こんにちは。モノサスでWebサイトの企画や構成案づくりを担当しているWebプランナーの加藤です。
私たちモノサスのWeb&デジタルソリューションのメンバーは、日々さまざまな企業のWebサイトを制作しています。また仕事柄、世の中の数多くのサイトを見ています。今回はその中から「周年記念サイト」に注目してみました。
創業や設立から数十年、企業によっては100年、150年という節目に合わせて公開される特設サイト。周年サイトという一つのサイトの中で、その企業がこれまで歩んできた歴史と、これから進んでいきたい方向性をぎゅっと凝縮して伝えており、作り手の立場から見ても学ぶところの多い題材です。
そこで今回は、私たちWeb制作担当者が実際に見て「これは良いな」と純粋に感じた周年記念サイトを、いくつか集めてみました。選ぶ基準にしたのは、“伝え方”と“見せ方”、そして“周年ならではの工夫”です。
この中には国内のWebアワードを受賞しているものも多く含まれます。あくまで一制作会社の目線ですが、参考にご覧いただけたらうれしいです。
そういえば、約10年前にも周年サイトを取り上げていました
じつはモノサスのサイトでは、およそ10年前にも同じテーマで記事を書いています。
参考:BtoB企業の周年記念サイト、何を伝えるべき?(2017年)
当時紹介したサイトと、いま「良い」と感じるサイトを見比べてみると、周年記念サイトに求められるものが少しずつ変わってきたことに気づきます。歴史を美しく振り返る、という基本は変わりません。ただ、そこに加えて企業としての存在意義(パーパス)をあらためて言語化すること、社員一人ひとりを主役にして社内の一体感を高めること、そして「誰もが使える」というアクセシビリティへの配慮。こうした要素がより強く意識されるようになったように思います。
本記事はそんな“周年サイトの10年間での変化”についての視点も含めながら書いています。
モノサスが見て「良いな」と思った周年記念サイト
ここからは、「どこが良いなと思ったのか」という私たちの視点を中心に、1社ずつサイトをご紹介します。
あらゆる人に想いを届ける、100年の集大成 ― 中外製薬様「創業100周年サイト」
まずご紹介するのは、独自の技術とサイエンスを強みとする研究開発型の製薬企業、中外製薬様の創業100周年サイトです。2025年3月、創業100周年という大きな節目に合わせて公開されました。
【主なコンテンツ】
- 創業からの100年の歩みをたどる沿革(革新と挑戦の100年)
- 100周年を迎えた「いまの中外製薬」の紹介
- 社員が未来への想いを宣言する「My Action 宣言」
- CEOによる100周年記念メッセージ
まず目にとまったのは、「届ける相手を限定しない」徹底した配慮です。医療用医薬品を扱う企業として店頭で製品を見かけることは少なくても、その歩みをあらゆる人に等しく届けようとする設計になっています。
「これまでを振り返る」では、1925年関東大震災による医薬品不足を目の当たりにした創業者が「世の中の役に立つくすりをつくる」という想いで起業したエピソードから始まります。わずか7名で始まった会社が、100年を経て7,000名を超えるまでに成長した軌跡を丁寧にたどっていきます。
特に印象的だったのが「My Action 宣言」。社員一人ひとりが、これから実現したい未来への想いを宣言としてつづり、アバターとともに紹介するコンテンツです。アクセスするたびに違う宣言が表示される仕掛けになっていて、いろいろな部署の社員の“これから”に出会えます。過去の栄光ではなく、次の100年を一人ひとりの言葉で語る。そのバランスがいいなと思いました。
歴史の重みを誰にでも届く形で伝えているサイトです。なお、本サイトは第13回Webグランプリでアクセシビリティ賞グランプリを受賞しています。
“のぞく”という遊びゴコロ ― caroa様「4周年特設サイト」
次はWeb制作会社であるcaroa(カロア)様の4周年記念サイトです。歴史の長い企業とはまた違ったアプローチで参考になる一社です。
【主なコンテンツ】
- 実際に働くメンバーの紹介
- 制作の裏側や仕事術の紹介
- サイトを回遊しながら“のぞく”体験ができる演出
このサイトの主役は、会社そのものというより「そこで働く人」。「4周年を迎えたカロアをのぞいてみよう」というコンセプトのもと、サイト全体が“のぞく”という体験で設計されています。制作の舞台裏やメンバーそれぞれの仕事術をのぞき見るような感覚で、その会社の中のことを実際に働く社員の視点を通じて知ることができます。
大切なのは派手な演出そのものではなく、「のぞく」というアイデア一つで全体を構成する潔さとリアルなコンテンツ作り。周年は、長い歴史がある企業だけのものではありません。若い企業や成長企業でも周年をブランディングの好機に変えられる。そのことを気持ちよく教えてくれる一社でした。
なお、こちらは「Studio Design Award 2024」でゴールドを受賞しています。
沿革を“物語”として読ませる ― 阪急西宮ガーデンズ様「15周年特設サイト」
続いては、兵庫県西宮市の商業施設・阪急西宮ガーデンズ様が、開業15周年に合わせて公開した特設サイト、GARDENS STORY『庭園のレイディたち』です。
【主なコンテンツ】
- 施設を舞台にした書き下ろしオリジナル短編小説(全4話)
- 四季にあわせて連載公開される物語
- 関西弁の語り手による音声小説
周年記念サイトに欠かせないのが、その企業や施設の歩みを紹介するコンテンツ。しかし、ただ淡々と沿革を並べるだけではどうしても味気なくなってしまいます。そこをまるごと“物語”に変えてしまったのが、こちらの事例です。
阪急西宮ガーデンズ様の開業と同じ年に発刊され、地元・阪急沿線を舞台にした大ベストセラー小説『阪急電車』。その文脈を受け継ぎ、作者の有川ひろ氏と版元の幻冬舎がタッグを組んで、施設を舞台にしたオリジナル短編小説を書き下ろしています。主人公はお客様自身。西宮で暮らす喜びを四季の催事とともに描き、15年の軌跡をパズルのようにつなげた全4話を、周年の1年間を通じて公開し続けました。
もうひとつ良いなと思ったポイントがその届け方です。文章だけでなく、館内や阪急電車のホームで撮影した映像・写真を絡めて、絵本のような読み物に。関西弁の語り手による音声小説も収録し、耳からでも情景を楽しめるようになっています。老若男女、そしてハンディキャップのある方まで、あらゆる人に届けようという配慮が行き届いていました。
沿革コンテンツも工夫次第でここまで豊かな読み物になるのだと気づかされました。なお、「第12回Webグランプリ」のプロモーションサイト賞で優秀賞を受賞しています。
ビジョンから未来を描く ― 横河電機様「YOKOGAWA 100周年記念サイト」
ここからはBtoBメーカーの事例をご紹介します。1915年に東京・渋谷で創業し、計測・制御・情報の技術で世界の製造業を支えてきた横河電機様の創業100周年記念サイトです。
【主なコンテンツ】
- 目指す方向とスローガン「Co-innovating tomorrow」を伝えるビジョン
- これからの100年に向けた未来像
- 1915年の創業からの歩みをたどる沿革
- これまで培ってきた技術・革新の紹介
- 社員や関わる人々の姿の紹介
このサイトが良いなと思ったのは過去の振り返りにとどまらず、「これからどこへ向かうのか」を軸に据えているところです。掲げられているのは「Co-innovating tomorrow」というコーポレート・ブランド・スローガン。お客様と長期的なパートナーシップを育みながら、共に新しい価値を創り出していく、という思いが込められています。
「VISION」では、経営トップの言葉で目指すべき方向をまっすぐに語ります。生産工程だけでなく工場全体、さらには企業間をまたぐサプライチェーン全体へと視野を広げ、あらゆる情報やモノの流れを最適化していく。BtoB企業ならではの地に足のついたメッセージが並びます。
企業スローガンと周年メッセージがきれいに連動し、「100年」という節目を次の100年への宣言の場として使いきっている。歴史を誇るだけでなく、未来を語る。100周年サイトの構成として学ぶところの多いサイトでした。
社会インフラ企業の、誠実な語り口 ― 三機工業様「100周年記念サイト」
最後にご紹介するのは、空調・給排水・環境などの設備工事を手がける総合エンジニアリング企業、三機工業様の100周年記念サイトです。2025年4月22日に創立100周年を迎えました。
【主なコンテンツ】
- 社長からの感謝と次の100年への決意を伝えるメッセージ
- 100周年ロゴに込めた想いの解説
- 100年の歴史を講談仕立てで見せるスペシャルムービー
- 「三機世紀新聞」や社員100人アンケートなどの読み物
- 創業からの歩みをたどるヒストリー(記念誌ビューアつき)
「人に快適を。地球に最適を。」というメッセージのもと、社長メッセージでは100年の感謝とサステナブルな社会への決意を率直につづっています。一方で、100年の歴史を講談仕立てで見せる「講談・風雲三機の巻」や、社員100人へのアンケート「三機世紀新聞」といったコンテンツには、堅実な業種ながら遊びゴコロも感じられます。ロゴに込めた想いを丁寧に解説するページからもこの節目を大切にしていることが伝わってきました。
華やかさよりも、社会インフラを支えてきた企業としての実直さ。それがそのまま強みになっているサイトだと感じました。
「良いな」と感じたサイトの共通点
こうして5つのサイトを並べてみると、私たちが惹かれたサイトにはいくつかの共通点があることに気づきました。いま見て「良いな」と感じるサイトには、次のような特徴があるように思います。
周年を機に、ブランドやパーパスを語り直している
良かったサイトは総じて、過去の実績を誇るだけで終わっていませんでした。「自分たちは何のために存在するのか」をこの節目にあらためて言葉にし直している。中外製薬様や横河電機様のように、創業の原点と未来のビジョンをひとつながりで語る構成が印象的でした。
社員が主役になり、内側の一体感を生んでいる
中外製薬様の「My Action 宣言」やcaroa様のメンバー紹介のように、社員一人ひとりを主役にしたコンテンツが目立ちました。周年記念サイトは社外に向けた発信であると同時に、社内の一体感を高める場にもなっているように思います。
「誰に伝えるか」が明確で、語り口がブレない
顧客、取引先、株主、地域、そして採用候補者。誰に向けたサイトなのかがはっきりしているほどメッセージが濃く、記憶に残りました。阪急西宮ガーデンズ様が「地域の顧客」に徹底して寄り添っていたのが印象的でした。
伝えたい人へ届ける、誠実なサイト設計
動画演出やサステナビリティの発信に加え、近年特に重要視されているのが「アクセシビリティ」への対応です。単に法改正(2024年の改正障害者差別解消法)への対策やトレンドとして取り入れるのではなく、自社の事業や顧客、社会とどう向き合っているかという企業姿勢そのものが問われるようになっています。
たとえば中外製薬様の事例では、自社の医療用医薬品や事業が「あらゆる患者さんや社会」と深く関わっているからこそ、年齢や障害の有無に関わらず誰にでも情報が届くアクセシビリティを徹底されています。
周年サイトは、企業がこれまで関わってきたすべての人へ感謝を伝え、未来を示す場です。だからこそ、「一部の人しか閲覧できない」状態をつくらず、あらゆるステークホルダーに対して開かれた設計にすることも周年サイトをつくる上で検討したい大切な要素となっています。
Web制作会社として思う、周年記念サイトの進め方
最後に、この周年サイトの記事を作成する中で改めて感じた、周年記念サイトで大切にしたいことをお伝えします。
大切なのは、いきなり「どんなデザインにするか」から入らないことだと思っています。まずは「この周年で、誰に、何を伝えたいのか」を整理する。そこがブレなければコンテンツもデザインも自然と定まっていきます。
そして、周年記念サイトは“公開して終わり”ではありません。たとえば阪急西宮ガーデンズ様は、短編小説を四季にあわせて1年かけて公開し続けました。また、横河電機様や三機工業様のように、周年を過ぎたいまも周年サイトは公開されており、資産として残っているサイトもあります。周年をきっかけに生まれたコンテンツを、その後の企業活動にどう活かしていくか。そこまで見据えられると投資した価値がぐっと高まります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回私たちが「良いな」と思ったサイトは、どれも周年を“過去の振り返り”だけで終わらせず、いまと、これからへの期待をあわせて伝えていました。そして、その多くがWebアワードでも評価されているサイトでした。
周年は、企業にとって特別なタイミングです。顧客はもちろん、従業員やその家族、株主や事業関係者など、関わるすべての人への感謝を表しながら、過去を振り返るだけでなく、現在、そして未来への期待を感じさせる。そんなサイトづくりができたら素敵だなとあらためて思います。
私たちモノサスは、発注前のご相談からサイト制作、公開後の運用まで、Webサイト制作を中心にさまざまなサービスを展開しています。周年記念サイトをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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