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Jun,2022
杉本 恭子
投稿者:杉本 恭子
(ライター)

2022年06月17日

「何をしている会社?」をどう表現できるのか。会社を理解して提案し、ともに考え続けた。ウルシステムズ株式会社Webサイトリニューアル

BtoB研

杉本 恭子
投稿者:杉本 恭子(ライター)

2022年3月末、ITコンサルティングファーム・ウルシステムズ株式会社のWebサイトリニューアルを担った、モノサスのBtoBチーム。約半年をかけて、「ウルシステムズは他社と何がちがうのか」「ウルシステムズの良さを表現するには?」を追求し、Webサイトのかたちに落とし込んでいきました。

今回のプロジェクトについて、ウルシステムズとモノサスのプロジェクト・メンバーが座談会形式で振り返ります(以下、敬称略)。

座談会参加者

植松 隆さん(ウルシステムズ株式会社 常務取締役)
オペレーション戦略立案や業務改革、IT戦略の策定・実行の実績多数。ITコンサルティングのプロフェッショナル。本プロジェクトでは事例紹介の原稿執筆などを担当。

緒方 啓吾さん(ウルシステムズ株式会社 ディレクター)
ウルシステムズの広報および人事の責任者。エンタープライズITを専門に扱う雑誌・Webメディアで編集記者として活動していた経験の持ち主。本プロジェクトの主担当者。

藤川 竜也さん(ウルシステムズ株式会社 シニアセールスエグゼクティブ)
セールスを代表して本プロジェクトに参画。本プロジェクトでは製作会社の選定、原稿執筆を担当。

西澤 晶さん(ウルシステムズ株式会社 プロジェクト・マネージャー)
泣く子も黙る(?)ウルシステムズのプロジェクト・マネージャー。本プロジェクトではタスク管理および原稿執筆を担当。

龍田 祥拡(株式会社モノサス プロジェクト・マネージャー)
Webサイト構築プロジェクトのマネジメント・プランニングを数多く手がける。本プロジェクトでは主担当者として企画提案からプロジェクトの進行まで、すべてに関わった。

坂本 靖夫(株式会社モノサス 営業)
BtoB企業のコーポレートサイト運用実態に関する取材、クライアントの要望を実現するためのチームづくりなどを行う。

畑峯 豪(株式会社モノサス ディレクター)
本プロジェクトのテクニカルディレクター。CMS設計からコーディングまで、フロントエンド全般を担当。座談会にはオンラインで参加。

河原崎 平(株式会社モノサス デザイナー)
本プロジェクトのクリエイティブディレクター。サイト全体のクリエイティブ設計から個別ページのデザインまでを担当。座談会にはオンラインで参加。

撮影:秋山まどか


座談会はモノサス代々木オフィスとオンラインをつなぎハイブリッドで行いました。

最初の接点は、BtoBチームの「取材」から

ーーウルシステムズさんとモノサスは、どんなふうに出会ったんですか?

坂本 我々は、BtoB企業の「他社はどのようにサイトを活用しているのか?」という疑問に応えるために、トータル600社以上のBtoB企業に取材して、「コーポレートサイト運用実態レポート」にまとめてお渡ししたり、サイトリニューアル時の知見として役立てています。ウルシステムズさんとの最初の接点もこの取材でした。

緒方 そのとき、モノサスさんの過去事例には2000〜2万ページを制作する大規模案件もあり、「数千万円規模のプロジェクトも担当している」と話されていたことが記憶に残っていました。


ウルシステムズ緒方さん(左)、藤川さん(右)

ーーそれを思い出して、モノサスにご依頼くださったのでしょうか。

藤川 実は、大手の制作会社から順にお声がけして、数社と打ち合わせをしたのですが「なんか違うよね」とみんなで言っていて。なかなか決まらなくて選定期間を延長して、「たしか、モノサスって会社があったよね」とお声がけをしたんです。

龍田 そうだったんですか!なんか、ちょっとジェラシーを感じます(笑)


数あるWeb制作会社のなかからモノサスを選んだ理由

ーー数社の制作会社と比較検討されるなかで、どうしてモノサスを選んでくださったんですか?

緒方 私が広報として入社したとき、まずリニューアルしなければいけなかったのはコーポレートサイトでした。比較的低予算でお願いできるところを探した結果、フリーランスでWeb制作をする方にお願いしたんです。デザインは悪くなかったのですが、私がエクセルでつくったラフをそのままつくられるんですね。「プロとしての意見が欲しい」と言っても、ラフをそのままデザインに起こされてしまうことに不満が残りました。

次に、採用サイトをリニューアルしたときは、別の制作会社に依頼しました。このときも「私がこれから出すのはラフ案なので、専門家としての知見を出してほしいです」と言ったのですが、やっぱりラフのままの仕様書が出てきました。いずれも、制作物はしっかりしていたのですが、私たちが求めていた「一緒に考える」みたいなことはできなかったんです。

だから、今回は有名な制作会社にいくつか相談を持ちかけてみました。すると、すごく重厚長大なんです。まずはコンサルティングフェーズを3ヶ月やって、みたいな話になる。

西澤 「まず、コンサルティングフェーズで事業戦略を考えましょう」と言われるのですが、「それをもとにいい感じのサイトをつくります」という以上のイメージが湧かないんです。そのコンサルティングフェーズに、いただいた見積額の価値はあるのだろうかと疑問を感じました。

緒方 もちろんWebサイトの規模や位置付けによってはそうしたアプローチが必要なんだろうとは理解しています。ただ、ウチの会社の規模でもそれが必要なのかなと。例えば、ページ数が何倍にも膨らむことはないと思うんですよね。それでも事業戦略からはじめる必要があるのか?ただ、デザインはすごくかっこいいけれどロジックがまったくなさそうな制作会社に頼んでも二の轍を踏むだけなんだろうなとも思ったんですよね。

西澤 私なんかはもう「どこに聞いても変わらないよ」と思いはじめていました。私はプロマネとして期限を守ってもらう立場ですから「いつまで選んでいるの?」とプレッシャーをかけていたら、緒方と藤川が「あと1ヶ月くらい時間が欲しい」と言って、そこで出てきたのがモノサスさんでした。

藤川 「決めるにあたって制作に関わる人と話したい」と言ったら、龍田さんが出てきてくれて。龍田さんがやってくれるならと思えたことも決め手になりました。何社かに同じお願いをして、「提案段階では制作者は出せない」と言う会社もあったんです。


「最初にデザイン案を提出しない」というチャレンジ

ーー制作会社を選定するときにコンペというやり方もありますよね。一社ずつ会っていくよりもコンペの方が効率的ではないでしょうか?

藤川 コンペをするほど要件がまとまっていなかったんです。逆に言うと、モノサスさんはそういう状態でも、ちゃんと汲み取ってペーパーに起こして提案していただけました。


モノサス龍田

龍田 ウルシステムズさんには、「御社のことを知り、あるべきサイトの全体像を描く『設計フェーズ』とそれを具体的につくりこんでいく『制作フェーズ』に分けて進めていきましょう」とご提案をしました。コンペなどでは、「提案の段階でデザインが欲しい」と言われます。でも、提案段階では現在のコーポレートサイトや会社案内、検索して見つけた記事など二次情報しかありません。そのレベルの情報量に基づいた、”にわかデザイン”をつくりたくないし、それは発注側にとってもいいことではないと思うんです。クライアントを深く知り、あるべきサイトの全体像を描いて共有してからデザインするほうが絶対にいい。今回は、その思いを提案書にまとめて御社にぶつけてみたのですが、それは我々にとっても大きなチャレンジでした。


ご提案した際の資料の一部

この提案のやり方で御社に選んでいただけたことは、僕らにとって大きな自信になりました。今は「うちは提案段階ではデザインをつくりません。御社のことをよく知ってからつくります」と、自分たちがよいWebサイトをつくるために必要だと信じているプロセスを、胸を張って伝えています。

植松 こちらとしては、むしろそういう提案を求めていました。僕らもコンサル会社ですから、アプローチやステップ、アウトプットというプロセスがすごく気になるんです。

西澤 「ウルシステムズとはどういう会社なのか?」という抽象的な議論が、どうやって具体的なデザインに落とし込まれるのか、ステップに納得感がありました。

ーー具体的には、リニューアルのプロセスはどんなふうに進められたのでしょう。

龍田 まずは、設計フェーズでウルシステムズさんを知るのに約1ヶ月の時間をいただきました。そのなかで、ウルシステムズさんがどんな会社なのかがわかってきて、「こういうデザインで、こんなコンテンツがあるといいのではないか」という種になりました。特に緒方さんが用意してくださった、我々に説明するための資料はとてもわかりやすく、最初のインプットの質と量がすごくよかったです。


コロナ禍にオンラインだけで進行したプロジェクト

ーー今回のプロジェクトはコロナ禍で進行したため、打ち合わせはすべてオンラインで行ったそうですね。

龍田 初めてお会いしたのは4〜5ヶ月経ってから、撮影のときでしたね。


モノサス河原崎(画面左)と畑峯(画面右)はオンラインで参加

河原崎 オンラインの打ち合わせだけでデザインするのは、おそらく初めてだったのですが、意外と良い方向に働きました。毎回、デザインデータを画面共有しながら違和感のあるところを教えていただいて、その場で修正したものを確認していただけたのはすごく良かったです。

西澤 すごくスピード感がありましたね。4〜5回分の打ち合わせを省略できたと思います。

河原崎 今までは、デザインをお出しするたび「では、来週までに確認します」と次に持ち越されることが多かったんです。今回は、緒方さんにその場ですぐにご回答をいただけたことも相乗効果になり、スムーズに進行できたと感じています。

植松 河原崎さんは、緒方の指摘に対して「それはどうかな?」と思うこともあったのでは?

河原崎 デザインを提出するときは「これがベストだ」というものをお見せしますが、緒方さんの指摘を受けて修正してみると「たしかに、そういう考え方もあるな」と感じた部分もありましたし、言っていただけてとても助かりました。

西澤 緒方の指摘に対して、河原崎さんが「うーん、なるほど」とおっしゃるのを、ハラハラしながら見ていました。でもすぐに「じゃあ、こんな感じでしょうか?」とその場で打ち返してくださって、緒方が「やっぱり元のほうがいいですね」と納得することもありましたね。

河原崎 一度、別なパターンを見ていただいてから「やっぱり、これでよかったね」となるのは良いことだなと思っていました。最近の仕事では、今回の経験を生かしてその場で修正案を見ていただきつつ打ち合わせをしています。

緒方 畑峯さんは、実装確認のときに焦るような局面でも「全然だいじょうぶですよ。しっかりやりましょう」と、クオリティを守るために手順を踏んでやってくれたんですよね。こちらが「困りました」と言うとすごくつきあってくれる。この人、すごくいい人なんだなと途中からわかりました。

畑峰 対応が遅くなってしまった部分もあったのですが、リリースできて本当によかったと思っています。


制作会社はプロジェクト・マネジメントができない?

ーー西澤さんは、プロジェクト・マネジメントのプロだと伺っています。プロマネの立場から、今回のプロジェクトへの評価はいかがですか。


ウルシステムズ西澤さん

西澤 すごく楽でしたね。僕は、基本は性悪説に立って「人は期限を守らない」と思いながらプロジェクトに入るんですね。今回も、最初こそ細かく指示を出していましたが、言わなくても大丈夫だとわかってから、あまり言わなくなりました。根はいい人間なので、そういうことやりたくないんです……。

一同 笑。

緒方 打ち合わせ2回目くらいから、西澤が「モノサスさんは自社に不利な発言も議事録に残し、自分たちでボールを持とうとしている。ちゃんとしていますね」と褒めていました。


ウルシステムズ植松さん

植松 他のプロジェクトで制作会社さんとご一緒すると、締め切りを守ってくれなくてすごく困ることがあるんです。でも、モノサスさんはまったく違っていて「プロマネできる制作会社もあるんだ!」と、天地がひっくり返るくらいのうれしいサプライズでした。一緒に仕事をするにしても、モノサスさんとならやりやすいだろうなと思うので、今後も仲良くしていこうと思います。

ーーいいことしか言われないので、ちょっと不安になってきました(笑)。

坂本 オンラインの打ち合わせで「画面越しに見ると龍田の人相が悪い」って(笑)。

植松 画面越しに見ると、龍田さんはすっごく悪い人に見えたんですよ(笑)。


モノサス坂本(右)

できあがりのイメージがあるから、自信をもって提案できる

ーープロジェクトを進めていくなかで、難しかったことはありましたか?

緒方 我々には「業界最大手のITコンサル会社にも負けない、良い仕事をしている」という自負があるのですが、同業他社との違いが伝わるWebサイトになっていないことが課題でした。また、ウルシステムズは、中途採用に力を入れているのですが、「Webサイトを見ても何をしている会社かよくわからない」「会社のことを家族に説明しづらい」という声がありました。採用面でも、Webサイトリニューアルは喫緊の課題になっていたんです。

藤川 モノサスさんは、自分たちが伝えきれなかった他社との違いを、「外から見ると、こういうところがウルシステムズらしさなんですよ」と再解釈して出してくれました。それは、自分たちの思いとずれているところもあったものの、そこから「じゃあこうしていこう」とまた話し合って、「自分たちはこういう会社で、他とは違うんだ」というものを絞り込み、新しいWebサイトに詰めこむことができたと思っています。


リニューアルしたウルシステムズのWebサイト。トップページは入れ替わり、3種類のメッセージが表示される。

龍田 ウルシステムズとは」というページがあるのですが、2回目の案を出したときに「おっ!」という反応をいただいたのを覚えています。このページをつくる提案するときは、僕らも一緒にもがき苦しむ覚悟が必要でした。

西澤 僕らが「おっ!」と反応するに至るまでの仕事の取り組み方に、我々と近しい部分を感じていました。お互いに仕事の領域は違うけれども、仕事に対する向き合い方が似ていたことも、良い議論を進められた背景にあるのかなと思います。

龍田 僕は今、ウルシステムズさんの営業をできそうです(笑)。

坂本 龍田は途中で「あれ?ウルシステムズさんの社員ですか?」って思うような発言もしていましたね(笑)。


「ウルシステムズとは」のページ。ウルシステムズらしさを図と文章で表現していった。

会社の“顔”が見えるWebサイトが生み出すコミュニケーション

ーーモノサス側は、どんなところに難しさを感じていましたか。

龍田 プロジェクト事例」の原稿を書いていただくところでは、みなさんを苦しめてしまったなと思っています。でも、「これは出来上がれば絶対にいいコンテンツになる」というイメージがあったので、自信をもってお願いしました。

植松 その打ち合わせのときは、思わず黙ってしまいました(笑)。でも、「あったほうがいいですよね?」と龍田さんはガツンと言ってくれるので、「そのくらいオーナーシップをもってリニューアルに取り組んでくださいよ」ということだなと感じていました。

藤川 なかなか原稿がかけなくて、怒られるかなと思いながら「事例紹介のページだけ、リリースを後回しにするのはありですか?」と龍田さんに聞いたら、「それはやめましょう」と即答でしたね。


ウルシステムズのみなさんにご苦労をかけた「プロジェクト事例一覧」。リリース時に12本の記事がアップされた。

ーーリリース後に、社内外でどんな反響がありましたか?

緒方 「見ましたよ」「考え方が近いなと思いました」という声をいただきました。家族に見せて話したという話を聞いたり、そういうふうにサイトを見るんだなと思いました。

ーーウルシステムズさんも、ものさすサイトをご覧になって、龍田さんの記事を見つけてくださったそうですね。

緒方 途中から、ものさすサイトはけっこう見ていました。河原崎さんの記事も見つけましたね。このくらい顔を出せると会社に対する解像度が上がって、採用にも影響があるのかなと思いますね。

ーーお話を伺って、本当にしあわせなプロジェクトだったんだなと思いました。みなさん、今日はありがとうございました!

座談会を終えて

我々BtoBチームは、「打ち合わせが楽しくないと、いいサイトはできない」という考えを持っています。打ち合わせは、考え、議論をする場です。暗い顔では、憂鬱な思いでは、いいアイデアも出なければ、議論も発展しないからです。

ウルシステムズさんとの打ち合わせは、本当に楽しい時間でした。そういう空気をつくってくださったことに本当に感謝しています。モノサスのメンバー全員、週1回2時間の定例ミーティングが楽しみでした。

リニューアル公開は、プロジェクトのゴールではありますが、サイトから成果を生んでいくという意味ではスタート地点とも言えます。これからもウルシステムズさんとこのサイトを育てていきたいと思っています。(龍田)


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この投稿を書いた人

杉本 恭子

杉本 恭子(すぎもと きょうこ)ライター

フリーランスのライター。2016年秋より「雛形」にて、神山に移り住んだ女性たちにインタビューをする「かみやまの娘たち」を連載中。

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