2016年04月

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水曜日の投稿

ものさす編集部
投稿者:ものさす編集部

2016年04月27日

家族以上、友達未満?
デザイナーという職人、石橋 剛さん

めぐるモノサシ

ものさす編集部
投稿者:ものさす編集部

今回インタビューしたのは、モノサスと深いゆかりのある、グラフィックデザイナーの石橋 剛(いしばし たけし)さん。

石橋さんはフリーランスのグラフィックデザイナー。広告、販促ツール、エディトリアルなどグラフィックデザイン全般から、アートディレクション、撮影ディレクションなど、紙媒体を中心に手がけ、そのクオリティの高さには驚かされるばかり。
プロデュース部 部長の真鍋より、石橋さんとの「つながり」についてメッセージ(ラブレター?)をもらいました。

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石橋さんとの付き合いは、14年くらいになります。

彼は、私が駆け出しの新人のころから、一緒にタイ、ベトナム、インドやロシアなどの過酷な環境に2人で数週間乗り込み、それぞれの国で編成する多国籍なチームと一緒に、現地での広告の制作仕事をヘビーにこなしてきた、言わば戦友です。

私は、彼との関係を「家族以上、友達未満」だと思っています。

この十数年、私の人生の浮き沈みを「一方的」に共有している家族以上の存在だけれど、決して友達とは気軽に呼べないプロフェッショナルな仲。(はっきりと、「真鍋さんは友達ではないです。」と言われたことがあります…笑)

そんなつながりから、今は、モノサスとしての関係が育ち、こうして、彼のおしゃれな自宅兼事務所に伺い、『ものさすサイト』の記事にまで登場してもらうようになっていることはとても喜ばしいことです。(私は未だかつて、自宅に招待されたことはありません…)

家族以上の関係と言えば、2年前に神山に引っ越すまでの2009年からの6年間、彼が年賀状の写真を撮り続け、私たち家族の成長を見守ってくれていました。(今もデザインはしてもらっています)


石橋さんが撮影&デザインを手がけてきた真鍋家の年賀状(2009~2014年)

「ともに生きていきたい人たちと、働く」。
モノサスで働くわたしたちが大切にしている言葉です。

たとえ彼に対するこの想いが一方通行であっても、私は、彼とともに生き、働き続け、一緒に老いて行くのだろうと思っています。

今年の年賀状の家族写真は、また彼に撮ってもらおうと思います。

真鍋太一


モノサスと石橋さん、その広く深いつながり

モノサスと石橋さんとのつながりは、創業前からという深い仲。実はモノサスのロゴを作ってくれたのも石橋さん。社名の由来でもある「自分のモノサシをもつ」というコンセプトを見事に表現したロゴは、これまでのモノサスの歩みを支えてきてくれた(ただいまリニューアル中)。

ロゴ以外にも、プロデュース部が関わるプロジェクト「Google イノベーション東北」のパンフレットやイベント会場全体のグラフィックデザインなど、数々のクライアントワークでご一緒させていただいてきた。


昨年 11 月に渋谷ヒカリエにて開催されたイノベーション東北主催 INTERNET FOR LOCAL DAY。イベントのタイトルロゴ、会場の吊りバナー等、イベントを盛り上げる陰の立役者である空間デザインを担当。


当日会場で配布されたイベントパンフレット。全国のローカルからゲストが集まるこのイベントの特徴がひと目で分かるデザイン。思わずテンションが上がる。


石橋さんのデザインによってリニューアルされたイノベーション東北のスタッフTシャツ。大きくポップな INV の文字が強く印象に残る。

仕事のたびに驚かされるのは、その柔軟さと職人技的なデザイン技術。その仕事ぶりの秘訣を伺うため、石橋さんのオフィスにお邪魔した。
 

「暮らす」と「働く」をバランスよく

石橋さんのオフィスがあるのは原宿と千駄ヶ谷の中間。賑やかな通りから一本入ったところにある、緑が多い閑静な住宅街のマンションの一室だ。ここは石橋さんのオフィス兼住居。リビング・ダイニングと仕事場、寝室のゆとりのある間取り。明るく整頓されたお家で、奥様と猫と犬と暮らしている。大きな窓から神宮外苑の開けた町並みがよく見える。


石橋さん(右)と奥様の美加さん(左)。この日はおいしいコーヒーを振る舞ってくださいました。

「仕事場と住居が同じというのは、僕の理想とする環境で、一番ストレスがない。ずっと思い描いていて、やっと最近実現できました。考えてみると、昔の日本はみんなこうやって働いていたんですよね。」

徹夜で仕事をすることもあるが、ワーク・ライフ・バランスの取れた暮らし。最も自分が働きやすい環境がいま実現できていると言う。

「デザインの道に進んだきっかけは、ゲームデザイナーの姉の『デザインとか好きなんじゃない?』という一言です。それまで考えたこともなかったんですが、だんだん『そうかもしれない』と思い始めて。」

高専に進学後、桑沢デザイン研究所に入学。卒業後は広告系の制作会社に入社し、会社員として働き始める。そこで石橋さんを待っていたのは、先の見えない長時間労働だった。

「デザインは、時間をかけないと辿りつけない仕事。会社ではひたすら働いて、デザインやクライアントワークの基礎を覚えることができましたが、毎日12〜13時間も手を動かすことが求められると、家族や身近な人達よりも、職場の人たちと過ごす時間の方が圧倒的に多くなってしまう。そんな働き方には疑問を持ち続けていました。」
 

「すき間」を埋める、フリーランスとして

スキルを身につければ、会社に所属していなくても生きていける。数年で退職し、フリーのデザイナーとして活動を開始した。

「当時の主な仕事は、セールス・プロモーション寄りの案件でした。車のオーナーズマガジンから、アンケートハガキまで、とにかく何でもデザインしましたね。その頃の自分は、突然フリーランスになったので全然経験が足りなくて。例えばグローバル企業のプロジェクトだと、全体のトンマナに合わせながら、各国独自のコンテンツをデザインしなければいけません。そこでいかにクライアントの要望を聞いてアウトプットしていくのか。当然、誰も教えてくれないので、仕事を進めながらOJTのように手探りで掴んでいきました。それがクライアントワークにおける『コツ』を掴むきっかけのひとつだったかもしれません。」


石橋さんのリビング兼ミーティングスペースにてインタビュー。右手で傾聴するのは愛猫サンダー

代表の林に出会い、交流が始まったのはその頃。フリーランスでの多彩な仕事ぶりについて、石橋さんは自分の役割を“隙間産業”だと形容する。

「たくさんのデザイナーがいる中でフリーランスとして生き残るには、自分だからできる特色がなければいけない。そこで選んだのが“隙間産業”です。
たとえば、有名なアートディレクターさんが最初のグラフィックと方向性は決めるけど、動き続けるプロジェクトの細かい制作物までは手が回らない場合。そこでは、すでにあるコンセプトやトーン&マナーを理解しながら、齟齬が起こらずスムーズにプロジェクトが進むデザインが求められますが、それをやろうとする人って実はあんまりいないんですよ。それなら自分がやっていこうと。」
 

「面倒くさいことをやってくれる人」という価値

クライアントの意図を汲みとり、齟齬がないクリエイティブを作るには、コミュニケーション能力も、グラフィックのスキルも高度でなければならない。

「面倒くさいことをやってくれる人、と思ってもらえたら勝ちだなと。そういう、誰もやらないことに価値があると思うんです。」

モノサスにとっても、その“面倒くさいこと”をお願いできる石橋さんは、なくてはならない人。そうしてモノサスとの繋がりがあるなかで、いままでWebなどデジタルのことをやらなかったのはなぜだろう?

「Webもやらなきゃなあ、と思っていたこともあります。でも、結局やらないことにしたのは、技術を取得してもすぐに古くなってしまうし、ディレクションもあまり性に合わないから。だったら僕は、ひとつのことを突き詰める“職人”としてやっていきたいと。専門的だからこそ、深く追求し、長く続ける事が出来る。デザインを一生続ける仕事にするために、より狭く深くしていきたいんです。」


石橋さん仕事場風景。机周りはとてもシンプル。本棚にはデザイン書や紙見本が並び、棚には写真が趣味の石橋さんのカメラが覗く。部屋の一角には柴犬・ハジメくんも。

そう、石橋さんの制作スタイルは「職人」。
だからこそ、安心して仕事を任せることができる。

「サラリーマンとして組織に入ると、技術職の人も昇進するとマネジメント職になりますよね。あれが僕にはよくわからない。それぞれの専門職でレベルが上がっていくようなキャリアパスの方が自然だし、個人が積み重ねた専門技能も社会から失われない。ひたすらプロマネを追求したり、そういう生き方をする人が増える方が、暮らしやすく働きやすい社会になると思います。」

そしてもうひとつ、石橋さんのすごいところは、的確な情報をつかむリサーチ能力。石橋さんと長く仕事をしてきたプロデュース部の山内も「クライアントも知らないような規約を見つけてきたり、皆がイメージフォトを見つけられない時でも、石橋さんはテーマにドンピシャなイメージを探し出してくる」と語る。そのリサーチ能力は、いったいどうやって身につけたのだろう?

「リサーチするのは、単純に無駄なことをしたくないから。デザイナーになった頃はインターネットが無かったので、プロジェクトが始まる時には“資料探し”というプロセスがありました。インスピレーション源として事務所の本棚や本屋さんで写真集なんかを片っ端から見て、自分のなかで作りたいイメージをだんだん明確にして『これがベスト』と言えるものを作る。そうした作業を経て身についたのかもしれませんね。」

聞けば、Google検索が台頭してきてからも、検索結果のページは当時ほぼすべて(!)チェックしていたそう。さすがに今は検索結果が膨大なため同じことはできないが、「確実に結果を出す」ために「面倒くさいことをやる」石橋さんらしいエピソードだ。
 

つながりを大切に、
そして職人として極める

確かな腕と知識をもって「職人」としてデザインに向き合う石橋さん。
いま、いちばん楽しいと思う仕事は?と聞くと、イベントだと答えてくれた。

「普段グラフィックデザインをしていると、受け取る人の顔を見れないんですが、イベントだと実際に会うことができるのが目新しくて。特に『Nomadic Kitchen』のイベントでは、写真を撮った時のことも考えながら畑の中に机を作ったり、現地で急遽必要になったウェルカムサインを地元の料理人に書いてもらったり、その場にあるものをやりくりしながらディレクションしました。ライブ感があって面白かったです。」


2014年に長野県小布施町で開催された『"DANRAN" by Nomadic Kitchen | Pleasure of Gathering ・食のつながり、団欒の喜び。』のようす。その場にあるものでやりくりする、ライブ感のある設営に。

「Nomadic Kitchen」は、プロデュース部の真鍋がライフワークとして始めた、豊かなローカルフードを探るプロジェクト。石橋さんはプロジェクト全体のアート・ディレクションから、オリジナル・ソルト「Nomadic Salt」のデザインまで手がけ、哲学とスタイルを持つ「Nomadic Kitchen」のイメージを先導してくれている。


nomadic kitchen salt

また、同プロジェクトのイベントで知り合った広島県・瀬戸田にて無農薬レモンを育てる農園主からの依頼で「citrus farms たてみち屋」のロゴとフライヤーもデザインした。


広島県・瀬戸田の無農薬レモン農園、「たてみち屋」のロゴとフライヤー

その他にも、レストラン「cignale enoteca」のオリジナル・アイテムのパッケージのデザインなど、二足のわらじを履くモノサスメンバーとの”つながり”から手がけているプロジェクトも数多い。
通常のクライアントワークほどの予算が無いなかでも、快く引き受けてくれているのは、石橋さんが“つながりを大切にする人”だから。


cignale enoteca 山椒ペッパーのパッケージ

ほかにも、カフェ「Bear Pond」のオリジナルグッズのマグやバンダナなどのデザインサポートや、石橋さんの従兄弟が代表をつとめる静岡のアパレルブランド「NO-MORE NO-LESS」のアート・ディレクションからブランドディレクションなど。いずれも洗練された、無駄のないデザインで、石橋さんの職人技的なデザインへのこだわりと、受け取る人のことを考え抜いた思考が、できあがったものから見て取れる。


石橋さんデザインの Bear Pond Webサイト(http://www.bear-pond.com/


コーヒー豆のパッケージ、マグカップ、Tシャツのデザインも手がけた



NO-MORE NO-LESS カタログより抜粋

最後に、石橋さんから見た“モノサスのいいところ”を聞いてみた。

「いろんな人が二足のわらじ的な活動をして勝手に動いていった結果、新しいことが生まれている。そこが面白いですね。」

石橋さんとモノサスの関係性は、冒頭、真鍋が送ったメッセージのように
“家族以上、友達未満”という言葉に象徴されるのだろう。

お互いがプロフェッショナルとして、信頼しあうこと。

職人として高みを目指しながら、出会った人たちとのつながりを大切にする。そんな石橋さんの仕事のスタンスに魅力を感じて、たくさんの時間を共有してきたモノサス。これからも、ともに生きて、働いていけることを願っています。


石橋 剛(いしばし・たけし)さんプロフィール
デザイナー。1978年生まれ。静岡県出身。桑沢デザイン研究所卒。広告制作会社を経て、2005年よりフリーランス。グラフィックデザインを基本に、広告や広報誌等のプロモーションツールの制作やCI/VI開発を行う。また、一般企業に対するデザインサポートだけでなく、食とファッションのコラボレーションプロジェクト「PIONEER SQUARE PANTRY」、フードプロジェクト「Nomadic Kitchen」、下北沢のコーヒーショップ「BEARPOND ESPRESSO」等、インディペンデントプロジェクトのデザインサポートも行う。

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