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May,2017
和田 亜也
投稿者:和田 亜也
(コーダー / ディレクター)

2017年05月09日

駆け出しディレクターが考えるディレクション
〜元教師がWebディレクターになって感じたこと〜

Webディレクター.docx

和田 亜也
投稿者:和田 亜也(コーダー / ディレクター)

こんにちは。ディレクションチームの和田です。

私は、神山ものさす塾でコーディングを学んでからモノサスにディレクターとして入社しましたが、実のところディレクターとは、どのような仕事なのかをきちんとイメージできていませんでした。というのも、私の前職は中学校の教師だったからです。

今年から新たにディレクションチームに配属になり、あらためてディレクターという仕事について考えるようになりましたが、そのなかで、教師の仕事と似ている部分があることに気づきました。
今日はそのことについて書いてみたいと思います。
 

「教師」と「ディレクター」の共通点とは

入社して3ヶ月ほど経った頃、とあるWebサイトのリニューアルの案件を担当することになりました。規模も大きく、代々木のモノサスとタイにあるモノサスとが共同で進めることが必要な案件で、私は日本側の制作ディレクターとして関わりました。

この案件では、プロジェクトマーネージャーの上井の下で、制作する上で大変重要な設計や品質管理、制作物の進行管理について学びました。
私が担当したのは、量産ページのコーディングの雛型となるテンプレートを作ること、テンプレートができた後は、クライアントと制作者の間に立って指示を伝達し、制作進行を管理することでしたが、案件を進めるうちに、私は、ディレクターと教師の仕事に共通点があることに気づきます。

それは、「立場の違う人に物事を伝える」こと、「関わり方がアウトプットのクオリティを左右する」ことの2つでした。
 

共通点1. 立場の違う人に物事を伝える

学校では、教師が生徒に教科の学習内容を伝えます。
私は社会と国語を教えていましたが、自分がすでに理解していることを、何も理解していない人に伝えるには、内容を噛み砕いて、相手にわかる言葉で伝えることが必要です。同じ内容を伝えるにしても、生徒一人ひとり理解の度合いは違いますし、それぞれに応じてフォローが必要です。

教師の頃、先輩の先生に「自分が苦手なことのほうがうまく教えることができる」と聞きました。自分が得意なことは、どこがわかりにくいのか、どこでつまずくのかがわからないため、みんなもわかっているという前提で物事を考え、授業を進めてしまいがちです。しかし、自分が苦手なことを他人に教える場合、自分自身も苦手なので、理解を深めるために勉強し、どうやったらわからない人にもわかりやすく伝えられるかを考えて授業を組み立てるようになります。

これが案件の場合はどうでしょうか。
相手が生徒ではなく、クライアントや社内の制作者に変わります。それぞれの立場の人に合わせて、説明内容を工夫する必要があります。

まず、クライアントに対しては、先方の意図を汲み取り、こちらから具体策を提案したり、クライアントの考えとこちらの認識が合っているかを確認します。ただ、クライアントからの指示でも、それが最初に決めたルールから外れていたり、何か疑問があったりする場合は、すぐに確認し、随時コミュニケーションをとりながら進めていきます。
お互いがいかにスムーズに仕事を進めていけるかを考えて動いていくことが大切です。

次に、社内の制作者に対しては、クライアントからの指示をどのように伝えると、制作者が制作しやすいかを考えます。場合によっては、パワーポイントなどのツールを使って、Webサイトの見た目を再現し、伝わりやすさを工夫します。

私がディレクションをして大変だと感じたことは、クライアントからの急な修正や追加の対応などがあったときに、制作者にどのように伝えるかということです。

制作者は、一つの案件だけをやっているわけではありません。複数の案件が並行する中、予定外の作業をなんとかやってもらう必要がある時もあるので、こちらとしても、申し訳ないなぁという気持ちと、でもやってもらうしかないという思いで、頼みにいきます。その際は、なるべく制作者に負担がかからないように、資料を準備し、短時間でわかりやすくなるよう努めました。
 

共通点2. 関わり方がアウトプットのクオリティを左右する

学校では、教師がいかに生徒と関わるのかによって、生徒一人ひとりのアウトプットする力も変わってきます。どうすれば、できないことができるようになるのか。これは個人の能力の差もあれば、物事の受け取り方ひとつとっても、それぞれ違うので個々に対応が必要です。

例えば、夏休みの宿題には必ず作文が出るのですが、作文が苦手な生徒は多く、やってこないということも少なくはありません。そのまま未提出として、成績に反映させることもできるのですが、作文が苦手な生徒でも、どのように考えて、どう書き始めたらいいのかといったことがわかれば、少しだけでも書けるようになるのではないかと思い、放課後に補習授業をしたことがあります。

最初は、書きたいことがない、できない、と言っていた生徒たちでしたが、生徒から話を聞き、作文の素材となる言葉を一つひとつ拾い出し、それをつなげていく...。そんな作業を経て、生徒たちは作文を書き上げました。決して上手な作文ではないんですが、全く何にも書き出せなかった(書き出す方法すらわからなかった)生徒の顔は晴れやかでした。私もその顔を見て大変嬉しかったのを思い出します。

案件においても、自分の伝えたいことや、して欲しいことを、相手にわかるように伝える際にも、「関わり方」は重要です。言い方もとても大切だと思います。こちらが伝えたつもりでも、相手にはきちんと伝わっていないこともあります。そんな時は、その人に応じた関わり方を模索します。

例えば、資料を一緒に読むなどして、細かく意思を伝え、どういうことをこちらが求めいているのかを伝える必要があります。きめ細やかなコミュニケーションをとることにより、制作者にこちらの意図が伝わるのではないかと考えます。
話をする時間帯や話しかけ方といった関わり方次第で、制作者にも気持ちよく作業をしてもらえるかどうか変わってくると思います。


 

ディレクターは「水先案内人」

案件の場合、クライアントと制作者、ディレクターとが一丸となって一つのプロジェクトを進めていきます。これも教師と生徒の関係でも共通することですが、生徒が作文を書けるようになりたいと思う気持ちと、教師が生徒に作文を書けるようになって欲しいと思う気持ちとが一致しないと、物事はうまく進んでいきません。

私はディレクターの役割とは、「プロジェクトを進めていく際の水先案内人」ではないかと考えます。どのようにプロジェクトを進めていくべきか、またプロジェクトに関わる人にとってよい進め方はどのような方法かなど、方向性を示す人。プロジェクトによって関わる範囲や、仕事内容は多岐にわたりますが、全体を把握し、クライアントと自社がお互い信頼して仕事を進めていけるように、段取りする役割を担っていると感じます。

誰かに何かを依頼するときや、一緒に物事を進めていくとき、どのようにすればスムーズに進むのか。そのためには、伝え方や関わり方を工夫する必要があるし、普段から周りの人々とのコミュニケーションを取ることも必要です。日頃のたわいない雑談も、人との関わり方を培う上では大切だと思います。小さなことですが、ディレクターとして、案件を進めいていく上でスムーズにことを運ぶための一つの要因になってくると考えています。

教師とディレクターの共通点、人との関わり方、相手にどのように伝えるのか、どのように相手と関わるのか、それらは簡単なようで実はとても難しい課題です。ですが、今後も、教師のときの経験を十分に生かしながら、人との関わり方を常に考え、模索し、制作もディレクションもスムーズに実践できる「水先案内人=ディレクター」になれるよう学び続けたいと思います。

この投稿を書いた人

和田 亜也

和田 亜也(わだ あや)コーダー / ディレクター

京都生まれ滋賀育ち。流れに流れて滋賀から神山を経て東京へ。映画、ゲーム(特にレトロゲーム)、怪談、読書が好き。神山でスーツケース1つの荷物で生活したことからミニマルライフに目覚める。

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