栃木県益子町にあるお店「スターネット」のカフェリニューアルにともなう業務

Summary
1998年、栃木県益子町で生まれた「スターネット」。 スターネットは、地元産の食材を使った料理を提供するカフェや、日々の暮らしで長く着られる衣類や地元の陶芸家の器を販売するストア、写真展や演奏会などを開催するギャラリーを営み、自然の恵みと巡りとともに、手の届く範囲で心地よく暮らすことを大切にしながら、27年間、同じ地で変わらぬ歩みを続けています。
この度は、カフェ部門のリニューアルにともない、フードハブ・プロジェクトへの協力依頼があり、アドバイザーとしてモノサスのeatripチームも加わることになりました。
元々は、お米を主食としたお食事メニューと、オリジナルコーヒーや豆乳、数種類の茶葉を使ったドリンクメニュー、体を気遣った手作りのケーキメニューなどがあり、豊富なメニュー内容でした。
一方で、現場には料理人出身の調理スタッフがいないこともあり、日々の仕込みや日常の業務で手一杯で、現行メニューを改善したり、新メニューの開発に取り組んだりする時間が取りにくく、メニューは年間を通してほぼ固定化されており、リピーターの創出や新規来店客を呼び込みにくいという課題がありました。
そこで、「遠方からでもわざわざ食べに訪れたくなるメニューは何か」、「季節ごとに来ていただけるようなメニューはどのようなものか」「地域の生産者さんとより連携を強めるメニューは?」』と考え、スターネットがすでに持っている生産者さんとのご縁を大切にしながら、新たなメニュー開発に取り組むことになりました。
Issue
元々のカフェメニューは、お米を中心としたお食事メニューと、オリジナルコーヒーや豆乳、数種類の茶葉を使ったドリンクメニュー、体に気を遣った手づくりのケーキメニューなどとても豊富で、様々なシーンで楽しめる内容でした。
一方で、現場には料理人出身の調理スタッフがいないこともあり、日々の仕込みや日常の業務で手一杯で、現行のメニューを改善したり、新メニューの開発に取り組んだりする時間が取りにくく、メニューは年間を通してほぼ固定化されており、リピーターの創出や新規来店客を呼び込みにくいという課題がありました。
また「メニュー数が多い分、原価のコントロールや把握が難しく仕込みの負担も大きい」、「ランチは、料理人スタッフがいない中で、無理なくオペレーションにのせられ、食事提供とサービスの効率化を考慮したメニューを検討したい」という現場からの声があったり、「デザート・ドリンクメニューは、より ”スターネットらしさ” のあるメニューに絞りたい」、「現場を整理してリブランディングしたい」というような要望を受け、メニューの根本的な見直しを行うことになりました。

Plan & Output
まずは、現行メニューの販売実績を調査し、使用食材や生産者さんとの関係性、スタッフが現行のメニューに対してどのような思いがあるかをヒアリングし、現場の状況を把握することからスタートしました。
スターネットでは、開業以来、顔の見える地域の生産者さんとの繋がりを大切にしていたこともあり、モノサス・eatripチームも近隣の生産者さんを回ってお話しを聞き、作り手の背景を知ることに努めました。また、益子の道の駅やスーパーマーケットにも立ち寄り、穀物、野菜、加工品など食材全般の調査を行い、他の地方に比べてもとにかく食材が豊かだということに気がつき、この土地のポテンシャルを存分に生かすメニューを開発しようという思いが、開発チーム全員の共通認識となりました。
メニューのリニューアルにともない、これまでのカフェメニューをどこまで踏襲するかという議論は何度も行われました。益子にはお米農家さんが多く、スターネットでも開業依頼、お米のメニューを出し続けていましたので、カフェスタッフもお米には愛着があり、お米はスターネットに欠かせない食材の一つでした。
しかし、益子周辺にはお米をメニューに取り入れたカフェが多数あり、他のお店との差別化もつきにくかったり、「リニューアル」という言葉の通り、スターネットのカフェを再解釈することの意味を考えたりすると、決してお米に縛られる必要はないのではないかという考えに至りました。そこで、「お米ありき」の考え方ではなく、「益子の大地を一皿に」というeatripの野村友里さんのキーワードをもとに、「益子の大地を包むようなメニューは何か」について根本から話し合いました。
議論の結果、提案されたのが「クレープとガレット」のメニューでした。 実際に、益子周辺には有機栽培で小麦粉やそば粉を育てている農家さんが多く、この土地に適した食材であるということや、周辺にはこういった考え方でクレープ、ガレットを出しているお店がなかったこともあり、クレープ・ガレット案で進めることになりました。
ちょうどその頃、東京近郊ではクレープを出すお店が増えてきており、「クレープ・ガレット」と聞くとなんとなく流行で東京のカフェを想像してしまいがちでした。 しかし、スターネットで提供したいクレープ・ガレットは、決して「流行り」ではなく、 益子の大地の恵みを受け取って、季節ごとの食材を丸ごと食べていただけるようなメニューとして、豊富な食材が手に入る益子ならではの商品になるのではないかと考えたのです。
クレープ・ガレットにアイディアを絞り食材をリサーチする中で、特に課題となったのが、「どの食材をどなたから仕入れるか」ということでした。これまでのお付き合いのある生産者さんとの繋がりを大事にしながら、仕入れる食材や量がどの程度変わることになるのかを丁寧に説明していく必要があり、フードハブ・プロジェクトの細井が開発したレシピをもとにカフェのスタッフと検証を重ね、慎重な議論が交わされました。
また、食材は、これまでスターネットが取り扱っていなかった地元食材もリサーチ。ガレットに使用しているそば粉は、スターネットから車で10分ほどのところにあるそば農家さんが育てている無農薬のそば粉で、益子食材の情報収集を進める中でたまたま見つけ、新たにお取り引きさせていただくことになりました。
さらに、「クレープ・ガレット生地にスターネットならではの特徴を」という考えのもと、フードハブ・プロジェクトが運営するかまパンストアから神山小麦の自家培養発酵種である「サワードゥ」を取り寄せ、益子周辺の農家さんの小麦で継いでいくプランを提案しました。結果的には、サワードゥ特有の酸味と風味を生地に取り込むことで生地の食味に特徴が出て、モノサスとスターネットならではのクレープ・ガレット生地を生み出すことに成功しました。
ドリンクやデザートメニューや提供方法も見直しました。特にドリンクは栃木さんのシードルをメニューに加え、提供方法もガレットの本場ブルターニュ地方で、ガレットと陶器でシードルを楽しむ習慣から着想し、スターネットでお付き合いのある益子の作家さんにシードルボウルを作っていただき、ガレットとシードルを楽しむ提案をメニューに取り入れました。また、ノンアルコールにも対応するため、発酵飲料であるコンブチャを開発。関連チームである the Blind Donkey からスコービーを分けていただき、スターネットオリジナルの茶葉で育てています。
メニューの方向性が固まってきたタイミングで、カフェのキッチン動線の検証のため、2024年秋に開催された陶器市のタイミングでカフェの現場に入り、実際の使い勝手やオペレーション状況を現場で確認し、改善点を洗い出ししました。持ち帰ったポイントは、スターネットのスタッフとオンラインミーティングを行い、必要機材の洗い出しや新メニューの動線のデモンストレーションを行い、できるだけ追加機材を少なくした現在のキッチンレイアウトに決めました。
Result
リニューアルオープンの直前は、調理やサービスのオペレーショントレーニングを行い、実際の営業を想定して何度もデモンストレーションを実施しました。 約半年間の企画フェーズを経て、2025年2月にリニューアルオープン。
現在も、細井を中心に季節ごとのレシピ開発を行い、日々、連絡を取り合いながら運営をサポートしています。
今回のプロジェクトでは、メニュー提案だけではなく、実際に現場に入りながら、調理方法のレクチャーや味の加減の調整、メニュー構成の検証など、現場を作るところまで関わらせていただきました。
現場でともに切磋琢磨することで、「美味しい!」「スターネットらしい!」の感覚共有ができたり、問題が発生してもすぐに話し合いができたりし、スタッフも、自分たちで考える機会が増え、全体的にスタッフの雰囲気が良くなったという感想をいただきました。
また、季節ごとにメニューが変わることで生産者さんとのコミニュケーションが増え、これまで以上に生産者さんとの繋がりが強くなったと伺い、スターネットの強みが生かされたリニューアルになったのではないかなと思います。
メニューの根本的な考え方である「益子の豊かな風土からいただく食材と、作り手の思いやこだわりを受け取りながら、自然と人とのかけがえのない縁から生まれる一皿をつくり続ける」ことができるように、これからもモノサスチームでサポートできたらと考えています。
Information
概要
- 期間
- 企画・立ち上げフェーズ:2024.8〜2025.1、運用フェーズ:2025.2〜
- サービス
- カフェリニューアルにおける、現地調査/メインメニューの企画提案/年間メニュー提案/レシピ開発/内装レイアウトのアドバイス/備品提案・調達/オペレーション構築 などの業務
クレジット
- プロデュース
- 眞鍋太一
- ディレクション
- 野村友里(eatrip)
- メニュー/オペレーション開発・構築
- 細井恵子
- 進行管理
- 岡崎ちはる
メンバー
- 眞鍋 太一
- プロデュース
- 岡崎 ちはる
- 進行管理