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リニューアル成功のポイント

コンペの功罪

「制作会社を選ぶ=コンペを実施する」と思っている方も多いかもしれません。しかし、コンペが最良の策ではありません。実際に、コンペに課題を感じて、別の方法で制作会社を選ぶ会社もあります。ここでは、コンペの功罪と題して、コンペについて考えてみたいと思います。

コンペは、難易度が高い

コンペとは、RFPを制作会社に展開し、数社から具体的な提案(プレゼン)を受け、その中から制作会社を決める選考形式です。

具体的な提案をもとに制作会社を選ぶことができるので、いいやり方だと感じるかもしれません。
しかし、このコンペ形式には課題があります。

その課題を生む理由は、「短時間」「少情報」「プロセス無視」という要素で説明ができます。これらは、発注者側にとっては、効率的だと感じることかもしれません。

  • 短時間で、提案が出揃い、制作会社を選べる
  • 情報提供の労力なく、提案が出揃う
  • プロセスをショートカットできる

しかし、これらはコンペ形式においては課題です。そして、その課題がコンペで制作会社を選ぶ難易度を高めることになっています。

時間が短い

RFPが展開されてから提案(プレゼン)までの期間は、一般的に2~3週間に設定されていることが多いです。
そこで提案される内容は、

  • サイトコンセプトは、どうあるべきか?
  • サイトの構造を、どうするか?
  • どのようなコンテンツが、必要か?
  • デザインは、どうあるべきか?

など、サイトの根幹を成す重要な設計項目ばかりです。
企画提案づくりは、デザイナーやプランナーのアサインから始まります。メンバーをアサインし、重要項目の企画・設計をまとめるには、2~3週間という時間は、短すぎます。
「そうは言っても、実際に制作会社から提案がでてくる」
と思われるかもしれません。それは、少々粗いところを残しながらも、急いで何とか形にしているというのが正直なところです。

リニューアルの始め方のスケジュールを決めるで、3~4週間が妥当だと紹介しています。最低限、この期間は確保をしてください。企画・設計をするには、十分な時間だとは言えませんが、提案書をまとめるという意味では、制作会社もこの期間内でまとめられるよう努力すべきです。
提案を見る時は、「時間のない中、急いで作成されたもの」という見方をするのがいいと思います。これが全てではないと。そういう見方をするだけでも、制作会社選考の精度は高まるのではないかと思います。

情報が少ない

情報量が少ないことも大きな課題です。制作会社は、発注者の情報が少ない中で、企画・設計をせざるを得ないのです。
「RFPをまとめて、提供してるじゃない?」
と思われる方もいるかもしれません。もちろん、RFPは企画提案のうえで、重要な資料です。しかし、コンペを開催するということは、初めて会う会社も多いのではないかと思います。初めまして、から始まる中で、発注者のことを深く知ることは現実的には難しいことです。

  • その会社は、どんな考え方の会社なのか?歴史は?
  • どのような特長を有する会社なのか?
  • 製品・サービスには、どのような強みがあるのか?
  • 競合関係は?業界内での位置づけは?

などなど、企画・設計には、情報量が必要なのです。その情報を取捨選択し、Webサイトという媒体の特性に落とし込んでいくのが、サイト設計だと言えます。
スキルや経験を有する優秀な制作会社ほど、情報量を求めます。それが、サイトで成果を出していくために欠かせない要素だと知っているからです。

当然、制作会社側も、Webサイトや各種情報媒体から情報を得る努力をすべきです。その努力をしない会社は選ばない方がいいと思います。しかし、公開されている情報だけでは、その会社のことを知ることは難しいです。

RFP説明の場を設けるで、制作会社とのコミュニケーションについて、紹介しました。是非この取り組みをして欲しいと思います。情報量の少なさという課題を少しでも小さくするための努力をしてください。

プロセスのショートカット

最後は、プロセス無視についてです。実は、制作会社としては、これが最も課題だと感じるところであります。
コンペにおいて、重要な判断要素になっているものにデザインがあります。

  • サイトの目的やターゲットの理解
  • 企業や製品・サービスの理解
  • サイトコンセプトの構築
  • サイト構造設計
  • 情報設計
  • UI設計

といったプロセスを経て、それをビジュアルとして表現するのが、デザインです。また、このプロセスは、制作会社が一方的に考えることではありません。相互の考えや情報を出し合い、議論の中でクオリティを高めていくものです。デザインは、企画・設計という工程の中でも後半にやるべきことなのです。
「とりあえず、デザインだけ先に見たい」
と言われるケースもあるのですが、とりあえず、でできることではないのです。

このプロセスは、制作会社にとって都合のいいプロセスではなく、よいサイトを構築するためのプロセスです。コンペで提出されるデザインは、「本来あるべきプロセスをショートカットして、短時間に、少ない情報の中でつくられたもの」として、見るべきです。
しかし、デザインというものは、ビジュアル化されているので、分かりやすいものです。選考の中で、デザインに引っ張られることが多いのも事実です。デザイン提案は、評価をする際にも注意が必要なのです。

「では、コンペで提出されるデザインに全く意味がないのか?」
そんなことはありません。意味を与える、つまり評価の軸を持つべきなのです。
その軸は、思考のプロセスです。提出物として、ビジュアル化されたデザインだけを見るのではなく、「なぜ、このデザインに至ったのか?」「なぜ、このデザインを提案するのか?」の理由を聞いて欲しいのです。その理由にこそ、意味があるのです。
思考のプロセスがしっかりしている制作会社は、様々なデザインに対応できます。プロジェクトの中で、議論をしながら、よりよいデザインに磨きあげていくことができるのです。

まとめ

コンペ形式は、制作会社や提案内容の比較検討はしやすいかもしれません。しかし、「自社にとって必要な会社を見抜く」「力のある会社を選ぶ」という意味では、難易度が高い選考方式です。その難易度やそれを生む課題を理解したうえで、必要な準備をしてください。
リニューアルの始め方にプレゼン準備ですべきこととしてまとめた内容も参考にしてみてください。必要な準備さえすれば、コンペが持つ「具体的な提案内容から制作会社を選ぶ」というメリットを享受できます。

記事を書いた人

龍田 祥拡 マーケティング部 部長
龍田 祥拡
プロジェクトマネージャー
龍田 祥拡
プロジェクトマネージャー
Webサイト構築プロジェクトのマネジメント・プランニングを数多く務めている。また、前職の業績アップコンサルタントとしての経験を活かし、Webサイトに限らず様々なコンサルティングの仕事も手掛ける。
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