Thu.
3
Aug,2017
山中 裕美
投稿者:山中 裕美
(ディレクター)

2017年08月03日

「作る」仕事をとおして気づいた、プロセスの重要性

Webマスターがゆく

山中 裕美
投稿者:山中 裕美(ディレクター)

こんにちは。クリエイティブ部の山中です。

モノサスに入社して1年が過ぎましたが、異業種から Web 業界に転職し、サイト運用を1年やってみて、学んだこと、感じたことをご紹介したいと思います。
 

「売る」仕事から「作る」仕事へ

私は Web 業界に転職する前は、営業や販売等、何かを売る仕事をしていました。
色々なものを売る中で、ほとんどのものがネットで売れる時代に、営業マンが必要とされる商材は限られてくるのではないかという思いと、売るものを自分で作ってそれを売ることができれば組織に頼らずとも一人で生きてけるかもしれないという思いがありました。

しかし、いきなりの方向転換、作ることに対して何のスキルも持っていない私に何が作れるだろう?と考えていた時に、学生時代に Web サイトを作って楽しかったこと、夢中になってやっていたことを思い出したのです。
また、そんな時にタイミング良く Web デザイナーの人と出会い、Web 業界に転職したいと相談した所、「自分も未経験で入ったし、Web 業界は未経験の人も多いからやる気があればできるよ!」という軽い一言に背中を押され、転職を決意しました。

決めてからは早いもので、Web スクールに通いながら、ポータルサイトを運営する会社に転職、その後、アパレルのECサイトの運用を経て、念願の Web 制作会社であるモノサスに入社したのです。
 

「営業会社」と「制作会社」の環境の違い

営業時代は1人でも多くのお客様さんと商談することが良しとされ、会社にいる時は商談の機会を作る為の電話営業以外は許されず、少しでも活気がないと詰められるという環境だった為、 Web 業界に入って、皆が静かに黙々と作業する姿に、驚きと新鮮さ、最初は少し窮屈さを感じていました。

しかし次第に、一日中会社にいても誰にも詰められず、お菓子を食べても怒られない環境に、幸せを感じ始めました(笑)。

また、営業の場合、待っていても仕事が入ってくることは少なく、自ら仕事を取りに行かなければなりませんが、今は次から次へと依頼が来るという非常に有難い環境です。(もちろん、営業さんが仕事を取ってきてくれるからなのですが。いつも大変感謝しております。)

そんな些細な幸せを噛み締めながら仕事に励んでいましたが、徐々に様子が変わってきました。
 

納品はできてもクオリティが保てない…どうする?

最初は全てが新鮮でどんな仕事も楽しく、依頼が来ては納品するということを繰り返していました。しかし、担当する仕事量が増えていくにつれて、「納品はできてもクオリティが低い」という状態に陥ってしまったのです。

営業時代は、結果が全て、プロセスは重要視されてきませんでした。また、どんなことがあっても納期は死守!と教えられてきたので、クオリティより納期を最優先してしまい、ある案件でミスを繰り返してしまったのです。

私が担当している案件で、とある組合サイトの更新作業があります。
作業内容は、制度改正に伴うテキスト変更や画像差し替え等、一見、簡単な作業なのですが、1つのミスなく納品することが中々できず、それを繰り返した結果、お客様から「このクオリティでは、仕事をお願いすることはできない」と言われてしまったのです。

お客様からは PDFで修正指示書が送られてくるのですが、基本的に手書きで書かれているため、テキストもこちらで書き起こさなければなりません。
また、テキストの中の数字は半角、()は全角、「・」は全角等、細かくルールが決まっています。そして、そのテキストを挿入する位置、インデントは必要なのか、サイト内の他ページとの整合性はとれているか等も含めて、一切のミスなく修正する必要があります。
一見簡単に思えますが、実際やってみるとミスの多さ、チェック漏れの多さに愕然とし、落胆し、途方に暮れてしまったのです。

実は正直、最初は「人間のやることだからミスが起きるのは仕方がないのでは…」と、心のどこかで思っていました。(ゴメンなさい。)

でもそう思っている限り、思考が止まって改善策は生まれてこない。何よりお客様からお金を頂いてする仕事とは言えません。

そこで、「どうすればミスが起きないのか」を徹底的に考え、改善に改善を重ね、チーム一丸となって「100%自信を持って納品できる作業フロー」を生み出しました。
そのフローについて、具体的にご紹介したいと思います。
 

100%の自信を持って納品する作業フロー

A. 作業前にやること(サイトマップ作成)

お客様から指示書が来たら、対象ページを全て洗い出し、サイトマップ化し、今回の修正の全容を明らかにします。
また、差分を納品することになっているので、今回、対象ファイルが何ファイルあるのか、ここで明確にしておきます。


サイトマップには作業範囲、工数、修正内容、検証ブラウザなど、全ての情報を記入しておきます。

B.更新作業を実施

次に実際の更新作業に入ります。
テキスト変更箇所を修正して、終わったら都度確認して、指示書にチェック完了のチェックを入れます。

C.作業完了(鬼チェック開始)

ここからが鬼のチェック開始です。7段階にわけてチェックしていきます。
まずは、作業担当者が5段階のセルフチェックを行います。

1)修正箇所のチェック

まずは、指示書をもとに、最初のページから修正箇所を一つ一つチェックしていきます。


お客様からいただいた指示書を見ながら、丁寧に確認します。

2)テキスト差異のチェック

次に、テキスト比較ツール「difff( https://difff.jp/)」を使って、現サイトとテストアップした修正完了後のサイトを比較しながら、テキストの差異をチェックします。

difff で比較をすると、テキスト変更した箇所が、一目瞭然となるので、修正箇所を間違えていないか、誤字脱字がないかをチェックします。


違いのある文字は青くなるので、修正されているかどうか一目瞭然です

3)見た目のチェック

テキストチェックが終わったら、現サイトと、テストアップしたサイトをタブ切り替えをして比較しながら、レイアウトに崩れはないか、テキストの挿入位置に違和感はないかをチェックします。


タブ切り替えをすることで、レイアウトに崩れがないかどうか確認できます

4)ソースのチェック

続いて、作業前と作業後のソースを winmerge で比較します。
画像や、 PDF 、エクセルの差し替えはファイル名を変えない場合と変える必要がある場合があります。それがルール通り行われているか、また不要なタグは削除されているか等をチェックします。


画像ファイル名が変更されているか、不要なタグが残っていないか、一目瞭然です

5)チェックシートによるチェック

ここまで完了したら、チェックシートを使って確認項目をチェックしていきます。
細かいルールや何度かミスをしてしまった項目をまとめているので、改めて確認することで些細なミスを防ぐことが出来ます。どの案件も、このチェックシートの質によって制作物の質も変わる重要なものだと思っています。


割と当たり前のことが書いてありますが、一つ一つ丁寧に確認することで凡ミスを防ぎます。

6)第三者によるWチェック

5段階によるセルフチェックが終わったら、次は第三者によるWチェックを行います。
現在、このWチェックを私が担当していますが、上記のフローを一度やっていても、やはりミスを見つけることがあります。
作業担当者がチェックする目と、第三者が客観的にチェックする目というのはやはり違うものです。Wチェックをすると工数は余計にかかりますが、必要なフローだと思っています。

7)最終チェック

そして、最後にお客様に提出する差分に漏れがないか【 A.作業前にやること】で作成したサイトマップ を元に最終チェックを行います。

ここまでやって、ようやくお客様にテストアップのご連絡となります。
 

結果も大事、プロセスも大事。
「作る」仕事は、大変だけど面白い

改めて書いてみると、非常に工数がかかっており、ここまでする必要があるのだろうかと思われるかもしれません。
私も正直最初はそう思っていました。

しかし、最初にサイトマップを作っておくことで、今回の修正範囲が把握でき、納品ファイルが明確になりますし、チェックシートを使うことで、覚えていたつもりでもすっかり忘れてしまっていたルール、たまにしか登場しないルールなどを確実に守ることができます。
当たり前と言えば当たり前ですが、こういった小さな一つ一つの作業を丁寧に積み重ねていくことで、ミスがどんどん減っていったのです。

制作という業務においては、結果だけではなく、プロセスも同じように重要であることに、ここでやっと気づいたのでした。

「売る」仕事から「作る」仕事に変わって、「作る」仕事の大変さを実感する日々。
私にとっては、「売る」仕事より「作る」仕事の方が100倍大変だと感じています。(売る商材や、その人の適性にもよると思いますが)

今まで何気なく見ていた Web サイトですが、1ページ公開するだけでも、実に多くの工程を経て、多くの人が携り、多くのことを決めていかなければなりません。
その為の進捗管理もまた大変です。

面倒くさがり屋の私は、当初、どこか端折れないか、効率化できないか?ばかり考えていましたが、一つ一つのクオリティを上げていくことで、最終的な制作物のクオリティも上がるとわかってからは、「面倒くさい」と思ったことほど丁寧にやるようにしています。

結果、そうすることで、追加の修正依頼が無くなったり、認識の相違によるやり直しがなくなったり、工数の削減にも繋がったのです。

今までどれだけ雑な仕事ぶりだったのか、実感すると共に、制作物にはその人達の仕事ぶりが如実に表れてしまうものなのだなと、「作る」ことの恐さと面白さを感じています。

作り手として、どんな案件も丁寧にプロセスを重ねてクオリティを上げていくだけでなく、更により良いものを作れるように、これからも日々精進していきたいと思います。

この投稿を書いた人

山中 裕美

山中 裕美(やまなか ゆみ)ディレクター

クリエイティブ部でディレクターやってます。辛いものが大好き。かいた汗は裏切らないと信じ、仕事でも中本でも汗をかく日々。No life, No Nakamoto.

山中 裕美が書いた他の記事を見る