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テクノロジー×アートの最新カルチャーイベント“DIG SHIBUYA 2025”を終えて。クリエイティブチーム座談会

2024年にはじまった“DIG SHIBUYA”は、渋谷区共催によるテクノロジー×アートの最新カルチャーイベント。公園通りのアートパレード、代々木公園のアートインスタレーション、深夜のスクランブル交差点のモニターを連動させるアート展示“Shibuya Crossing Night Art”など、渋谷の街をまるごと舞台に、国内外のアーティストやイノベーターが作品を展示・発表しています。

DIG SHIBUYAのWebサイトやパブリケーション全般の制作を担当しているのが、モノサスのメンバーを中心としたチーム。パワーアップしたDIG SHIBUYA 2025を終えて一息ついた頃、クリエイティブチームのみなさんに集まっていただき、DIG SHIBUYAへの想いを語っていただきました。

話した人

奥田一葉(おくだ・かずは)
外部パートナーのプロデューサー。DIG SHIBUYAではプランニング、ディレクションを担当。

いす たえこ
外部パートナーのグラフィックデザイナー。DIG SHIBUYAクリエイティブディレクションを担当。インタビュー当日はDIGカラーのワンピースを身にまとい話を聞かせてくれた。
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林洋介(はやし・ようすけ)
Webサイトやアプリケーションの開発、VI・CI制作、展示・イベントの制作サポートなど、多岐にわたるクリエイティブサービスを提供するドメイン横断型デザインのチームに所属。クリエイティブ制作を担当しつつ、アーティストとしても参加。

町山百合香(まちやま・ゆりか)
クリエイティブサービス所属のディレクター。制作ディレクション担当。

真冬の渋谷でアート&テックを楽しむDIG SHIBUYA

外部パートナーのプロデューサー・奥田一葉さん

ーー今年で2回目の開催となったDIG SHIBUYA(以下、DIG)について、改めてイベントの背景を聞かせてください。

奥田 渋谷区の方たちが、カルチャーの発信地という街の特徴を活かしながら、どうやって都市としての新しい価値をつくっていくのか?と考えていたのがはじまりです。渋谷には、ライブハウスやクラブ、映画館、美術館や劇場、公共の文化施設がたくさんある。そういった場所を国内外のアーティストに開放して作品をつくってもらったり、イベントをきっかけにスタートアップ企業などの新しい産業の誘致につなげるといった目的があります。

いす コロナ禍でライブハウスやクラブのような、渋谷らしいスペースの元気がなくなってしまったので、みんながそこに戻ってくる取り組みをしようというのもひとつあったような気がします。

ーーDIG SHIBUYAにはどんな人が関わっているのですか?

奥田 SHIBUYA CREATIVE TECH実行委員会にはまちづくり協議会や観光協会の方、商店街や地元のそれぞれの施設のオーナーさんも入っていて、渋谷をより魅力的な場所にするためにはどんなコンテンツをつくればいいかを街を挙げて考える。渋谷には150を超える文化・エンターテインメント施設があるので、街のなかにたくさんのベニューを置いて回遊してもらう仕立ても、渋谷という街だからこそできることなのではと思います。

いす あと、DIGは人があまり来ない2月に開催して、真冬にも東京を楽しんでもらおうとしています。いろんな狙いが込められたイベントなんです。

オープニングイベントでは、イベントに参画するアーティスト、クリエイター、起業家、エンジニアたちとのトークセッションを開催

渋谷で育った大人たちが本気を出す

ーーところで、みなさんにとっての渋谷ってどんな街なんですか?

 僕は若い頃、渋谷のロフトでバイトしていたし、少し前までは渋谷区民でした。お世話にもなったし好きな街ですね。だから街を盛り上げるプロジェクトに関わるのはうれしかったです。

いす 私は一人暮らしのときも、結婚してからも渋谷区民だった時期が長かったし、仕事先も遊び先もだいたい渋谷。10代、20代だけじゃなく、ほんとにずっと通っているから、渋谷の変貌も見てきた方かなと思います。

クリエイティブディレクターとして参加してくれた外部パートナー、いすたえこさん

奥田 私は住所も勤務地も渋谷だし、めちゃめちゃ愛着がある街です。学生時代も渋谷のクラブに行ったり、公園通りに行く途中のカフェで毎日お茶をしていたり、カルチャー的にも渋谷に育ててもらった気持ちがあります。ただ独自の豊かなカルチャーがあった渋谷の街が、どんどん均質化しはじめている、いわゆるジェントリフィケーションみたいな流れを気にしている人も多いと思います。渋谷ならではの色をきちんと出して、この街にしかない価値をつくりたいという、DIG SHIBUYAに関わるみなさんの思いに私たちも共感しています。

いす 確かに渋谷にインバウンドの観光客がたくさん来て、百貨店に置いているものがだんだんハイブランドになり、若者が近寄りがたい街になってしまった感じはあります。でも、やっぱりこれだけではいけないと思っている大人もいるし、揺り戻しもあるんじゃないかな。その動きにDIGもよい影響を与えたいですよね。

ーーメンバーそれぞれに渋谷に対する思いをもちながら、DIGに関わっているんですね。

 実行委員会の方たちの思いを受け止めて、それを広く伝わる表現に変換してかたちにしていく仕事だったと思います。ロゴ、Webサイト、交通広告、デジタルサイネージ、ハンドアウトまで、自分たちができることはほぼ全てをやった感じです。2025年はメッセージの部分からつくらせてもらい、片岡良子さんに依頼して「渋谷まるごと、ART x TECHの実験中。」というコピーもつくってもらいました。

初日夜に開催された、2200機のドローンによる国内最大規模のドローンショー「DIG SHIBUYA DG ドローンショー」は大きな話題になった。

チームの一体感がさらなる刺激を生む

ーークリエイティブチームのみなさんそれぞれの役どころを教えてください。

 2024年はWebサイトのコーディングを担当しましたが、2025年は主にデジタルサイネージの映像をつくっていました。自分たちでもつくったし、制作を依頼するアーティストや映像作家の人選、作家とのコンセプト共有や納品形態の整理なども担当しました。

いす 私はクリエイティブチームのアートディレクターを担当しました。また、実行委員のみなさんと話し合いながらDIG全体のクリエイティビティの底上げの部分をサポートしていました。インプットも大事なので、いろんなアートフェアに出かけたり、アーティストの友人たちを紹介したり。未来につながる動き方ができているので、アートディレクターという枠を超えたかたちでプロジェクトに参加できています。

町山 私は今年の途中から参加して、制作物のディレクションのところを担当させていただきました。

ーー先ほど「実行委の人たちの思いを受け取ってかたちにする」というお話がありましたが、そのとき自分たちの渋谷への思いも乗せながら制作されていたのでしょうか。

クリエイティブ制作を担当しつつ、2025年にはアーティストとしても参加した林洋介

 そうですね。やっぱり渋谷は面白くてかっこいい場所であってほしいという気持ちはあったかな。たとえばパルコのような渋谷を象徴する商業施設、僕たちといすさんでVIやブランディングの仕事をしていた「Civic Creative Base Tokyo(以下、CCBT)」なども、自分たちがつながっている渋谷の総力を結集して盛り上げるぞ!という意識はありました。

奥田 洋介さんはモノサスのメンバー、いすさんは社外の人たちに対して、クリエイティブディレクターに近い役割を担っていたのではないかと思います。また、洋介さんやデザインを担当した竹田さん、プログラマーの稲福さんやいすさんはアーティストでもあります。「こうすればかっこいいイベントになる。アーティストが参加したくなる」という彼らの視点をチームにインプットすることも大事にしていました。同時に、その視点は渋谷区に対しても意味のあるインプットだったのではないかと思います。

制作進行を担当した町山百合香

いす 初年度は、「これからはじまるイベントのイメージをどうつくりあげていくのか?」を考えるのがすごく刺激的でした。今、流行しているテック系のイベントとどう差別化するのか、渋谷区でしかできないこと、渋谷でやる意味をどうやって表現できるのか。パルコやCCBTのチームの人たちにも、いろんな方向から意見を出してもらって、渋谷区の人たちに見てもらったりもしました。

テックというと冷たい感じがするけれど、実行委員会にはいろんな人たちがいて、まちづくりの文脈も入ってくるので、コミュニケーションが重要なプロジェクトなんです。みんなが渋谷を思い、ていねいに会話している感じをちゃんと表に出していきたいんです。

手ざわりのあるデジタルを表現する

渋谷駅前に設置された2025 DIG SHIBUYAのロゴ

ーーDIG SHIBUYAのロゴは、なつかしさのあるデジタルというか、テックなイメージがありながらもとてもチャーミングだなと思いました。見ていてとても心地いいです。

いす 渋谷には広告がたくさんあるので、できるだけ要素を減らしてシンプルにすると逆に目立つし、街中で記号になるんじゃないかという話をしていました。

 デジタルテクノロジーを使っていることは感じさせたいけれど、最先端で高度なものだけではないし、絶妙な塩梅を探っているというのはありますね。

奥田 どのくらいデジタルっぽくするのか、未来のテクノロジー的なイメージを出すのか振れ幅についてけっこう話し合って、いろんなバリエーションを出してもらいました。

 ピクセルぽい見た目ではあるけれど、ちょっと角が丸くなっていたり、少し滲んでいる感じにしてあります。手ざわりやニュアンスというか、パキッとしすぎないように調整しましたね。

いす 「矢印は使えるよね」「DIGは『掘る』だから、矢印がスコップになっていたらいいよね」とか、いろんなアイデアが入ってきて今のロゴに落ち着いた感じがします。

 今回は、ロゴを作家の方々に使ってもらっていろんなバージョンをつくることに挑戦したのですが、最初にやってくれたのが映像作家の橋本麦(ばく)さんでした。橋本さんはライフ・ゲーム(Conway’s Game of Life)というコンピュータ・シミュレーションのアルゴリズムを用いて映像をつくっています。音楽をつくってくれた、⬜︎⬜︎⬜︎(クチロロ)の三浦康嗣さんも、タイトな制作時間のなかで想像を超えるクオリティで仕上げて、一気にテンションが上がりました。

お二人には、深夜に渋谷スクランブル交差点にある大型スクリーン4面を使ってビジュアルアートを上映する「Shibuya Crossing Night Art」にも出品していただきました。もともと10秒の映像と音楽を5分に伸ばすというのは常識ではありえないのですが、プログラムによる生成とアイディアで、ずっと観ていたくなる作品にしてくれて、さすがでした。

Shibuya Crossing Night Art

奥田 今回は、(林)洋介さん、竹田さん、稲福さん、そしていすさんもShibuya Crossing Night Artに参加して、それぞれの映像がスクランブル交差点で上映されたんですよ。

 僭越ながら…でもちょっと信じられない感じでした。田舎から出てきてよかった、って(笑)。

いす Shibuya Crossing Night Artには、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館に建築家の大村高広さんとのユニットで出展したり、森美術館の展覧会「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」に出品したりされている、藤倉麻子さんにも作品をつくっていただきました。コピーライティングをお願いした片岡良子さんもそうですし、渋谷区のブランドや自由にさせてくれる実行委員会のみなさんのおかげで、自分たちが憧れている作家さんや好きなクリエイターさんとどんどん協業できる夢のようなプロジェクトでもあります。

さらに加速するDIG SHIBUYAに向けて

ーー次が3年目となるDIGですが、準備からイベント終了までどのくらいの期間関わっているんですか。

奥田 イベント本番は2月ですが、参加アーティストの公募告知などもあるので、前年の夏前からプロジェクトが動いています。だいたい夏から冬の終わりまで半年くらいですね。

 渋谷区としても街全体でいろんなことを試したいんですよね。公園通りでパレードをしたり、アーティストが作品を展示したり、ミュージシャンがライブをするとどういう変化が起きるだろう?みたいな。毎回新しい試みが入ってくるからすごく面白いし、もっと街のいろんな人が関われるようになるとさらに面白くなっていくだろうと思います。ここに住んで生活している人たちと触れ合えるから。

ーー1年目よりも2年目の方が、エリアが拡大しましたし、参加アーティストや関わる人の数も増えていますね。

奥田 アーティストだけでなく、パートナー企業やスポンサー、公募への応募数も増えています。コンテンツの量は、1年目の倍近くになっていました。2026年はさらに大きくなりそうです。

いす 韓国のアーティストであるセオさんも、DIGのために来日して映像を記録したりしていました。私たちとしても、2年目は実験的に駅前にオブジェを置いたり、キオスクやインフォメーションをつくったり、立体物の制作など、去年は時間と予算の限界でできなかったことも実現できました。イベントがどんどん成長して、ボリュームもめちゃめちゃ大きくなっていて。大変だったけれど楽しい、見どころあるプロジェクトになっています。

カナダ モントリオールのクリエイティブスタジオmirariによる言葉や音を光の波やパルスに変換するインタラクティブインスタレーション「Echo」
シブヤピクセルアート実行委員会による、大型モニターを使った参加型ゲーム企画「パソコンクエスト」

シブヤピクセルアート実行委員会による、大型モニターを使った参加型ゲーム企画「パソコンクエスト」

ーーモノサスのメンバーにも関わる人は増えていますか?

 1年目は、僕らが右往左往していたら「大丈夫?」って松永さん(Web運用ディレクター/コーダー)が声をかけてくれて。ものすごく助けてもらいました。松永さんはいろんなことに興味をもってくれて、イベントや展示を楽しんでもらえたのもよかったです。DIGのWebサイトは情報量が多いうえに日英対応もあります。アーティストや作家の情報を集めて粒度を揃えないといけないし、間違いがあれば修正もしないといけない。全体を把握したうえで情報を整理し、タイミングを揃えて実装するのはなかなか大変なんですよね。人海戦術的になったときには、社内のいろんな人たちに助けてもらいました。

奥田 Webについては、デザインはもちろんですが、膨大な情報量を整理して落とし込んでいく高度な作業を担ってくれた竹田さんの貢献も大きかったと思います。タイトなスケジュールのなかで、淡々と情報を捌きながらバチっとWebに仕上げてくれました。

 システムやワークフローもかなり効率的に組んでいないと対応できなかったと思います。

町山 私はWeb以外の仕事は初めてだったんです。別の案件で大きなプロジェクトのWebディレクションを担当したことがあったので、そういう感じかなと思っていたら全然手が回らなくて。みなさんに助けていただきました。今年から参加したので、DIGの背景についても今日みなさんのお話を聞いて初めて知ったこともありました。

DIGは、ずっとモノサスにいたメンバーからするとかなり新しい仕事でした。Web制作とフード事業の2軸だったモノサスに、洋介さんたちがジョインしてから知名度のあるイベントの仕事で実績をつくり、領域を広げられたのは大きなことだと思います。また、動いているイベントに紐づくWebをつくったことはなかったので、ベニューを巡りながらユーザー視点での制作を考えられたのもいい経験になりました。来年からは、ユーザー体験をもとに制作物のアップデートをしたいと思っています。

ーーありがとうございました。DIG SHIBUYA 2026も楽しみにしています。

DIG SHIBUYA 2026

開催日:2026年2月13日(金) ・14日(土)・15日(日)
開催場所:渋谷公園通りを中心とした徒歩15分圏内の公共空間や商業施設
プログラムの内容や詳細はWebサイトInstagramにてご案内しています。

杉本 恭子

フリーランスのライター。2016年秋より「雛形」にて、神山に移り住んだ女性たちにインタビューをする「かみやまの娘たち」を連載中。