2018年11月

21

水曜日の投稿

高橋 愛
投稿者:高橋 愛
(Webディレクター)

2018年11月21日

ものさすメンバーに聞く、私の好きな作家
第一回 小泉 八雲(ラフカディオ・ハーン)

図書だより

高橋 愛
投稿者:高橋 愛(Webディレクター)

みなさんはこんな冗談を聞いたことがないでしょうか。

世界一幸せな男とは、
アメリカの給料を貰い
中国人のコックを雇い
イギリスの家に住み
日本人の妻を持つ男。

世界一不幸な男とは、
中国の給料を貰い
イギリス人のコックを雇い
日本の家に住み
アメリカ人の妻を持つ男。

<英訳>
Heaven is
an American salary,
a Chinese Cook,
a British Home,
and a Japanese Wife.
Hell is
a Chinese salary,
a British Cook,
a Japanese House,
and an American Wife.

非常に有名なこの冗談を教えてくれたのは、中学校の先生でした。
もう20年以上も前の話になります。
いまは時代が変わったため、この言葉の通りではありませんが、自己主張よりも周りにあわせていた日本女性の性質からきたと思われるこの言葉に、当時はなるほどと納得した記憶があります。

世界には、つい周囲の目を気にしてしまう日本人の気質を揶揄した冗談は多いですが、
ひとしきり笑った後に、なぜ日本人はそのような言動をするのだろうか、と疑問を持つようになりました。

そして、気がついたのは、私は日本人なのに日本のことを全く知らない、ということ。
小泉八雲の小説を手に取ったのは、生まれてこの方ずっと日本に住んでいるのに、未だにわからない日本について知りたかったからです。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、日本に魅せられたイギリス人です。彼は日本の民間伝承をまとめました。時代は19世紀から20世紀へと移り変わるころでした。
小泉八雲の名前は聞いたことがない方でも、彼の代表作である『雪女』『むじな(のっぺらぼう)』『耳なし芳一』は、なじみ深いかと思います。
ページを開けば、そこには、暑苦しい個性や、息苦しい自己実現なんてものは一切なく、
自然を畏れ、敬い、そして自らも自然の一部として暮らす登場人物の姿があります。

今の日本は便利な生活に慣れ、思い通りになることが当たり前になっているため、私などは会社の近くにコンビニが数軒しかないことが不満だったりします。
しかし、やはりそれは不自然なこと。いつの間にか勘違いをしていて、さらには勘違いをしていることにすら気がつけない環境にいるのだと思います。

冒頭にあげた冗談のように、小泉八雲は日本人を理想化しすぎているような気もしますが、彼のお話しにでてくる、どんな出来事が起きても腹をくくって受け入れる昔の日本人の姿には、ただ感動します。

昔話は、大人になってから読み返すと、新しい発見があるのかもしれません。

小泉八雲は東京で晩年を過ごしていた

この文章を書くにあたり、小泉八雲は晩年、大久保で暮らしていたことがわかりました。
旧宅の跡地は公園(小泉八雲記念公園)になっているらしく、ちょうど大久保に行く予定があったため、寄ることにしました。

大久保といえばコリアタウンで有名な街ですが、平日の午後にも関わらず、メイン通りは歩道が歩けないほど若い女性であふれていました。観光客で賑わう名所を離れてちょっと小道を入ったところに、小泉八雲記念公園はありました。公園内には、小泉八雲の生誕の地・ギリシャをイメージしたモニュメントや花壇があり、ギリシャ政府から贈られたという八雲の胸像もありました。八雲が生きていた頃の大久保の風景を私は知りませんが、めまぐるしく変わっていく景色の中でも変わらないものを見つけたような、ほっとした気持ちになりました。公園のそばには、小泉八雲終焉の地の碑がありました。



ラフカディオ・ハーン(著)池田 雅之(翻訳)『妖怪・妖精譚 小泉八雲コレクション』筑摩書房 (2004/8/10)(Amazon) (Amazon

小泉八雲は、(1850~1904) 作家・英文学者。ギリシャ生まれのイギリス人。本名、ラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。
1890年(明治23)来日。松江の人、小泉節子と結婚。のち帰化。松江中・五高・東大などで教鞭をとりつつ、日本研究をまとめ海外に紹介した。評論「東の国から」「心」「神国日本」、小説「怪談」など。出典 三省堂 大辞林

この投稿を書いた人

高橋 愛

高橋 愛(たかはし まな)Webディレクター

ディレクター。埼玉生まれの埼玉育ち。中央線沿線の文化に憧れて上京。ナボコフや森茉莉のような美しい文体の小説を読むと幸せを感じます。ノイズ好きの夫と暮らしているため自宅にいるときは、JOJO広重、中原昌也、秋田昌美をよく聞いています。

高橋 愛が書いた他の記事を見る