bookmarkお気に入りリスト

ケーススタディ

コーポレートサイトリニューアルにおいて、デザインを作る前にやるべき準備

コーポレートサイトリニューアルにおいて、デザインを作る前にやるべき準備

こんにちは、デザイナーの河原崎です。私たちモノサスは日々、BtoB企業を中心にコーポレートサイトリニューアルに励んでいます。
サイト制作には、ディレクション、デザイン、コーディングなど様々な役割や制作フェーズがありますが、その中でもデザインは、見た目の印象やサイトの使いやすさに関わる重要な役割を果たします。(デザインと一言でいうと幅広いですが、今回はサイト制作におけるアートディレクション、UI設計、グラフィックデザインまでを括って「デザイン」と呼びます。)

私はデザインを作るにあたって、まず制作対象を知ることが一番大事だと考えます。それは作る相手のことを深く知らないと、クリエイティブのゴールが導き出せないからです。制作対象をよく理解し、作るべき指標つまりコンセプトが導き出せると、デザインの方向性が明確になるので、制作をする上で事前のインプットはとても大事です。

今回はデザイナーの私が、制作前にどのような情報を事前にインプットしているのかをご紹介します。
インプットをする流れとしてはまず、【STEP1】でリニューアルの目的とターゲットを理解する。そして【STEP2】に企業のことを徹底的に調べる。【STEP3】でそれらの情報を元にリニューアルにおけるコンセプト(目指すべき方向性)を導き出す、ということを行っています。

1. リニューアルの経緯と問題点の整理

「お問い合わせを増やしたい」「見た目が古くなってきたのでイメージを一新したい」「事業の方向性が変わった」「会社が合併した」など、どの会社にもコーポレートサイトをリニューアルする際、目的が必ずあります。
まずはその企業がなぜリニューアルをするのか、それらを整理してリニューアルのポイントを明確にし、最終的にデザインに反映していくことが必要になります。
企業によってはRFP(提案依頼書)をご用意いただくことがありますが、無い場合は担当者からリニューアルの目的と経緯をヒアリングをすることをしています。
そしてRFPがある場合でも、そこに書いていることが企業の本音なのか、本当にサイト内で伝えるべき内容なのかを判断することも必要だと考えます。

例えば、規模の大きい企業であるほど、Web担当者がRFPをまとめる際に内部の様々な人の意見・要望が飛び交うため、それらをすべて反映させようとすると、「何を一番に伝えたいのか」や「リニューアル本来の目的」を見失ってしまい、内容にブレが出てしまう事があります。
我々制作会社はその内容を見てリニューアルの目的に立ち返り、それが企業にとって本当にリニューアル目的になっているかを、きちんと精査する必要があると考えます。
またデザイン面においても、アニメーションを多用してほしい、他社のサイトを参考にこんな感じにしたい、といった具体的なご要望をいただくことがあります。見た目やアニメーションについては担当者の好みによって左右されていまう事が多いので、そのご要望が本当にリニューアルの目的に有効か、もっと良い見せ方はできないかを判断した上で提案をする必要があると考えます。

2. メインターゲット・ステークホルダーの整理

リニューアルの目的と合わせて、サイトへ訪れるターゲットを明確にします。サイトには企業ごとにさまざまな訪問者がいます。

  • 新規顧客
  • 既存顧客
  • 製品やサービスを使用するユーザー
  • 就職希望者
  • 株主投資家
  • 社員とその家族
  • グループ会社

サイトに訪れる多種多様なユーザーにもれなく並列に伝えようとすると、サイト上で何のコンテンツを押し出して行くべきかが判断しづらくなるので、特に優先度の高い訪問者を整理することも大事だと考えます。
これにより、伝える内容の優先順位が明確になり、デザインやコンテンツで目立たせるべきポイントの整理をすることができます。

リニューアル目的とターゲットを理解した上で、次はその企業のことを徹底的に調べていきます。イメージとしては、その企業の社員になったつもりで製品・サービスについて深く理解することを目指します。

3. サービス・事業を知る

企業の収益源である事業・ビジネスモデルを理解することはとても大事だと考えます。私はその中でも、今の主力製品・サービスと、今後打ち出していきたい製品は何かを把握することを意識しています。これによりサイト内での事業紹介ページで押し出していくべき製品・サービスが明確になり、デザインの見せ方にも反映させることができます。
また同じ業種の企業についてリサーチすることも重要です。競合企業との違いを探り、企業の独自性がどこにあるのかを知ることも大事だと考えます。
トップページをデザインする際も、こういった押しポイントを念頭にいれ、目立たせる必要があるコンテンツは何かを意識し、デザインに反映することをしています。

4. 企業理念・経営方針、企業の強みを知る

企業が大事にしている理念や強み・特長を洗い出していきます。これらのキーワードは、既存サイトの社長メッセージや会社概要、パンフレット等に記載されていることが多いです。
トップページのメインビジュアルから企業のブランドメッセージを発信する場合、これらを知り理解することで、ビジュアルアイデアを導き出しやすくなります。

5. 企業のテーマカラー、ロゴの由来を知る

色味はコーポレートサイトの印象を大きく左右するデザイン要素のひとつです。青であれば誠実な印象であったり、赤であれば情熱的な印象を見る人に与えます。リニューアル前の既存サイトでは、なぜこの色味がメインカラーで使われていたのか、そしてその色は会社の印象にあっているのかを探る必要があると考えます。
例えば親会社がメインカラーで赤を使っているからという理由だけで、既存サイトも赤にしているのであれば、本当にその色をメインカラーで使っていくべきか検討する必要があり、場合によっては新しいメインカラーで提案することも考えます。
またロゴにも企業の人格やコンセプトが大きく反映されるものなので、企業ロゴに隠された意味を知ることで、デザイントーンに活かす事もあります。

6. 採用情報を知る

既存の採用情報ページからは、企業がどういった人材を求めているかを把握することができ、企業の社風や方針・大事にしていることが記載されていることが多いので、目を通しておくことが多いです。そしてリニューアルの際に採用情報ページも合わせて刷新させることがよくあるので、すでに記載されている「求めている人材像」が、現状と離れていないかを把握しておくことをします。
またリクナビやマイナビなど、外部の採用サイトを使用している場合は、そこに記載されている情報に目を通すのも有用です。事業について明確かつ端的に記載されていたり、欲しい人材像の情報がよくまとめられていることが多いので、そこからサイト制作に必要な情報が引き出せることもあります。

7. 動画コンテンツ・企業パンフレットから情報を探る

企業がYoutubeで発信している会社紹介ムービーやブランドムービー、会社案内パンフレットがあれば、チェックするのもよいでしょう。
これらの媒体は各企業とも予算を投じて力を入れて制作されるため、中身の濃いコンテンツとなっており、特にブランドムービーなどは会社が目指す方向性が明確に記されていることが多いです。こういったものを参考にサイトの、メインビジュアルの方向性やコンセプトを探っていくのも手です。

8. インプット情報からコンセプトを導き出す

デザインは、インプット情報がないと見た目の表現方法から探ろうとしてしまい、(例えばアニメーションの動きをどうするかや、無意味な装飾でデザインをするなど)リニューアル本来の目的にたどり着くことができないと思っています。デザインは「描写」ではなく、あくまでも目的を「解決」するためのものです。

これまで上げた項目について調べてインプットができれば、かなり企業についての知識が深まったと思います。このインプットした情報を元にサイトで「何を伝えるべきか」の仮説を立て、企業の方向性、目指すべき姿のコンセプトを導き出していきます。

そしてそれが【STEP1】の目的とユーザーに対しての解決となっているかを、再度検証します。

  • クライアントの要望と、問題解決につながっているか。
  • ユーザーの使いやすいサイトになっているか、魅力的なメッセージになっているか。

この思考を何度も往復させて、よりわかりやすく、課題解決の為のコンセプトを練り上げていくことが重要だと考えます。

まとめ

以上が、私がコーポレートサイトリニューアルにおいてデザインする前のやるべき準備のインプット内容と、そこからコンセプトを導き出す方法です。
インプットは量が多いほど質に変わり、最終のデザインアウトプットに影響するので、こういったインプット内容を自身で調べ上げ、担当者からヒアリングをし、ともに作り上げていくことで、質の良いサイトが生まれます。

記事を書いた人

河原崎 平 デザイナー
河原崎 平
デザイナー
河原崎 平
デザイナー
表現する対象がもつ背景にこだわった、ストーリー性を持たせたデザイン表現を得意とする。デザインだけでなく、ドローン撮影や、動画編集、アニメーション制作も得意とする。休日も撮影に出かけることが趣味。
expand_less