2020年08月

24

月曜日の投稿

勝股 淳
投稿者:勝股 淳
(ディレクター)

2020年08月24日

「ものつくるひとのものさし」という連載をしてみたい。

ものつくるひとのものさし

勝股 淳
投稿者:勝股 淳(ディレクター)

『緑の中の木造の平屋で、
小道のような玄関ストロークがあって、
大きな窓ある部屋。
窓際にはソファを置きたい。
あと、大きなダイニングテーブルがあるといい。天板は丸もいいし、長方形もいい。
光がよく入って、気持ちの良い風が抜けて、
猫たちも心地よさそう。
大きな家じゃなくていいけれど、ゆとりを感じる空間で…
あ、大きな本棚も欲しいです。
本が見える風景が好きなので。
カーテンに光があたったり影ができたり、自然を感じられることも大事。
あと海も近いほうがいいなぁ。』

「理想の暮らしってある?」と、聞かれて僕が答えた内容です。

自分は暮らしの様子の話になると饒舌になる。
そう気づいたのは最近のことなのですが、改めて振り返ってみると、”住まい”や、”暮らしの質”みたいなことに興味を持ち出したきっかけは、名古屋に住んでいた頃の家だと思い当たりました。

その頃、シティエリアでの生活に辟易としていたぼくは不動産屋で引っ越し先の条件を聞かれて「森の中の家みたいなやつないですか」という童話めいたことを言っていました。
担当者の男性は怪訝な顔をしていたけれど、結果として探し当てた物件は、間宮 晨一千(まみやしんいち)という建築家が設計をした家でした。

「借りた物件を設計した人の名前ってわかるもんなの?」と思っている人多数だと思いますが、住んだ後に「ここを作った人って誰なんだろう?」と疑問に思って調べたんです。

その家は、15畳の縦長のワンルームでホワイトキューブみたいな白い空間で、大きな窓が特徴的でした。
友人を招いたら「俺はここにいたら鬱になるかもしれない」と言わしめたその空間は、そう言われてみれば無機質だったのかもしれないけれど、住んでいる当人としては空間自体から謎のきめ細かい配慮というか、温かみを感じていました。
自分が住んでいる部屋からそんな配慮を感じたのは初めてのことで、上述の「ここを作った人は誰なんだろう?」を思うに至ったわけです。


その後、色々調べて、間宮 晨一千さんという人が設計したことがわかりました。
ホームページで、彼の手掛けた建物の写真や、彼が書いた文章を読んで、「なるほど」と、どこか納得したのを覚えています。

調べるうちに、彼に話を聞いてみたいと思うようになりました。
いきなり「話を聞かせて下さい」というのも不躾なので、名古屋でウェブメディアを運営している友人に「この人にインタビューをして、記事を書きたい」とお願いをして、ライターの肩書が入った名刺をもらいました。(即席でライターを名乗って全ライターの皆様すみません)

そして、実際にインタビューをして、「いったいぜんたいどういうことを考えて家を作るとああいった空間になるのですか?」ということを聞けたわけです。(もちろん記事にもしました。)

そこで聞いた話を書きだすとそれだけで1つの記事になってしまうから今回は割愛しますが、ぼくはそれ以降、空間というものに明確に興味を持つようになりました。

1日の中のけっこうな時間を過ごす家。
「居住空間の質は生活を規定する」と言ってまうと強すぎるかもしれないけれど、空間によって生活の質感はずいぶん変わるのだと思います。
そして、空間が気になりだしたら、椅子が気になり、照明が気になり、コーヒーカップが気になり、香りが気になり、寝具が気になった。料理が気になり、様々な素材が気になり、部屋を通り抜ける風や光が気になるようになりました。

そうそう、もう少し時間を戻しますと、僕が学生時代にハマっていたもののひとつが洋服でして…
高校時代は部活の休みがあれば、貯めたお小遣いを握りしめて原宿や渋谷まで出かけていました。(ちなみに千葉に住んでいました。)

熟読していたファッション誌に掲載されているお店に印をつけた地図を片手に、片っ端からショップをまわっていました。

1巡目は買わないのです。とにかく気になるものをメモしておきます。
食事がてらラーメン屋に入って(ラーメンは比較的安いし美味しいので決まってらーめん屋で食事をしていた)、メモを片手に脳内会議をして、お小遣いの予算内で、どれとどれを組み合わせて買えるのか検討して、2巡目で選んだものだけピックアップして帰るのです。

サッカーで忙しくしていた高校生当時の僕にとって、原宿に買い物に行くというのはたまらなく楽しいイベントであったし、真剣でした。ほいほい行けるわけでも買えるわけでもない中で、毎回必死に服を選んでいました。
毎日部活(ジャージ)か、学校(制服)なのにいつどこに着てでかけていたんだっけ。そんなことは都合よく覚えていません。


高校時代の写真なかったので大学時代に高校サッカー部メンバーと撮ったもの


大学時代になると服屋でアルバイトをするだけでは飽き足らず、スタイリストのアシスタントをしました。広告やプロモーションビデオの撮影現場で仕事をしたことは今でも超怖い記憶として残っていいます。(超体育会系)

次第に、お世話になっているデザイナーさんに「今回のコレクションはどんな意図で制作したのか」という話を聞くようになって、服そのものだけでなく背後にあるアイディアソースやインスピレーションソースに興味が及んでいきました。

特にsoeというブランドとの出会いは印象的で、シンプルだけど遊び心を感じるセンスに惹かれました。それは今でも変わらない自分の美観かもしれないです。複雑なものやごちゃついたものよりシンプルであるほうが落ち着きます。


現在借りている部屋。DIY可なので、少しずつ自分で改装しています。

沢山の余談もあったのですが、僕はモノや空間、その背景に興味を伸ばしながら、それらを聞いたり学んだりすることで、自分の人生の肥やしにしてきた感じがあるんです。
ただ、”肥やしにする”と言っても、僕自身は、モノを作ったりするというのはけっこう苦手で…
学生時代も図工とか美術とかあんまり得意じゃなかったです。
だから?余計に?モノを作る人というのを尊敬してしまいます。(あるいは、羨望と諦観なのかもしれません。)

僕一人ではなかなか見ることがないだろう景色を彼らは見ている気がして、それがどうにも気になります。
僕自身が手を動かして何かを作ることがなくても、他者が感受している世界経験の片鱗でもいいから知ってみたい。

そこには、きっと僕があまり味わってこなかった人生の楽しみがありそうです。

というわけで。ぼくはものさすサイトという場を借りて、モノを作っている人に話を聞いてまわりたいと思っています。
話を聞いて、彼らが見ている世界、感知しているものをもっと知ってみたい。
そんな連載「ものつくるひとのものさし」をしていきたいです。します!という宣言みたいなお知らせでした。

この投稿を書いた人

勝股 淳

勝股 淳(かつまた じゅん)ディレクター

ディレクター。1987年生まれ、湘南住まいのA型。猫二匹と暮らし中です。趣味は自動販売機で飲み物を買うこと。「こういう遊びを考えたんだけど、やらない?」と、言い出すことが多い。

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