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Jan,2018
眞鍋 太一
投稿者:眞鍋 太一
(代表 )

2018年01月19日

マイ・プロジェクトを、もとう。
神山町の成人式講演で考えた年始のアレコレ

私たちの仕事は、社会とつながっているか。

眞鍋 太一
投稿者:眞鍋 太一(代表 )

こんにちは。プロデュース部 部長 / フードハブ・プロジェクト支配人の真鍋です。

現在、私が家族と暮らしている徳島県神山町の成人式が、今年の1月2日に行われました。昨年末に神山町の教育委員会の方から、成人式で講演をして欲しいと依頼を受け、「私でいいのだろうか...」とかなり不安に思いながらも、少しでも町の役に立つならと考えて、お引き受けしました。

しかし、何を話していいのかさっぱりわからず、正直かなり悩みました。そこでふと思い出したのが、代表の林が言っていた「マイ・プロジェクトをもとう」という話です。この内容なら、これから社会に出ようとしている人にも役立つかもと思い、私なりの解釈を加えて、成人式でお話しさせていただきました。

結論から言うと、ハタチの子たちにはそんなにウケていなかった印象ですが(笑)、今日はそこで話した内容を簡単にご紹介したいと思います。
 

フードハブ・プロジェクトの「プロジェクト」とは何か?

まず始めにフードハブ・プロジェクトの事業説明を簡単にすませて、フードハブ・プロジェクトの「プロジェクト」とは、何を指すのかというところから、マイ・プロジェクトの話につなげていきました。

プロジェクト(英:project)は、何らかの目標を達成するための計画を指す。
語源は、ラテン語の pro + ject。意味は、「未来に向かって、投げかけること」
wikipediaによるとこういう定義です。

それをフードハブに置き換えるとこのようになります。

フードハブ・プロジェクトは、利益を追求する会社ではなく
社会的な目標である、地域の農業を次の世代につないでいく
とうことを未来に向かって、投げかけるための会社です。

もちろん利益は大切ですが、フードハブではそれが主たる目的ではないので、あえてそこにこだわって「プロジェクト」という言葉を会社名に入れています。

ちょっと話がそれますが、神山に移住してきた私は「フードハブは何年やるんですか?」とよく聞かれます。(また次の場所に行くんでしょ、というのが背景にはありそうです)そこで「骨を埋めるつもりでやります!」と答えても嘘っぽい…というか嘘ですよね。だから私は言いません。「つもり」というのは無責任な言葉だと思うからです。

正直な答えは、「わからない」です。
ずっとやるかもしれないし、やらないかもしれない。

「私=フードハブ」のように属人的な存在になるのではなく、フードハブ自体が健やかに自活していけるまでは、関わりつづけたいと思っています。

というのが本音ですが、実際には、「10年はやります」と答えています。

そこからは、この町にいるかもしれないし、いないかもしれない。
10年っていうと、みんな「なるほど、10年か」となります。
人にとって、10年って意外と納得いく数字のようです。

10年の理由は、会社設立(2016年)から10年で、娘(現在小学校4年生)が高校を卒業するからです。現在フードハブでは、神山町にある唯一の高校(農業の高校)の学科改正にも関わり始めています。私の娘がそこに通うかどうかはわかりませんが、私たちが関わる高校に通って卒業してくれたらいいなと、ひそかに思いながら取り組んでいます。

仕事であるフードハブの活動に「個人的な想い」をのせて関わっていくこと。単に仕事としてやるべきという関わりからもう一歩踏み込んで、主体的に関わっていくこと。このような在り方を「マイ・プロジェクト」と呼ぶんじゃないかと思います。
 

で、人生もプロジェクトじゃん!

個人的な想いをプロジェクトとして仕事にのせていくような在り方を「マイ・プロジェクト」とするなら、自分の人生もプロジェクトといっても良いのではないか、というのが私の持論です。

じゃあ、人生をプロジェクトとして捉えた場合、自分の人生の中で「プロジェクト」にしたいものは何なのか。自分の人生において、計画をもって未来に投げかけてみたい物事は何でしょうか。

生きていくこと?(これはこれで大事)
お金を稼ぐこと?(これだけだとちょっと寂しい)
豊かな暮らし?(これだと漠然としている)

人生をもう少し客観的にとらえてみると、次のように考えられるのではと話しました。

常々モノサスで言っていることですが、人生というものは、ある側面では「働き方と暮らし方」、言い換えると「稼ぎ方と使い方」について、繰り返しトレーニングしたり、話し合ったりしているんじゃないかと思います。

「お金をたくさん稼いでたくさん使う」というのもひとつの生き方だけど、「そこそこ稼いで、なるべくお金を使わずに自分たちの手で解決していく」という形もあるんじゃないか。私たちが神山にサテライトオフィスを作ったのも、働き方と暮らし方、稼ぎ方と使い方の選択を増やすためと話しました。
 

プロジェクトな、人生。

人生を「プロジェクト」として捉えて生きていく場合、「自主性」と「主体性」の違いを意識して行動することが大事です。私自身もこの違いを明確には意識せずに、これまでの人生を歩んできてしまっていました。

例えば、あいさつを例にとってみます。

  1.  イヤイヤ、あいさつをする。
  2.  自主的に、あいさつをする。
  3.  主体的に、あいさつをする。

この3つの違いを説明してみましょう。

1. イヤイヤ、あいさつをする。

これは論外w

2. 自主的に、あいさつをする。

自主的であるというのは、すでに「やるべきこと」が明確になっていて、その行動を人に言われる前に率先して自らやるということです。
大多数の人は、誰かと顔を合わせたらあいさつした方いい、ということがわかっています。つまり、毎朝率先して元気よくあいさつ出来る人は、「自主性」がある人ということになります。率先して掃除をすることなども、自主性の現れと言えるでしょう。

3. 主体的に、あいさつをする。

主体的であるというのは、何をやるかは決まっていない状況でも目的から自分で考えて、判断し行動することです。例えば「あいさつをする」ということに、主体的に関わると...

自分たちのチーム力を高めるには「あいさつ」だけでは足りない(目的から考えなおす)、朝と帰りのあいさつ時に「シェイクハンズ(握手)」もした方が良いのではないか?と勝手に思いついて、チームに呼びかけて行動に移すような人も「主体的」だと言えそうです。
(時に私のようにうざがられる人かもしれませんw)

何が言いたかったかと言うと、人生をプロジェクトとしてとらえて行動していくには、予め誰かが「やるべきこと」を明確にした中で行動する「自主性」だけでは不十分で、目的から自分で考え判断し行動する「主体性」が必要だということです。
 

実は「主体性」を発揮する場所がない?

主体性が必要だとお伝えしましたが、実は社会の中で「主体性」を発揮するのは、意外と難しいのかもしれません。

学校でも会社でも、多くの物事では「やるべきこと」が明確になっていて、ほとんどのケースが「やるべきこと」で時間は埋め尽くされています。「主体性」を発揮したくても、発揮できる場所がない、というのが現状ではないかと思います。

そこでご紹介したいのが「20%ルール」です。
 

Googleの20%というルール

長年プロジェクトでお世話になっているクライアントの Google さんには、様々な素晴らしい社内ルールがあります。

そのひとつが「20% Rule」。
仕事のうちの20%の時間は、自分の好きな仕事に使ってもいいというルールです。

厳密にどう運用されているかはわかりませんが、20%の時間で主体的に自分の研究的プロジェクトを立ち上げ、それが実際のプロダクトとして採用されたり、「20%で私の新しいプロジェクト手伝って!」と組織の壁を超えた動きが生まれるなど、この20%ルールが活用されている場面に何度も遭遇しました。

あらかじめ「自主性」しか発揮しづらい会社組織や仕事というモノゴトの特性を理解し、その中でも「主体性」が発揮できる仕組みを「20% Rule」という形態で組み込んでいる。

強い会社は、やっぱりちがうなと思います。
このような会社であれば「自主性」も「主体性」も発揮できるかと思いますが、普通は、自分で会社を立ち上げて経営者でもにならない限りはそうはいきません。モノサスもフードハブも、Googleの足元にも及ばない吹けば飛ぶような小さな会社ですが、チームメンバーが「主体性」を発揮できる場を、組織の仕組みとして取り込めないかと、あれこれ試行錯誤しているところです。

そのときに活かせるのが「マイ・プロジェクト」という考え方だと思います。

たとえばモノサスでは、同業種でなければ副業OKです。過去には、プロのバンドをやりながら全国をツアーしていた人もいますし、週末でギャラリーを経営している人もいます。これらも、マイ・プロジェクトのひとつの形だと思います。
 

私自身のマイ・プロジェクト

ここで、私自身のマイ・プロジェクトを振り返ってみたいと思います。

2011年11月に実施した『OPEN harvest』という食のプロジェクトは、当時働いていた JTQ Inc. 代表の谷川さんから、目的や意義を含めて与えてもらいながら、存分に「自主性」を発揮させてもらったプロジェクトです。

その翌年、一緒に活動した eatrip の野村友里さんを中心とした料理人たちと一緒に『Nomadic Kitchen』という、地域をこえた食のコミュニティづくりの活動を、誰に頼まれるわけでもなく始めました。それぞれ有給やお店の定休日を使って、自費+イベント収入でなんとか現在も活動を継続しています。このあたりが、私のマイ・プロジェクトの始まりではないかなと思います。

Nomadic Kitchen の活動がベースとなって、私だけのプロジェクトから、より多くの人の想いがつまったフードハブ・プロジェクトへ発展していっているという流れがあります。
 

マイ・プロジェクトのはじめ方。

じゃあどうやって、マイ・プロジェクトをはじめるの?
そこについて、少しだけサポートできる考え方を紹介しました。

再び Googleさんの例ですが、こんな考え方があります。

Start Small, Fail Early.
小さくはじめて、早く失敗する

プロジェクト!というと立派で大きなものを想像するかもしれませんが、とにかく早く、小さくはじめて、早く失敗していく。小さく成功して、それを次につなげていくということが大切です。

次に大事なのが精神性。

許可をとるな、許しをこえ。

どこで最初に聞いたのかは忘れましたが、先ほどの「小さくはじめて、早く失敗する」にも関連していると思います。いちいち許可をとってリスクヘッジをするのではなく、やってみて失敗したら「ごめんなさい」≒ 許しをこえばいいのです。

もちろん、前提として社会や組織との関係性にとってポジティブな作用を及ぼすことが必須ですが、社会や会社の上司がこのような考え方や行動を、懐深く受け入れられたらもっとマイ・プロジェクトが生まれやすくなると思います。
 

人生に、マイ・プロジェクトを。

人生の「意味」は、あなたの与えられた才能を見つけること。
人生の「目的」は、その才能を無償であたえること。

私の生き方に大きな影響を与えてくれた、パブロ・ピカソの有名な言葉です。

私も若いときは、自分がやりたいことと仕事としてやらなきゃいけないことの不一致に悩み続けました。しかし今思うと、「自分のやりたいこと=自分の才能や得意なこと」と勘違いしていたのではないかと思います。

英語では「才能」を「GIFT(ギフト)」といいます。

才能は、見えない力から与えられたものだということです。人生をプロジェクトに例えるのであれば、その与えられた「才能」をプロジェクトを通じて見つけ、それを社会に対して無償で返していくことがマイ・プロジェクトの本質ではないかと思っています。

みなさんもぜひ、自分だけの「GIFT」を見つけて、人生を主体的に楽しんでいって欲しいと思います。

ということで、自分なりに一所懸命話したつもりですが、ハタチの子たちにはあまり響いていなかったかもしれません(笑)。妻には「会社の上の人たちはよくこういう話するよねー」などと言われましたが、今の自分のことを振り返るとても良い機会を与えていただいたと思っています。

最後になりますが、神山町の関係者の方々に、今回このような機会をいただいたことを改めて感謝したいと思います。

町長から「この子たちが、何人神山に残るかどうかは、あんたの話にかっかとるけんなぁw」と、講演前に軽快にプレッシャーをかけられたことも、町の一員として加えていただけたのかなと後からジワジワきて、本当に嬉しかったです。

神山町の関係者の皆さま、本当にありがとうございました!
新成人のみなさんのこれからの活躍を、心より願っています!

この投稿を書いた人

眞鍋 太一

眞鍋 太一(まなべ たいち)代表

Monosus Inc. 代表/Food Hub Project Inc. 共同代表 支配人/Nomadic Kitchen 支配人。愛媛県出身。2014年3月より妻子と共に徳島県神山町に移住。社会とつながり「暮らすように働く」ことを企業の価値づくりに役立てるべく家族と友人を実験台に検証中。2016年4月より中山間地域の農業を次世代につなぐFood Hub Project Inc.を、神山町役場、神山 つなぐ公社、モノサスと共同で立ち上げ、支配人を務める。レストラン The Blind Donkey を運営するRichSoil&Co.の役員も兼任。

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