2018年06月

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金曜日の投稿

林 隆宏
投稿者:林 隆宏
(代表取締役)

2018年06月29日

ともに生きていきたい人たちと、働く。

Open Marketing

林 隆宏
投稿者:林 隆宏(代表取締役)

みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。

これまで27回、2年3ヶ月にわたって Open Marketing を連載してきましたが、
28回目の今回をもって長らく続けてきた連載を終了したいと思います。

このサイトのなかでも1、2を争うページビューの少ないコーナーですが(苦笑)
ここまで続けてこられたのは、ごくまれに「このコーナーのファンです」
と言ってくださる方がいらっしゃったり、時には一緒にお仕事をする機会を
いただいたくことがあったりしたからです。
心から感謝しています。

最終回の今回は、なぜ Open Marketing を書こうと思ったのかということをお話して
連載の終わりにしたいと思います。

業績があがっても企業は幸せにならない。

連載のはじめにも触れましたが、私は長らく
コンサルタント、マーケッター、プランナーとして
様々な企業のマーケティング担当者、経営者の方々と一緒に仕事をしてきました。

プロジェクトのほとんどは、「どうすれば業績が上がり、利益が増えるのか」がテーマでした。

企業の抱える課題を、様々な角度から分析し、処方箋を出し、
クライアントだけでやれない場合は、できるまで寄り添いながらやってきました。

うまくいったプロジェクトも、うまくいったとは言えないプロジェクトもありますが、
いくつかのプロジェクトでは大きな成果を残すことができたと思っています。
一方で、プロジェクトの成果を追い求めながらやってきたにも関わらず、
必ずしも業績の改善=企業の幸せではありませんでした。

企業には業績不振への根強い恐怖感があるため、
そこから逃れるために、業績の改善を目指すのですが、
それはあくまで恐怖から逃れるための一時的な目標でしかなく、
本質的な企業の目的ではありません。
ですから、業績が芳しくないときはあんなにも業績向上を
渇望していたにも関わらず、いざ業績が改善したり、
改善への兆しが見えても、企業の幸福度とは直結しないのを
何度も目にしてきました。

とある企業の経営者の方とのやりとりを、いまでも覚えています。

今からもう7年以上も前の事ですが、
私は、とある経営者の方との打ち合わせの中で、
提案した施策をきちんと実施していけば、3年後にどれくらい
業績が上がるかを試算し、見せていました。

その企業にとっては非常に大きな業績向上が見込める内容でしたが、
経営者の方は一向に嬉しそうな顔をしません。
もちろん口では「いいねぇ」とか「それだけ業績が上がれば十分だ」というような事を
言っているのですが、私にはどうしても心から喜んでいるようには見えなかったのです。
むしろ、多少苦痛そうにも見えました。

その顔が頭に残って仕方がなかった私は、次の会議の時に、
違う角度から話してみました。

「これから実施していく施策で集まるのは、社長にとってどのような顧客ですか?」

「もし本当にこういうお客さんが集まってくれるなら、
 うちにとってはとてもいいお客さんだと思う」

「では、この施策を実行していくと、社長の会社にとっていいお客さんばかりが残って、
 しかもそのお客さんに対して一生懸命サービスすればしっかりとした利益が残りますが、
 それはどうですか?」

「そんなに嬉しいことはない!」

と言って、パッと顔が明るくなったのです。

その経営者の方にとっては、業績が向上してお金が残ることよりも、
自分がつきあいたいと思っているお客さんが増え、
その人たちに囲まれていることのほうが数倍嬉しかったのです。

ほんの小さなやりとりでしかありませんが、
私にとっては大切な出来事です。

それまで私にオーダーされていたのは、企業の業績をあげることでしたが、
業績を上げるだけでは、企業やそこで働く人たちは幸せにならないことを思い知らされたのです。
ひとつの企業が真に充実した状態になることができるのは、
その企業のことを大切にしてくれる顧客が集い、企業もまたその顧客のことを大切にできる
関係性をつくることができた時なのです。

そう気づいた時に、それまでやりとりをしてきた
マーケティング担当者の顔がいくつも脳裏に浮かんできました。

毎月のように企画を考え、無理やり理由をつけてはDMやメルマガを発行し、
数%にも満たない反響率に一喜一憂する。
顧客を祝うためではなく、自社の売上を上げるためにバースデーメールを送る。
そんなことの繰り返し。
大げさではなく、マーケティングの現場の多くは、これが現実ではないでしょうか。

お金を軸にした関係性ではなく、価値観を軸にした関係性を
企業と顧客の間につくることができれば、
意味があるとは思えないキャンペーンの企画を考え続けることからも、
なかなか顧客にリピートしてもらえない虚しさからも解放されるのではないか。
そして、目の前の顧客を大切にし、さらに自分たちがよいと思う商品・サービスを
探求することに集中できるのではないか。
そう考えたのです。

ビジネスによってお金を生み出すことのウェイトの大きい、小さいはあるでしょうが、
お金を生み出すことだけを目的としてやっている人は、多くはないはずです。
なぜなら、どのビジネスを始めるか、どの会社に所属するかという
入り口の時点で、数ある選択肢の中から、自ら選びとってその世界へはいってゆくからです。

つまりは興味、関心によってなにを生業とするかを決めている部分が
少なからずあるのです。

にも関わらず、ビジネスを維持するための数字を上げることに
リソースのほとんどを使ってしまっている企業や人がとても多いように感じるのです。

その負のスパイラルから抜け出すには、どうすればよいかということを
自社だけでなく、クライアントの企業さんたちと一緒に探求してきました。

その結果、私なりの結論としてたどりついたのが
Open Marketingという考えです。

新しい戦略や、奇抜なアイディアを出し、
まるで違う会社のように変化するのではなく、
自分たちの商品・サービスが本来持っている長所を生かす。

そのためには、自分たちの商品・サービスを
心から評価してくださっているお客様の声に耳を傾け、
自分たちの真の価値を改めて知り、純化すること。

そしてその価値を、脚色せずに、そっと置くように表現すること。

そうすることで集まってくれたお客様ひとりひとりに対して
きちんと向き合い、聞き、話すことで継続的な関係性をつくる。

その継続的な関係性によって、自分たちのビジネスが生かされていく。
というようなことをやってきました。

これらの一連の取り組みは、会社を変化させるというよりも
むしろ、本来の自分たちに戻るかのような作業でした。

企業は、新たな服を着込み、飾り立てることではなく、
顧客を信じ、自分たちの内面を開くことによって
長い関係性を構築できる顧客と出会うことができるのです。

自分が心からよいと思うものを、他人のために提供すること。
言葉にするとあまりにも簡単ですが、
多くの企業がやっていることは、
他人がよいと思うものを、他人のために提供することなのではないでしょうか。

だからマーケティング技術が発達すればするほど、
他人がよいと思うものに流れていってしまい、どんどん苦しくなってしまうのです。

今日始めて、来月成果が出るという類のやり方ではありませんが、
1年、2年と続けるうちに、確実に会社のあり方は変わってゆきます。

ともに生きていきたい人たちと、働く。

この言葉は、私たちモノサスが大切にしている言葉のひとつです。

経済合理性によって関係性をつくるのではなく、
価値観を共有し、相互承認しあえる人たちと、等身大の仕事をしてゆく。
そういうことを社内の約束事として、共有しています。

これは一緒に社内で働くメンバーだけでなく、
顧客との関係性であっても同じであると考えています。

「ともに生きる」というと少し大げさに聞こえますが、
「ともに時間を過ごす」とか「ともに価値をわかちあう」
ということを軸に据えて関係性を構築できる顧客とともに
働いていけたら、きっと仕事は楽しく、
充実したものになるのではないかと思うのです。

この連載を通して、いくつかの素敵な出会いもいただきました。
まさに「ともに生きていきたい人たちと、働く」ことができ、
心から感謝しています。

これまで永きにわたりおつきあいいただき、ありがとうございました。
またこのものさすサイトでお会いしましょう。

2018年6月29日

この投稿を書いた人

林 隆宏

林 隆宏(はやし たかひろ)代表取締役

モノサスの代表。基本的に出張や打ち合わせで出ていることが多く、家庭からも会社からも「いない人」扱いをされているが、寂しがりで有名。料理をこよなく愛し、特に肉を焼くことに対して異常にモチベーションが高い。

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