Wed.
29
Nov,2017
中庭 佳子
投稿者:中庭 佳子
(何でも屋担当)

2017年11月29日

「しんどくても悪くないよね」
を伝える記事を書いていく
~interview 佐口賢作さん(フリーライター)後編~

めぐるモノサシ

中庭 佳子
投稿者:中庭 佳子(何でも屋担当)

ものさすサイトの連載「めぐるモノサシ」「私、あなたの会社売ります!」のライティングを担当していただいてるライターの佐口さんへのインタビュー。前編では、佐口さんがライターの道に進んだきっかけや、ライター修行の話、そしてお母様との紆余曲折した人生の片鱗を伺いました。

後編では、20数年もの間、ライターとして数々のお仕事をされてきた佐口さんのインタビューの考え方や、カウンセラーでもジャーナリストでも小説家でもない、ご自身の仕事のスタンスについてお話を伺います。

目次
前編:「稼ぐ」手段としてのライターへの道
  • 佐口さんとモノサスの出会い
  • 字を書くのはもうかるらしい… 湯河原での原体験
  • 自分が持っているスキルで、いちばん確実に稼げる手段に出会った
  • おかんとの30年間の葛藤
後編:「しんどくても悪くないよね」を伝える記事を書いていく

佐口 賢作さんプロフィール
フリーライター/インタビューアー 92年より『月刊BIGtomorrow』(青春出版社)のデータマンとして、ライター業に入る。以後、人物インタビューを中心に、雑誌、書籍、Webサイト、広告制作などで活動中。また、ビジネス書、健康書を中心に年間7冊ほどのブックライティングも行っている。


インタビューとカウンセリング、
話の聞き方の違い


話し手・佐口賢作さん(左)、聞き手・中庭(右)

中庭
産業カウンセラーの資格を取られて、少しお仕事もされたとのことですが、相手の話を聞くという意味で、普段されているインタビューと、カウンセリングは重なっている部分もあるんですか?これは似てるけど、あれは違うとか、あれば伺いたいです。

佐口さん(以下、敬称略)
えっと…。僕が思っていることなんで間違っているかもしれないんですけど、インタビューの方があざといです。出発点が違うので。

カウンセリングの授業を受けて、自分もやってみて思ったのは、カウンセリングは相手の重荷を減らしてあげたり、相手の中で問題を解決してもらうために寄り添って聞く。傾聴するのがベースで、いいコメント引き出してやろうとか、悩みを解決してやろうとか、第三者にこの人のおもしろいところを伝えたいとか、そういう目線は不要なんです。
インタビューは全然別で、読む人が楽しくなったり、悲しくなったりと心が動いたり、得した気持ちになれるかが大事になってきます。読む人の時間をもらって、なんならお金ももらって記事を提供するためにインタビューをしているのであって、相手に好きなように話してもらっては困るわけです、多くの場合は。
どこらへんの話を聞いたらおもしろいかな、というのを準備しながら話を聞きに行くので、その時点でインタビューとカウンセリングは全然別のものだと思いました。


佐口賢作さん

佐口
カウンセリングで教わった、例えばオウム返しで言葉を返すなどの手法はインタビュー中もとても役には立ちますが、でもそれはテクニックとして使ってるんであって、相手に寄り添うために使ってるわけではない。まあ腹黒いですよね、技術ですから。カウンセラーがやるのも技術ですけど、それは相手に寄り添うためにやっている。出発点が違うかなという気がします。

インタビューって、ジャーナリストの人がやっている取材とも違って、なんかこう、“追い込み漁”というか、釣りとも違う、網でバーっと魚を捕獲するイメージが、自分的にはすごいしっくり来ています。

中庭
なるほど。

佐口
質問の答えになっているか分からないですけど、ものさすサイトも割とそんな感じがあります。「めぐるモノサシ」の方はそうでもないですけど、「私、あなたの会社売ります!」の方は結構そうですね。

中庭
「私、あなたの会社売ります!」の方はテーマがあって話を聞きに行きますからね。「めぐるモノサシ」は関係性をあぶっていく記事だから、ちょっと狙いが曖昧な、もやっとしたところで進めてますよね。

佐口
一番いいですよね。コンテンツをつくるという意味でいうと、一番贅沢なやつです。

中庭
贅沢ということで、ライターさんとしてはまとめるの大変ですよね…。いつもありがとうございます。
 

太くたゆたっている川で
“しんどくても悪くないよね” という記事を書いてきた

中庭
今一番おもしろい仕事はなんですか?

佐口
今ですか?『週刊プレイボーイ』でお手伝いしている放送作家の鈴木おさむさんの連載「この人だって父である」ですね。

中庭
お父さんにインタビューする記事ですよね。


『週刊プレイボーイ』(集英社)で連載中の「鈴木おさむの父勉講習会 この人だって父である」。鈴木おさむが各界の先輩お父さんに子育てと仕事について語り合う対談記事。佐口さんが構成を担当されている。(2016年9月〜)

佐口
この仕事は楽しいですね。自分が父親であるという実人生の延長線上で、気になっていることがそのまま話題となり、記事になるので。鈴木さんも、担当の編集さんもぼくも同世代で、父勉中。子育て、仕事、父親って何するの?という悩みを起点に、各界のゲストに経験談を語ってもらうという。毎回、共感と笑いと納得だらけの贅沢な現場です。
今の若い人って雑誌を読まないんで、『BIGtomorrow』も『プレイボーイ』も、創刊時は20代の男性向けだったんですけど、今の読者は40代、ほぼ同世代なわけです。自分が抱えている普通の悩みの延長線上に読者がいるので、人口ボリュームゾーンに生まれてラッキーだったなと。

中庭
“自分の中の悩みの延長線上”という話がありましたけど、自分の中の体験から話の軸をみつけていくんですか?質問はどんな風にされていくのでしょう?

佐口
やっぱりどの記事でも外せないのは、“なぜその人がそれをしはじめたのか” ということ。その理由は細かくは違うんですけど、大きく言うとやっぱり「環境」「興味」「経済」なんです。
環境はその人が育った環境、国とか時代とか。興味はその人の思考、得意なこと、不得意なこと。経済的なものは生きていくための糧をどう捻出してきているか、ということで、その辺はどの人も理由の軸としてあるんです。

逆に、そういうことを意識せずに繰り出さる素敵な話とかキラキラした話とか、理想論とか、社会的な使命とかの話は、あんまり興味がありません。
ライフスタイルを提案して、素敵でしょ?と言いいながら、ともに歩んでいく、みたいな媒体に憧れたこともありますが、やってみると居心地が悪いなと。生活している人の毎日は、そんな風にきれいにできてないんじゃないかという気がします。

中庭
きれいごとじゃすまないよ、という世界に、ちゃんと向き合いたいんですね。

佐口
結局人が疲れちゃったときって、自分と同じようなことで困っている人とか、自分よりしんどそうな人とか、自分よりしんどい状態から回復した人とかの話が知りたいんじゃないかな、という気がするんですよね。
元気な時はキラキラしたものに惹かれますけど、そっちよりは、しんどい人に届く、というか、自分もしんどいので(笑)、しんどくても悪くないよね、という感じの話の方が好きですね。

中庭
しんどくても悪くないよね、という話を聞きたい、と思われたきっかけはあるんですか?

佐口
なんですかね、スクールカーストみたいな話になるんですかね。キラキラグループにいたことがないので、あいつら楽しそうだなと(笑)。
東京で仕事していると、キラキラした会社の人に会うじゃないですか。僕の個人的な体験で言うと、例えば大企業に勤める人とかが、朝活やらMBA留学やらの話をしたり、案件の発注先は格からいって電通博報堂がいいよね、とか言って俺たち感を出して去っていく。あの人たちが読みたいと思うものは書けないなというのと、彼らが読みたいと思うものに接点がないなという感じ。

それよりも居酒屋でくだを巻いてる同世代のおじさんたちが読みたいものを書く方が、性に合ってるんです。
あとやっぱり、母親と一緒に長いこと病院に毎週通うような生活の中で、精神科とか心療内科とかは非常にうっとうしい雰囲気が漂っていると感じたのですが、そこにいる人たちも好きなことはあって、楽しいことがあれば笑うんです。
そういう人たちに、ガス抜きになるような瞬間が提供できれば、インタビュー記事はいいんじゃないかと思うんですよね。

かと言ってあんまりシリアスなのも根性が決まってないので、つらいんです。いろんな分岐点はあったはずなんですけど、一番たゆたっている太い川で、生活に近接したそんなに深刻ではないけれども消えない悩みみたいなものの上にあるコンテンツにずっといる気がします。

中庭
たゆたっている太い川があって、その脇に深いゾーンも見えてそうなんですけど、そっちの流れに行くのは、やっぱりちょっとしんどいのでしょうか?

佐口
そっちの取材をするのはしんどいな、というのがありますね。
貧困問題というのがあるじゃないですか。「ワーキングプア」という言葉が出始めたときに、それについての本のお手伝いをすることになって、取材に行ったんですよ。貧困状況にいる15、16人へインタビューをしたんですけど、まぁみんな普通の人たちなんですよね。どこかで怠けたわけでもなく、言うなれば構造的に乗っかる場所を間違えたくらいなんです。

で…結構まじめにコツコツ働いているけど、年収が200万以下です、みたいな話を聞いて帰ってくるじゃないですか。どういう風にしたらいいか分からないけど、本の意義としては、こういう人が増えてきて大変です、ということを伝えることなので、そのまま書いて、納品しました。そして本が売れました。編集さんも出版社も喜んでます。僕にもちゃんとギャラが入ってきます。そのことは嬉しいんですけど、ここからインタビューした人たちに還元するでもなしで、どうなんだ、と思って。
その後、貧困問題は読み物としてマーケットがあったので何冊か続いていき、僕も二冊目は一緒にやったんですけど、いやぁ、きついなと。ここでもまた撤退。

中庭
そこはそのまま受け取ってはならないという、何かわきまえ的なものがあったんですか?

佐口
わきまえというか、びびっただけです。貧困問題を追っかけていく、社会にこういう問題がありますよ、と提起していくようなライターになっていく人もいると思うんですけど、それはしんどそうだと。そこまで自分は腹が座らないと思ってしまって、また元の大河の方に戻っていきました(笑)。程度としてはもう少し軽い人生の悩みと一緒に進んでいくという感じですかね。

恋の悩みは本人が解決できるけど、構造的なお金の問題って、本人の努力で切り抜けられる部分があんまりないので。

ワーキングプアのインタビューの時も、聞いたまま書くことはできるけど、書くことで何か変化が起こせるとはまったく思わなかったし、社会に対してじゃなくて、取材した本人に対して、原稿を見せてよかったと思われるかというと、どちらかというと思われないだろうと。自分のしんどい状況を客観視されて評価されて、ますます突き放されるような気持ちになるんじゃないかなと。なかには読んで状況が整理できて違う形になれるよう頑張ってみますと言ってくれた人はいますけど、大概の人は「つらくなっただけです」って言うところなんです。

バンバン情報だけ集めて切り取って記事にしていく人もいれば、もう本当に寄り添って、社会正義だとやっている人もいて、「書く」という仕事も幅が広いんですよね。
 

この稼業で、注文が途切れないように頑張りたい

中庭
今、一番やってみたいことはありますか?
仕事でもいいですし、他のことでもいいですし。

佐口
なんですかね。仕事ではとりあえず、ブックライター、ゴーストライターとして書籍を100冊書こうと思っていて、今八十何冊かは行ったので、到達させたい。あとは、目指せ100万部ですね。

中庭
目指せ100万部!

佐口
やっぱり目指せ100万部は掲げておきたいですね。去年お手伝いした本が27万部までいったので、100万部、無理ではないんじゃないかと。1年間くらい海外で暮らしてみたい、という夢もあって、それを実現させる経済力のためにも100万部が必要だと。
まあ、実際には難しいんでしょうけどね。母のこともあるので。

中庭
そうですよね。

佐口
同じような悩みを抱えた人はたくさんいると思います。いま仕事をしている雑誌の読者が上の年齢にあがっていったら、そういう話題もたくさんあると思うので、それはそれで記事が書けるかなと。

中庭
生きてる限りネタはつきない。

佐口
という意味で、ライター稼業は意外にいいのではないか。

中庭
(笑)

佐口
という気がしています。
やりたくないことはいくつかあって、ライターはそれを全部クリアできているんで。
だから…うん。めぐるモノサシでインタビューしたカメラマンの阿部さんも言ってましたけど、この先、この稼業で、注文が途切れないように頑張りたい(笑)。

中庭
いいですね。

佐口
で、願わくは、大ヒットを飛ばしたい(笑)。

中庭
佐口さんは普段はライターとして、いわば黒子のような存在ですが、将来的に、ご自分の名前で本を出版したい気持ちはないですか?

佐口
出してみたいとも思うんですが、一方で売れなきゃ意味がないとも思っていて。
なんかないんですよね。びっくりするくらい訴えたいことが、ないです。
すごく怒っていることも、すごく困っていることもないし、ワーキングプアの取材も、社会的正義感が強い人はもっと深く取材されて本を出すでしょうけど、そういう熱量もあまりなくて。母との話はすでに形にしてもらったんで、これ以上自分の身内の話も別にないですし。

中庭
ご自分の名前で書きたいことは「ない」からこそ、今のお仕事をこんなにもフラットにやることができるのかなと…。だから佐口さんなんだなと、お話を聞いてて思いました。

佐口
何か言いたいことがある人の側にいて、「ああそうですか、こういう風にしたら伝わりやすいんじゃないですかね」とやっていくのはすごく好きなんですけど、自分のそばに自分を寄せていって、「何か言いたいことはないですか?」って聞くと、ないなと。

中庭
逆にその境地がすごいです。
佐口さんってこう、プラマイ0の立ち位置にいる感じがします。

佐口
いたい感じはありますね。

中庭
それがすごく、お仕事としてもいいんだろうな、と想像します。

佐口
はい。
って、このインタビューをどうまとめようかと考えてしまう…。

中庭
職業病ですね。大丈夫です。今回記事をまとめるのは私ですから。

佐口
気楽です!(笑)


 

佐口さんへのおたより

佐口さんとは出会ったのは某製菓メーカーのお仕事。その後「めぐるモノサシ」の執筆を依頼させていただき、私の慣れないディレクションにも関わらず、すぐさま “ものさす” をキャッチして、ものさすの中の人であるかのような原稿をあげてくださったのには、驚きました。

佐口さんは常に一定の温度感で、可もなく不可もなく、といった佇まい。そのせいか、佐口さんのいる現場はいつも絶対の安定感があります。
「これは結構むちゃぶりでは?」と恐る恐る伺う時も、あたかもそんなの想定してました、的な雰囲気で「いいですよ」と言ってくださる懐の広さ。その達観したご対応に何度も助けられて来ましたし、多くのことを学ばせていただきました。

今回、佐口さんの幼い頃の話、ライターまでの道のり、お母様のこと、お仕事のスタンスのお話を伺い、佐口さんのことがより立体的に見えてきました。普段は人の話を聞く側にいらっしゃると思いますが、今回は話す側に立っていただき、いつも一定の温度感に見えた佐口さんの、でこぼこが発見できたようで嬉しかったです。

こちらは未熟者ですが、編集部ともども、今後もおつきあいいただけたら嬉しく思います。
私も今度、おすすめいただいた谷根千の居酒屋に、おじさん観察に繰り出してみますね。

ものさす編集長・中庭佳子
 

この投稿を書いた人

中庭 佳子

中庭 佳子(なかにわ けいこ)何でも屋担当

こどもが生まれてからは早寝早起き3度の食事づくりの日々。好きだったランニングと地ビールが遠のき早3年目…。家をDIYで改装し、週末ギャラリー運営中。仕事はやってきたものをいろいろやってます(主にWeb制作)。

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