2017年03月

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火曜日の投稿

ものさす編集部
投稿者:ものさす編集部

2017年03月28日

サテライトオフィスを作ってくれた大家さん、「これまでと違う」に向き合う。
~ interview 大家 稔喜さん(大家工務店)~

めぐるモノサシ

ものさす編集部
投稿者:ものさす編集部

先日、神山サテライトオフィスが完成するまでの道のりを、ものさす式DIYでもご紹介させていただきましたが、その取材の中で特に印象的だったのが、大工の大家 稔喜(おおや としき)さんの存在。

諸事情で設計士さん不在となり、不安が募るサテライトオフィス委員の栗原に「一緒にやろう」と言ってくれた大家さん。その後も、普段のお仕事とは違うモノサスの要望に対して、いつも前向きに、さまざまな工夫やアイデアを出してくださり、実際手も動かして助けてくださいました。神山サテライトオフィスは大家さんなしでは完成できてなかったでしょう。まさにサテライトオフィスの救世主。話を聞けば聞くほどどんな方なのか、ますます気になります。

今回はそんな気になる大家さんに、サテライトオフィス施工時の思い出や、ご自身の大工稼業のこと、神山で働くことについて、栗原が伺いました。
(インタビュー構成:中庭)


奥左:大家さん。右手前:栗原(クリエイティブ部)。神山サテライトオフィスにて

大家 稔喜(おおや としき)さんプロフィール
1979年徳島県生まれ。祖父と父の影響で大工を目指し、建築系の高校、専門学校を経て、2000年に父の元へ弟子入りし、今に至る。現在は大家工務店の仕事と、町の民家再生プロジェクトの仕事で日々精進している。


サテライトオフィスづくりのはじまりと
大家さんとの出会い

大家さん(以下敬称略)
去年(2016年)の4月に、真鍋さん(フードハブ支配人でプロデュース部部長)からフードハブのテストキッチン*の施工を依頼されたんですよ。こっちに移住してきた人の仕事は、入札以外では初めてやったんで、頑張りました。


*かま屋が完成するまでフードハブのテストキッチンとして使われた土間。現在はモノサスのサテライトオフィス宿泊棟のキッチンとして使われている。

その流れで、「モノサスのサテライトオフィスもあるんやけど」と言われて。
サテライトの方もてっきり真鍋さんが指揮とるもんかと思ったら、“栗原さん”っていう、初めて聞く名前の人で、誰やろうと。

栗原
初めてやりとりさせてもらっているのに、僕がなかなか設計書を持っていかなかったんです。その頃、ものさす塾がはじまったばかりでバタついていて*。
かろうじて夜、時間が取れていよいよ設計書を見せた後、設計士さんがスケジュールの都合で参加できなくなったことをお伝えしたんです。そしたら、設計士がいなくてもいけると言ってくれましたよね。
*栗原は2016年7月からはじまった神山ものさす塾第二期の塾長だった

大家
もともと設計士や監督さんを置く仕事の方が珍しい話で。リフォームだったら依頼主と話をしながら進めるスタイルの方が多いけん、やれんことはないやろと。
ここは場もええし、これからどんどん栄えて、人の往来も多くなるけん、仕事させてもらった方がうちとしてもいいかなと。
「しません」という選択肢はなかったですね。逆に栗原さんの方が不安だったんちゃう?

栗原
最初は設計士さんと大工さんに任せておけばいいと思っていたから…。行程や手順がわからないし、何を伝えなきゃいけないのかもわからない。だからその時は、不安しかなかったですね。

大家
まあやれると思いました。栗原さんや、モノサスの人たちが「ええね」っていうのに近づけたらええだろうなと。
それよりもびっくりしたのは、見積もりにシャワーが入ってなかったこと。

栗原
予算が限られていたので、ひとつずつオプション形式で見積もりを出してもらってたんですけど、足したり引いたりしている間に抜けてしまって…。
しかもそれ以外にも、大家さんの施工費以外の工数を、予想以上にかけさせてしまいましたよね。

大家
やれるだろうなと思ったんですが、これも甘かった。ほんでもええ勉強になったというかね。見積もりって大事やなと思いました。


神山のメイン商店街のうちのひとつ、寄居商店街の長屋の一角をサテライトオフィスとしてリノベーションした。写真は施工前のオフィスの外観。


これまでの仕事と違う
お金に代えられない体験

栗原
大家さんがいろいろ工夫してくれて、とても助けてもらいました。
わがまま言って一階に明かり取りを付けてもらった時も、明かりの取り方のアイデアを出してくれたり。

大家
付けてって言われた時は「ええ!」ってなったけど(笑)。
そこはデザイナーさんとか設計士さんがいないデメリットでもあるんやけど、自分やったらここまでですと。まぁ明かりがとれたけん、結果よかったなと。
あと建具も家にあるやつ持って来よったね。トイレの扉も、昔の防音の扉つけて。一階の取調室(会議室)の窓枠も、タイミングよく解体現場を通りかかって、拾ってきた窓枠を寄せ集めたり。

栗原
逆にアクセントになりました(笑)。
あと、オフィス全体で多くの木材を使っているじゃないですか。普段こんなに使うものなんですか?


一階の入り口通路に光が差し込むよう、屋根に半透明の波板を使用した。左の壁の窓は大家さんが解体現場から見つけてきてくれたもの。

大家
なかなかないですね。神山の人って木を選ぶよりも、ないものねだりで「街のやり方」に憧れる。壁は真っ白いクロスの方がええっていう考え方なんです。モノサスさんは逆に、クロスは嫌だ、漆喰でいくと。他にも、フローリングは既製品でいきます?って聞いたら、無垢がええですって。今までのお客さんと全然違うんだなと。

栗原
漆喰塗りも、当初は僕たちでやるつもりだったのが、みかねて大家さんが手伝ってくださって。大家さんもそこは本職ではなかったのに。

大家
こりゃ無理だ、間に合わんと思ったんです。ここまで一緒にやってきて、「土壁勝手にやってよ」とは言えんかった。しゃぁない、一緒にケツ拭こうかと(笑)。しかも見積もった漆喰の量では、絶対足らんやろうなと思って。プロなら薄く塗る技術を持ってるけん、足りるけど、素人が塗ったら厚塗りになって足りなくなるなと。ちょっとでもブレーキかけれる人がおったほうがええと思って。


漆喰を塗る大家さん(右)

栗原
漆喰塗りも、大家さんは昼間の大工仕事の後に、自分は塾が終わってからこっち来て、夜な夜な二人でやって、毎日のようにつきあってくれましたよね。

大家さん
家には「帰りは遅くなる」と言って塗ってました。これをやり遂げたら、おれはしばらく休むけんって。

栗原
(笑)

大家
週末、塾生やら街の人が手伝いにきてくれるって聞いた時、野郎ばっかりだと思ったら女性ばっかりで、なんて素敵な仕事場だと(笑)。

栗原
ものさす塾とか神山塾の塾生が来て、大家さんテンション高かったです(笑)


休日に漆喰塗りを手伝いに駆けつけてくれたものさす塾や神山塾の塾生たち

大家
うわーっ、ここはなんだ!って。まあそれは冗談として(笑)
下手は下手なりに数おったらガンガン進んでいくなっていうのが、今まで体験したことなくて、おもしろかった。正直なところ、ここにおったら感覚が若返るなと(笑)。これは貴重な体験、お金に変えれんよね。

親父とおかんはハラハラしとった、生活かかってるんで。おれはそんな感じじゃなくて。10年、もっと先で、こう、自分にとってプラスになったらええかなと。お金とかじゃなく、気持ちでプラスになったらええかなと。ほなけん、積極的に関わろうかなと思っとったし。

うちの嫁と卒塾式に一緒に行って、ここのすごい熱量というかなんというか、雰囲気が気に入って、『モノサス行ってくる』って言っても文句を言われなくなった(笑)


2016年12月に行われたものさす塾の卒塾式パーティー。11月に完成したばかりのサテライトオフィスで行われた。


卒塾式の日、大家さんからいただいた花束

栗原
施工前のご近所への挨拶まわりも、一緒に来てくれましたよね。最初ひとりで行ったら、「誰や〜」て言われてしまって…。そしたら大家さんがひょこっと来てくれて。顔つなぎみたいなこともやってくれました。

大家
二人でやるってきめた時点で、それはせなあかんことだと思ったので。一緒に漆喰塗った仲だし。
卒塾式楽しかったんですよ。栗原さん泣きよったし(笑)“くりさすTシャツ”着てね。

栗原
(笑)


卒塾式当日、塾生にプレゼントされた “くりさす(栗原+ものさす)” Tシャツを着て挨拶する栗原


完成したサテライトオフィスで塾生たちの記念撮影


じいさんと、親父と、
受け継がれて来た大工稼業

大家
ここの机はね、親父が頑張って作ってくれたんですよ。親父もまあまあすごい大工で、僕は3代目なんですが、同じ歳の頃の親父と比べると、レベルが全然負けとるんです。

栗原
大工さんのレベルってどんなことですか?

大家
技術力ですね。宮大工までいかないけど、お寺つくれるんですよ、親父なら。寸法が決まっとって、木を積み重ねていくようなものもいけるんです。

栗原
お父さんのそいう姿を見ていて、大工さんになろうと思ったんですか?

大家
うん、小さい時から決まっとったね。格好よく言うたら、親父の様子見てなりたいなと。
実はじいさんに生まれた時から「お前は大工せえよ、大工せいよ」と言われとって、気がついたら大工しとったような(笑)

栗原
(笑)

大家
けどね、手に職あるのは感謝してます。
じいさんと親父がちゃんと築いてきて、大家工務店がこれで信頼されるなと。何より感謝せなあかんのはこれやなと思っています。

栗原
神山はいま」で、専門学校に行かれていたと書かれてましたが、大工の勉強をされていたんですか?

大家
いやいや。大工になるのが決まってるでしょ?高校出てすぐに就職はちょっと…。外に出たいなと。大工でいこうと思ったらお寺もあるし京都だ!と思って、高校の先生に「簡単に京都にいけるところはありますか?」ときいたら「あるぞ」と(笑)。ほな、いかせてくださいと。

栗原
何を勉強されてたんですか?

大家
建築一般と、椅子やら、インテリアのデザインを。でもあんまり興味を持てなかったんです。椅子のデザインばっかり書きよるなと、いう感じで、あんまり為にならんかったけど、そこで友達がいろいろできてよかったんです。

帰ったら親父の元で大工見習いとして、手刻みで仕事をしていました。最近ではプレカット工法が主流なんやけど。
今思えば、その時もっとちゃんと見ておけばよかったなと。当時は遊ぶことにウエイトを置いていたけど、結婚して落ち着いた今、あの時もっと勉強しとけばよかったなと(笑)


神山の変化のなかで
働く、関わる、豊かになる

栗原
結婚してからは神山以外に住んでたんですよね?

大家
石井の方に住んでました。当時は神山から出て生活してみたくて。けど、やっぱ子供できて、親の側におった方が何かと便利だし、住み慣れているから、神山ええなと。静かで住みやすい。気もつかわないから楽ですね(笑)

栗原
神山は今、めまぐるしい動きがありますが、そういうのって仕事として関わりながらどう考えてらっしゃるんですか?

大家
前だったら関わらないですね。西村(佳哲)さんに呼ばれんかったら、関わらなかった。
けど、関わった方がぜったい得やなと。意地張ったって絶対得にならん。
移住者の人らが、求めているもんが何か知っといた方が、ええやろと。みんなそんなんせぇへんけど、やったらええちゃう?と。
おれらは関係ないやろなという気持ちで、意地張ってるだけかもしれんし。

栗原
これも「神山はいま」の記事で読みましたが、青雲寮プロジェクト*も関わってらっしゃるんですか?

*元神山中学校寄宿舎『青雲寮』をリノベーションして集合住宅にしようというプロジェクト

大家
施工自体はまだ決まっていなくて頑張り次第なんですが、集合住宅のミーティングに呼ばれて参加してました。設計士の方はどんな人でどんなことやるんやろと。
実際大工として関わっているのが民家再生*で。工務チームとつなぐ公社の方と一緒に、おためし住宅を作っていってます。


大家さんも施工に参加されている改築中の古民家のようす。完成後はおためしハウス(移住を考えている人がテスト的に滞在できる施設)に生まれ変わる。


施工中の大家さん

栗原
今日のワーキンググループとは繋がっているんですか?

神山町の地方創生戦略を考えるワーキンググループ。この日大家さんは1日参加していた。

大家
たぶん繋がってくる、繋げていけたらええなと。

今日は1日「いい会議について」という話し合いだったんやけど、みなすごい自分の考えを持っていて。しかも隣が大南(信也)さん*で、発言するのもどうしよう!恥ずかしい!と思ったけど、開き直って発言してみました(笑)。

*NPO法人グリーンバレーの理事長。アートプロジェクトや求職者支援訓練、サテライトオフィス誘致など、クリエイティブに過疎化を進める「創造的過疎」に取り組まれている。

次の回で分科会に分かれるんですが、俺、“住まい” にいくのかな。でも無難にいくのはおもろない、違うことしたい。全然違う分野のほうがおもろい。

それにしてもワーキンググループは、仕事休んででも参加するのに価値がある。神山でなんかしたいという熱のある人が集まるけん、すげぇなと。
これは大南さんの受け売りだけど、心が豊かにならなあかんなと。仕事がなんぼ順調でも、心が豊かにならんと活性化したと言えん。結局つながっとるんかも知れんけど、儲けとるのが先なのか、心が豊かになるのが先か…。

栗原
ものさすオフィスを作った時はいかがですか?

大家
心が豊かになる、「奉仕のこころ」(笑)。

栗原
(笑)

大家
それは冗談だけど、なんとかなりよると言って、なんとかなっちゃった。人の往来があるからいい営業になる。早速ランドスケープさんがここ(サテライト)の机みて、フードハブのかま屋のテーブルも注文くれたし。


神山の杉で作られたかま屋のテーブル

かま屋の看板の丸いロゴマークも依頼されて木で作ったんだけど、まあまあ丸でええかなと。そしたら「もっと丸にしてください。ずらしてもきれいな丸にしてください」と言われまして。それで本気の丸をつくりました(笑)
塗料も塗りませんということだったけど、梅雨から夏にかけてやばいんじゃないかと。
でも、そしたらまた作りますよ。


かま屋の看板にあるロゴマークの丸い部分は、大家さん渾身の正円

栗原
ありがとうございます。
私たちも大家さんに、何か返せるものがあればいいのですが…。

大家
そういえば今週も瓦割りが。今大規模に民家回収しとるけど、経費削減せなあかん、誰が割る?となって。そしたら周りが「ものさす塾の若い子たちは?」と。

栗原
(笑)
なんかうまいことやりたいですね。地域活動時間みたいに。

大家
奉仕の心で?

栗原
奉仕の心で(笑)。


モノサス神山サテライトメンバーで瓦割りに参加した様子


インタビューをふりかえって
〜大家さんへの手紙〜

前途多難だったサテライトオフィスの施工も、神山での新しい動きも、前向きに楽しみながら取り組まれる大家さん。モノサスにとってかけがえのない存在です。時に見せる人間的な一面にも、勝手ながらますます親近感を持ってしまいました。

大家さんと栗原の関係性は今も続いていて、たびたび大家さんが「こんな家具いる?」と解体現場で余った家具の写真を栗原に送ってくださったり、オフィスに立ち寄ってくださるようです。

そんな大家さんに、たくさんお世話になっている栗原が、感謝の気持ちをこめてお手紙を書きました。

大家さんへ

初めてだらけの神山。もちろん古民家改修も初めての経験でした。

次の工程も見えず、何をすべきかも見えない中、親身になって一緒に歩幅を合わせてくれたのが、大家さんでした。

社内調整に悩んでいたら、仕事終わりの夜遅くにコンビニで一緒に悩み、解決案をどんどん出してくれました。
完成までの日数が少ない中、昼間はサテライトの改修工事。夜は遅くまでDIYをした漆喰塗りを手伝ってくれました。

貴重なお休みの日も「乗り掛かった船やけん!」と嫌な顔せず、ワイワイと一緒に手伝ってくれました。
ご家族と過ごす時間を削らせてしまい、本当に申し訳ない気持ちと、最後まで一緒にやってくれたことに、本当に本当に感謝しています。

ありがとうございました。

おかげさまで、居心地の良い、オフィスになりました。(やはり冬は寒かったですね。)

その後もオフィスにちょこちょこ顔を出してくれて、不便なところは出ていないか?と様子を見に来てくれています。
その度に遠慮なく、いろんなお願いをしてしまい、すみません。

大家さんの人柄もあり、歳も1つ違いということもあり、なんでも相談しやすい兄貴として、色々と頼ってしまいました。

これからも、引き続き頼らせていただきます( 笑)。

前に話していた、市内へ旨いもんでも食べに行きましょう!連絡しますね。

         クリエイティブ部・サテライトオフィス委員 栗原 功


左:大家さん、右:クリエイティブ部 栗原

この投稿を書いた人

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