすると隣に「権利と義務」っていう概念があるんですよね。
「自由」という言葉の出自を調べていくと、日本語としては相当古くて、あんまりいい意味で使われてないんです。「自由奔放」「気ままにする」「放蕩な行い」とか。英語の liberty とか freedom も調べてみると、なんか特権階級が特権を自由に使うみたいな…。

伊勢
余暇みたいなのね。


はい。そんな意味がニュアンスとしてありました。他にも何かないかなと思ってたら、安土桃山時代の「楽市楽座」の「楽」という言葉が「自由」という意味でも使われてるんだとわかって。

「楽」ってもともと楽器を象形文字化したもので、トエックさんもよく音楽やってますけど、音楽のある場って、聞いててもいいし、でも人を楽しませるための音楽は鍛錬しないと身につかないし、やっぱりそこに鍛錬はいるんだなとか。自分の中ですごいスッキリしたんです。

楽しむために技術がいるし、楽しませるためにも技術がいる。その、お互いが楽しい。自分が楽しい、あなたも楽しい。働くことも楽しいし、暮らすことも楽しい。そっちを追求していけるといいな、というのがあって。

あと「自由」という言葉を使わない理由に、世間で言われている働き方改革があまり好きになれなくて、そこで使われる「自由」と一緒くたにされたくないな、というのもあるんだと思います。

西村
伊勢さん、今の話で何か思われるところがあれば。

伊勢
「楽」しい。いい話だと思った。だけど僕は「自由」って言葉が好きなんよねぇ…。最後に残る言葉くらい好きだなぁ。「自由」がいいなぁって思うのと、「自由」って言葉が持つ力がある。余暇とか管理されたことへのアンチの自由じゃなくて、根源的な自由が持つ力があって。

授業のあいだの自由時間みたいな、おまけのような自由じゃなくって、もともと、計算せずに、自分の基本を知るとき、「自ら」に「由(よし・よる)」とする方だと思うんだけど、伸びやかさがあるんだよね。「自分を生きる」みたいなのが、好きなんよね。

伊勢
今、会社だけじゃなくて、教育界でも「自由」って言葉の使われ方がね…。特にフリースクールといえばもう、広辞苑にも「不登校の居場所」って出てくるくらいだから。

西村
(笑)

伊勢
「自由なやり方の学校」とか、ましてや「自由になることを学ぶ学校」なんて書いてあるわけないし、説明がよくないなと思うんだけど。でも単純に好きなんだよね。


今、おたがいがどう見えている?

西村
僕は最初、そんなに意図なく二人をつないで、でも途中から林さんたちがずんずん入っていくなぁというのがあり、で、伊勢さんやふなの方もね、林さんたちのことを面白がってるなというのもあり、横であれよあれよと見ていた感じ。
さっきはなんか「一体になりたい」みたいな、そんなことまで言っちゃって。
まぁどこまでいくのかなぁと、横であたたかい気持ちで拝見しております。
本日今時点で伊勢さんは林さんのこと、林さんは伊勢さんのことを、どういう風に感じて見えているか、最後に聞かせてもらいたいなと思います。どちらからいこうか。


後輩からですね、これは。

西村
了解(笑)。


達郎さんをどう見てるか。わからないんですけどね、すごく好きだということは間違いないです(笑)。

この前飲みながら達郎さんには言ったんですけど、トエックの考えとかあり方が、達郎さんの中ではゆるぎないんだけど、それが世の中に広がっていかないことへの忸怩たる思いがあるんじゃないかと。最初に、達郎さんがメルマガの件で燃えあがったみたいなところで勝手に思ったんです、僕は。ないかもしれないんですけど。あって欲しいのかもしれないですね(笑)。

それを、教育の方で広める手伝いができたらいいなと考えていたんですけど、それってビジネスに入れた方が広まるかもしれないと、ある時思ったんですよ。そうすると価値がもっと見直されて、より広まるし、自分自身がやりたいことでもある。だから教育界は達郎さんがやって、ビジネス界は僕がやって、背中合わせで同じことやってるみたいな。

達郎さんのことは僕が引き継ぐんだ、くらいなことを言ったんです。トエックを継ぐとかそういうんじゃなくて、達郎さんが30年やってきたことが確実に世の中に影響があることなんだってことを、「俺が証明するんだ」くらいの気持ちがあるのかな。

僕は自分たちの会社を守ることに必死になるしかない10年があったけど、その前に達郎さんが30年、「自由にする」ということを固めてくださってた。僕は、それを学べばいい状態になってることはすごくありがたいことだから、それをきちんと会社にいれて、世の中に広まっていくといいし、自分たちの会社の中がまず、きちんとならなきゃいけないなっていう気持ちで、僕は接しています。

西村
はい。ありがとうございます。

あの、「自由」の話がね、トエックの場合抽象的ではないっていうか、すごく具体的じゃないですか。自由の取り扱い方が。こういう時はこう、ああいう時はこう、あん時はこうしたっていう。そこがすごいことだなって。理想としての自由とか、概念の自由っていくらでも話せるんだけど、みなさんのすごいところは、いちいち具体的だってことだと思います。

伊勢
実存主義ですね。

西村
それが共有されていくのがすごい。あと伊勢さんは文章を書くハードルがそんなにないんだね、不得意な人も多い中で。感覚と同時に、それを表現する言葉をちゃんと持っている…。

えっと、伊勢さんから林さんに…。

伊勢
ああ、そうか。


照れ臭いですね。

伊勢
ビジネスにどんどん行くのに、ここをおもしろがれるっていうのは、チャレンジャーだと思います。僕もかくありたいなと思っているので、そこは好感の持てる一番大きいところで。

賢いのに酒が飲めて愛嬌がある。で、僕は終わったことにはあんまり興味がないというか、次のことにいきたいんだけど、林さんもきっと、次のおもしろいことを自分軸で探してるんやな、みたいなところもすごく共感が持てるところ。でもビジネスの世界にいるし、おもしろいな〜って思って。

僕らからは全然手の届かないことをしてるからね。動かしてる単位が違うじゃないですか。例えば研修するって言っても、あれだけの人数が東京やタイからやってくるって…。神山から来るバスもちゃんと用意して。トエックだったら一発で「どうする?」みたいなことになるけど、もはや別世界…。

西村
林さん、「別世界」だって。全然違う世界だと感じるみたいよ。


(笑)僕の中では、勝手に同じ世界だと思っている…。

西村
はい。では今日はここまで。

伊勢
ひとつだけね、言っておきたい。どっかのタイミングでと狙ってて。いや、ホームページの反応っていろいろあるけど、分からないことがたくさんある、この状況で浮かんだだけなんだけど…。これ、反応が分からないから、「反応半X」※4 っていう…。

※4 「半農半X(暮らしの半分は自分や家族が食べる分くらいの小さな農業の時間、残りの時間は自分のやりたいこと「X」に費やすという生き方)」という言葉にかけられてます(笑)

西村・
…(笑)。

ふな
それが言いたかったんだ。


今、西村さんも僕もね、達郎さんは何をいうんだろうと思ってね、たぶん一番深くキャッチャーミット構えてたら…。

伊勢
マズイかと思ったんよ、この空気感(笑)

一同
(笑)

西村
言いたかった。

伊勢
そう。これを言わずにとっておくには惜しいなと…。

西村
よし。しかと受け止めました。タイトル「反応半X」!
ご飯食べましょう、ご飯。

この投稿を書いた人

ものさす編集部

ものさす編集部(ものさすへんしゅうぶ)

ものさすサイト編集部です。メインは2名。「正直な今」を伝えるべく、日々ネタを求めてアンテナ発動中。たのしそうな気配を感じたら、どこでも飛んでいきます!

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