2018年08月

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水曜日の投稿

小野木 雄
投稿者:小野木 雄
(デザイナー)

2018年08月29日

「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」へ行ってきました

デザインの目のつけどころ

小野木 雄
投稿者:小野木 雄(デザイナー)

デザイナーの小野木です。モノサス屈指のアート好きの岩木に勧められ、六本木の21_21 DESIGN SIGHT で開催されている「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」に行ってきました。展覧会ディレクターは、インターフェースや映像の分野で高く評価されている tha ltd.の中村勇吾さん。

個人的に中村勇吾さんの作品がとても好きです。私はもともと Flash クリエイターで、新人時代に先輩デザイナーからFlash で作られた、同氏の「Monalisa Nervous Matrix」(1999) を見せてもらい衝撃を受けたのを覚えています(知らない人はググってください)。


会場ロビー

この展覧会はミュージシャンの小山田圭吾さん(Cornelius)が書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を気鋭の作家がそれぞれのフィルターを通して映像に「翻訳」した作品群。

そのコンセプトが展示スペースにも表れており、最初のギャラリーで稲垣哲朗さんによるスタジオライブ映像作品をじっくり体感し、次のギャラリー2で残り8組による翻訳映像を大型スクリーンで一気に視聴する構成。

スタジオライブ映像

入ってすぐ、ギャラリー1では『AUDIO ARCHITECTURE』 のスタジオライブ映像が映し出されています。作家は稲垣哲郎。すぐ後ろにはミュージックソフトウェア「 Pro Tools 」の画面をそのまま映像作品のようにレイアウトしたものと、歌詞を曲に付随するインタラクションとして映像にしているものがあります。スタジオライブ映像だけに魅入ってしまいがちですが、そちらの映像も見てみると、より楽しめます。


スタジオライブ映像:稲垣哲郎

8組の作家による怒涛の映像世界

ギャラリー2に入ると残り8組の作家さんによる映像作品がループ上映されています。大型スクリーンの前でみんなで腰掛け、視覚と聴覚の複合感覚世界に浸ります。没入感が尋常ではありません。スクリーン裏には8組の作家による個別のブースが用意されており、それぞれのコンセプトと作品をじっくりと観ることができます。

以下、作家と作品について。

大西景太:Cocktail Party in the AUDIO ARCHITECTURE

ドラムの音や声などのさまざまな音を個別にとらえ、モーショングラフィックス要素に解釈した作品。観た瞬間、楽曲と映像がリンクする感覚があるので、とても理解しやすい作品でした。後半には映像が奥行きのあるパターンとなり圧倒されます。入場する際にもらえるパンフレットにも書いてあるように「見えているもの」が「聴こえてくる」妙な感覚が楽しめます。

折笠良:エンドゲーム・スタディ

歌詞の文字が抽象的なアニメーションに変化していきます。楽曲の音の雰囲気や大きさにあわせて文字が呼応するような、そんな生命感を感じる作品。個人的に最も「エモい」と思った映像でした。虫のようなプランクトンのような...ひとつひとつは儚い存在だけど、間違いなくそこで「生きてる」感じ。ただぼーっと観るのではなく、単語と動きに注目していただきたい。

梅田宏明:線維状にある

今回、最も心奪われた作品。とにかく没入感が素晴らしい。筋繊維をモチーフにしたグラフィックが猛スピードで駆け抜けてくのですが、自分がそれを観ているのか、そこに居るのか、進んでいるのか、後退しているのか...楽曲のリズムにあわせて切り替わる映像に翻弄されます。超大型のスクリーンも手伝ってか、本当に良い体験をさせてもらった作品でした。

勅使河原一雅:オンガクミミズ

楽曲を「生命的に脈打つもの」として捉えた作品。私には少し難解でした。圧倒はされましたが、どちらかというと「どうやって作ったんだろう?」という疑問が先でした。絵として映像美は素晴らしく「脈打つ」という言葉通り、ドクドクと脳に深く食い込んでくる力のある映像は一見の価値があると思います。

UCNV:Another Analogy

正常な映像と壊れた映像を並置した作品(上記の写真だと奥が壊れた映像)。今回の楽曲である『AUDIO ARCHITECTURE 』の歌詞は「対義語」で構成されていて、それを映像で表現しているもの。冒頭で説明したとおり、この大型スクリーンの裏にはそれぞれの作家さんの作品を個別展示していますが、この作品はそちらの方が、モニターが小さくて2つの映像を同時に認識しやすいので、理解しやすいかもしれません。意図的に情報を削除した映像の面白さと楽曲がいいバランスで飛び込んできます。

水尻自子:airflow

アニメーションの動き、曲線のこだわり、色使いや作風含め新感覚でした。水尻自子さんの作品はずっと気になっていたのですが、きちんと観る機会がなく今回観れて本当によかったです。本来なら楽曲との複合感覚やアート性を感じるべきだったと思いますが、私も絵を描くのが好きなので「勉強させていただいた!」という印象です。シワの入り方、線のしなり方、全てが気持ちよいので、そういった細かい箇所もご覧いただくとよいかと思います。

ユーフラテス(石川将也)+阿部舜:Layers Act

最初、前述の「線維状にある」がまた始まったのかな?と思ったんです。ところがところが「そうきたか!」と。意外性 No.1 の作品。あまり言うとネタバレになるのでこの辺で。

辻川幸一郎(GLASSLOFT)× バスキュール × 北千住デザイン:JIDO-RHYTHM

これはアプリの作品。曲に自分自身を投影したミュージックビデオを体験することができます。自身の顔にさまざまなエフェクトがかかり、とにかく楽しい。先日実家に帰省した際、電車の中で娘ふたりに見せたところ、30分ほど取り合いしていました(笑)。アートに振り切りすぎると子どもって理解できませんが、大人も子どもも楽しめるものってとてもいい。また、小さい頃からこういった作品に出会うことのできる、今の時代の子ども達が羨ましくも思いました。

テクノロジーが発達しても、
人間の感性の豊かさって大事。

以上、簡単にご紹介させていただきましたが、あえて写真は少なめにしました。書きながら思ったのですが、映像作品の写真を何枚も使って伝えようとするのはナンセンスだなと(笑)。

総括して思ったことが、人間の感覚の柔軟性。ひとつの曲から生まれた解釈であるのに、さまざまな多様性があり、どれもが新感覚。また、つくり手の感覚だけでなく、会場での受け手側の感覚もやっぱり柔軟。良し悪しという単純な判断だけでなく、感情や解釈も人によっておそらくさまざま。テクノロジーが発達して、人間のできること、やるべきことが少なくなってくるなんて言われる昨今ですが、とんでもない。やっぱり人間という感性のフィルターは偉大!なんて改めて思った次第です。

この記事を読んで少しでも行ってみたいと思う方がいれば嬉しいです。余裕で1時間以上は楽しめる空間になっていますので、ぜひ行ってみてください!

21_21 DESIGN SIGHT- 企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」

会期:2018 年6 月29 日(金) - 10 月14 日(日)
休館日:火曜日
開館時間:10:00 - 19:00(入場は18:30まで)
入館料:一般 1,100 円、大学生 800 円、高校生 500 円、中学生以下無料
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
http://www.2121designsight.jp/
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6
東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン

この投稿を書いた人

小野木 雄

小野木 雄(おのぎ ゆう)デザイナー

デザイン部の部長を退き、ひとりのデザイナーとして修行中。現在は主にデザイナー目線でプランニングに入ったり、UI / UXに深く関わってみたり。何のプロフェッショナルになるか模索しているけれど、イラスト仕事だけはずっと携われているのが心の救い。

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