Thu.
31
May,2018
林 隆宏
投稿者:林 隆宏
(相談役)

2018年05月31日

Open Marketingのはじめかた Step.4
自分を開く -その2-

Open Marketing

林 隆宏
投稿者:林 隆宏(相談役)

みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。
前回はStep.4 「自分を開く」にあたって大切な
5つの価値観についてお話しました。

これまでこの連載を通してお伝えしてきたことを端的にまとめると、
そこにある市場にむかって、商品・サービスを提供するのではなく、
自分たちが心からよいと思うものを、その価値を真に理解してくれる人たちに向けて
ゆっくりと伝えてゆく
ということです。

そのためには、「自分を開く」ことが大切なのですが、
今日はその構造についてお話したいと思います。

そこにある市場にむかって、商売をするしんどさ。

「そこにある市場にむかって、商品・サービスを提供する」というのは、
すでに存在する需要に応えるべくビジネスをするということですから、
市場のニーズを分析し、それにあわせた商品・サービスを設計することになります。
つまりは、市場が欲しがるものをつくるわけです。

ビジネスをしてゆくうえでは、あるべき当然の姿のようですが、
市場の欲しがるものばかりつくっていると、
続けていくうちに、疲れてしまいます。

他人の欲しがるものに応えつづけるビジネスは、
なぜしんどくなってしまうのでしょうか。

サービスする側、される側。

市場に向けてビジネスをするということは、
自社と市場・顧客との関係性は、図式化すると下記のようになります。

              

市場のニーズを分析し、それに応えられる商品・サービスをつくり、提供する。
市場というすでにある塊に対して、外から解析し、そこにあわせていくわけです。

この「市場という他人」が欲しがるものを提供している状態は、
自社の外側に、商品・サービスを構築する動機が預けられてしまっているため、
サービスする側、される側という、対立した関係性になりやすい特徴があります。

しかし、この構造には大きな問題があります。
それは、市場は移り気だからです。

ひとくちに「市場」とか「マーケット」などと言ってみても、
市場というのは、実態のないバーチャルなものです。
ペルソナと言って擬人化してみる必要があるのは、
そもそも実物が存在していないからです。

実態のないものを懸命に分析し、そのニーズにあわせて
商品・サービスを提供するという状態は、
必死に他人に尽くしているにも関わらず、
実際にはその他人が存在していないという皮肉な状態でもあります。

ちょっとひねくれた表現になってしまいましたが、
市場というのは、多くの人々の「なんとなく」を集めた最大公約数的なものですから、
簡単に変化してしまいます。
このことを指して私は「市場は移り気である」と言っていますが、
実際に市場にあわせてビジネスをするのは、
始めるのは簡単ですが、続けてゆくのは実態のない意思に振り回されつづけるようで、
非常に疲れる行為なのではないでしょうか。

一人称で、商品・サービスをつくる。

自分たちが心からよいと思うものを商品・サービスとして提供する場合、
顧客との関係性は図のようになります。

      

「自分たちが心からよいと思うもの」とは、
言い換えるならば、「自分たちがほしいもの」ということです。
つまり、商品・サービスを構築する動機が自社内に内包されています。

商品・サービスを一番よいと思っているのが、自分たち自身であるわけです。

自分たちを中心に、それをよいと思う人たちが顧客となり
コミュニティが形成されてゆく。
したがって、自社、顧客、市場の関係性が同心円状になるのです。

ここには、サービスする側、される側といった対立構造はなく、
同じものが好きという、価値観を共有できる(同一でなくて構わない)者同士が集まった
安心できる集団が形成されていきます。

そのためには、自分たちが「これがよいと思う」という
一人称が重要なのです。

そして、それを実現するためには、自分たちが提供する商品・サービスに嘘があってはいけない。
ある意味、自分たちが、商品・サービスの品質に対して最も厳しい目を持つことが
重要であるとも言えます。

顧客が求めるものを提供できているかどうかではなく、
自分の価値観が他者に受け入れられるかどうか。

以前もお話しましたが、
自分がよいと思うものを世に問うのは、非常に勇気のいることです。

すでに世の中でよいとされているものを商売として扱うのは、
売上が立ちやすいという安心感だけではなく、
商品・サービスを構築する動機を、市場まかせ、顧客まかせにしているから
ある意味では楽なのです。

しかし、「これがよいと思う」というふうに、一人称で商売の動機を
商品・サービスに内包化することは、自身の価値観をつまびらかにしたうえで、
他者の判断に委ねるわけですから、
金銭的なリスクだけではない、価値観のリスクを伴うわけです。

お金は失っても取り替えがききますが、
自分の価値観は取り替えがききません。

ですから、顧客を信じる、自分を信じるというステップがあってこそ
自分を開くことができるのではないかと思うのです。

市場に向けて、商品・サービスを提供するのではなく、
自らの価値観を開き、それに賛同してくれる顧客とともに
自分が信じるものを商売にしてゆくことが、
これからの時代、大切なのではないでしょうか。

今月も最後までお読みいただきありがとうございます。

 

この投稿を書いた人

林 隆宏

林 隆宏(はやし たかひろ)相談役

長野在住で、東京、徳島、ときどきタイを行き来する生活。好きなことは木と歌と料理と宴会。木を使ったDIYが好きすぎて、ついには木材の販売事業を立ち上げてしまった。

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